<吉祥寺残日録>EVは「走るスマホ」!アップルやソニーが見据える未来 #210113

世界中がコロナ関連のニュースに覆われる中で、世界最大の家電見本市「CES」が開幕した。

今年の注目は自動車関連、我々のイメージする自動車の概念が激変しそうな近未来がそこにはある。

特に重要な変化は、プレーヤーの交代だ。

日本経済新聞がCES関連の詳細な特集を組んでいるので、その中から気になった記事を引用しておく。

今年のCESで最も注目を集めた日本企業はソニーだったようだ。

電機メーカーのソニーだが、今回出展したのは「aibo」チームが開発した電気自動車EVとドローンだった。

CESの会場に乗り込んだソニーの吉田憲一郎社長は記者会見で次のように述べた。

「過去10年のメガトレンドはモバイル(携帯電話)だった。これからはモビリティーだ」

ソニーが発表したコンセプトカー「ビジョンS」。

自動車という新たな分野に足を踏み入れたソニーだが、この車はどのように開発されたのか?

こんな記事があった。

デザインから設計までは川西氏らaiboの開発チームが独自に手掛けた。ただ、ソニーには必要な技術がすべてあるわけではない。独ボッシュや独コンチネンタルなど車部品大手の協力を仰ぎ、車体の製造はオーストリアのマグナ・シュタイヤーに委託した。

部品や部材は協力会社の汎用品を活用した。川西氏は「ソニーの技術をどこに集約したら(自動車向けに)インテグレーション(統合)できるか。モビリティーへの挑戦は大きな意味がある」と強調する。共通の車体を活用すれば、様々な車種が開発可能だといい、車作りのあり方が変わる可能性もある。

システムはクラウド経由で随時更新され、次世代通信規格「5G」にも対応する。川西氏は「AIを軸としたクラウドシステムをつくりたい」と話す。川西氏は家庭用ゲーム機「プレイステーション」事業の経験もある。ソニーがゲーム事業で確立した配信サービスなどで継続的に稼ぐ「リカーリングモデル」を構想しているのかもしれない。

出展:日本経済新聞「アウディ幹部も驚いたソニーの自動運転EV CES」

ソニーが自動車開発で協業した企業も掲載されていた。

実に様々な分野の企業が名を連ねるが、残念ながらそこに日本企業の名前がない。

ソニー自体も決して自動車メーカーを目指しているのではなく、「クルマ向けのセンサーを売る」ことが真の狙いのようだが、さらにこんな理由もあるようだ。

「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」と呼ばれる米国の巨大IT企業の台頭を受け、「優秀なエンジニアを社内につなぎとめておく必要があった」と吉田社長は指摘する。最近は日本でも大企業を飛び出して米国企業に籍を移す若者も少なくないからだ。

ソニーでも業績が低迷していた06年にアイボの生産を中止したところ、同社から離れたエンジニアもいた。吉田社長の下でアイボを18年に復活させたことで「エンジニアや社員の士気はかなり高まった」という。EVの開発はそうした彼らのモチベーションをさらに高めるための新たな挑戦だったというわけだ。

吉田氏は子会社からソニー本体に戻り、最高財務責任者(CFO)を務めたころから、「何か動くものをやりたいと考えていた」と語る。というのも日本の家電メーカーが世界で強かった時代、競争力の源泉は当時「メカトロニクス」と呼ばれた機械と電気の両方に裏打ちされた技術力にあった。

ソフトウエアやサービスの分野でGAFAに対抗するのはもはや難しいが、彼らが作れない「動くもの」を世に問うことでソニーの存在感を再びアピールできると考えたという。

出展:日本経済新聞「アイボ開発チームが創ったEV 「ソニーらしさ」見た」

あらゆる先端技術がスマートフォンに集積されたように、今後は電気自動車が「走るスマホ」になる時代なのだ。

ますます株価が高騰し、有り余る資金を背景に世界中の優秀な技術者を吸い寄せるGAFAにどう対抗していくのか?

日本企業にとっては頭が痛い問題だが、今年のCESでも大きな注目を集めたのはアップルだった。

米アップルが電気自動車(EV)市場への参入を目指し複数の車メーカーと提携交渉を始めたことが明らかになった。韓国・現代自動車が8日に出した声明で交渉していると認めた。アップルのEV参入の観測報道は様々出ていたが、自動車大手が交渉の事実を公式に認めるのは初めてのもよう。資金力とブランド力を備えるアップルのEV進出が実現すれば、車産業の秩序や常識を揺さぶることになりそうだ。

出展:日本経済新聞「アップル、EV参入へ交渉 現代自が「初期の段階」認める」

アップルはスマートフォン「iPhone」などの開発を通じて半導体やセンサー、電池、人工知能(AI)などの技術を蓄積している。これらはEVや自動運転の開発にも応用できるとされる。スマホと同じようにEVも製造設備を持つ外部企業に組み立てを委託することで、早期に製品を市場に送り出す考えとみられる。

iPhoneが生み出す高い収益に支えられた圧倒的な資金力も、EV参入にあたっての強みとなりそうだ。アップルの20年9月期の研究開発投資は187億5200万ドル(約1兆9400億円)と、トヨタ自動車(20年3月期は1兆1100億円)の約1.7倍、米テスラ(19年12月期は13億4300万ドル)の約14倍に上る。

米IT(情報技術)大手では米アルファベット傘下のウェイモも自動運転技術の実用化に向け、日産自動車や仏ルノーなどと提携している。自動運転のAI開発に必要なソフトウエア人材を豊富に抱える巨大テック企業が、自動車市場でも技術革新をリードする構図になってきている。

これまで車の開発はエンジンが中心だったが、EVは「走るスマホ」とも言われ、電気まわりに近い部品やシステムが多いため車体開発へのハードルが下がる。

出典:日本経済新聞「アップル、EV参入へ交渉 現代自が「初期の段階」認める」

昨夜のNHKニュースでは、GAFAが通信インフラにも触手を伸ばしているとして、NTTが次世代高速通信を活用した自動運転社会を目指してトヨタと手を組んだというニュースも流れていた。

次の主戦場は自動車。

あらゆる業種が入り乱れて、「未来の移動手段」のあり方について激烈な競争が始まっている。

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