あの東日本大震災から今日で10年。
早いと言えば早いが、あの時のヒリヒリするような感覚はずいぶん薄れてしまった。
あの日、私は報道局の大部屋で100時間を超える過去最長の緊急特番を仕切っていた。
東北の系列局には電話も専用線も通じない。
映像も情報も入らない中で、関東地方の被害映像で特番に突っ込んだ。
その後、東北から送られてきた映像は想像を遥かに超える衝撃的なものだった。
話では知っていたが、津波の恐ろしさを本当の理解したのはあの瞬間だった。
そこから1ヶ月以上、過去に経験したことのない事態の連続に、緊張を強いられた日々。
初めて自ら被災地に足を運ぶことができたのは5月になってからだった。
そして、あの2011年の年末。
私はプロデューサーとして東日本大震災の長時間番組を制作した。
あの日どこで何があったのか、集めた膨大な映像を構成して、大地震の全体像を再現しようと試みだのだ。
何時何分に、どこで、何が起きたのか?
それを正確に理解すること、そこには多くの教訓が刻まれていた。
震災10年にあたり、久しぶりにDVDを再生してみた。
あれほど、「忘れない」と誓ったはずなのに、震災の記憶がこれほど失われているとは・・・。
『語り継ぐための記録』
辛い映像を見直すことにより、あの日の記憶が蘇ってくる。
心に深い傷を負い、二度とあの映像は見たくないという人がいることはもちろん理解しているが、その事実はきちんと踏まえながらも、より多くの人にあの日の映像を伝えたい。
震災の映像を記録し、若い人たちに見せることの重要さ。
テレビ局には「震災の映像を流さないで」という批判が殺到し、テレビで衝撃的な映像を目にすることは稀になってしまったが、あの日の教訓を忘れないためには、節目節目であの辛い映像を見直すことは大事だと私は思う。
映像を見直すことで、失われた記憶だけでなく、あの時の気持ちもまざまざと思い出すことができる。
震災を知らない世代にも、津波の恐ろしさを感じてもらうことができるはずだ。
震災10年に当たって、テレビ各局は震災関連の企画や番組を放送しているが、どこか腰がひけたヒューマンストーリーでお茶を濁している感じがして、後輩たちには喝を入れたい。
映像の重要さは、何も震災に限らない。
我が家で使っているソニーのレコーダーは古い型で500ギガで容量がいっぱいになってしまうため、見終わった番組は消去せざるを得なかった。
ほとんどの番組はそれでいいのだが、中には是非残しておきたいと思える番組もある。
NHKで再放送されている『映像の世紀』などはまさにその典型だ。
外付けハードディスクを購入して、残したい番組をダビングして保存できないか?
そんなことを考え始めていたところに、ソフトバンクから予期せぬ手紙が届いた。

『「ハッピーオータム2万円キャンペーン2020」お申し込みに伴う「為替」特典のお届け』
最初は、詐欺かと思った。
しかし調べてみると、どうやら、去年我が家の固定通信を「ソフトバンク光」に変更したことで、2万円のキャッシュバックが受けられるらしいということが判明した。
恐る恐る、同封されていた為替証書を持って近くの郵便局に行ってみた。

為替証書の現金化をするのは初めてだ。
ちょっと不安だったが、住所と氏名を記入し印鑑を押して窓口に提出すると、身分証明書の確認だけで、現金を受け取ることができた。

予期していなかった現金2万円。
ちょっと得した気分になって、このお金で外付けHDDを購入することにした。
ケチな妻も、まったく反対しなかった。

ヨドバシカメラでテレビ番組を録画できるハードディスクを探す。
いろんな種類があってよくわからないが、我が家のレコーダーの説明書を見ると、「See Q Vault」対応のHDDでなければならないというようなことが書いてある。
「See Q Vault」とは、何か?
SeeQVaultTM(シーキューボルト)は、身近になったHD映像を楽しむために、
出典:「See Q Vault」公式サイト
パナソニック、サムスン、ソニー、東芝の4社が開発した
【高い再生互換性】と【強固なセキュリティ】を同時に実現する新たなコンテンツ保護技術です。
どうやら、この方式に対応しているHDDだと、接続する機材が変わっても再生できるということのようだ。
少し割高にはなるが、「See Q Vault」対応の2TBの外付けHDDを購入した。

2万870円の値札が貼られていたが、実際の店頭価格は1万9490円。
貯まっていたポイントを使って、実際には1万7974円を支払った。
果たしてうまくダビングができるのか?
ちょっと心配しながら、説明書を見ながらレコーダーに接続してみた。

レコーダーの背面にUSBで接続し、まず最初に初期化と登録の手続きをする。
説明書通りの手順で進めると、無事に接続は完了できたようだ。

早速、ダビング作業を始める
テレビに映し出された操作画面から「ダビング」を選択し、レコーダーに録画されている番組リストの中から保存したい番組を選ぶと、スムーズにダビングが始まった。
2時間番組(約2ギガ)をダビングするのにかかる時間は、およそ1分。
思ったより速い、というのが初めてダビングした感想だった。
これなら無理して録画番組を消さなくても、気に入った番組は積極的に保存ことができる。
そう思った。
会社を辞め、自宅で過ごす時間が増える中で、テレビの見方も変わってきた。
日々のニュースやドラマももちろん見ているが、保存しておきたいと思う番組のほとんどはドキュメンタリーだ。
一度消してしまうと、二度とお目にかかれない可能性が高い。
質の高い海外のドキュメンタリーなどを保存しておけば、将来図書館では借りられない私の情報源になるだろう。
本当なら、震災10年に合わせて東北の被災地を回ろうと思っていた。
しかし、コロナのせいで今は叶わない。
いずれ、落ち着いてところで、年内に必ず訪れるつもりだ。
あの震災の時、まだ子供だった人、まだ生まれていなかった若い人たちにも、ぜひ津波の映像を見てもらいたい。
話で聞くのと、映像で実際の光景を見るのとでは、まったく伝わる情報量が違う。
せっかく多くの人が記録した貴重な映像、将来の防災に少しでも役立つことを祈りたい。
私たちは、世界でも有数の地震列島の上で暮らしている。
近い将来襲ってくる首都直下や南海トラフの巨大地震に備えるためにも、日本人はあの辛い映像を直視する必要がある。