今朝、地震の揺れで目が覚めた。
時間は午前6時37分、ゆっくりとした横揺れが比較的長く続いた。
遠くでちょっと大きな地震が起きたのかなと思いテレビをつける。
山梨県東部で震度5弱。
震源は富士五湖で深さは約19キロ、マグニチュードは4.8と発表された。
今日未明から同じエリアでいくつかの地震が続いたことから富士山噴火の予兆ではないかと誰もが考えた。

気象庁は会見を開いて、富士山の火山活動との関連を否定、気象庁の束田進也 地震津波監視課長は次のように述べた。
「今回の地震は北西や南東の方向に押される逆断層と呼ばれるタイプで、フィリピン海プレートの沈み込みに伴うものと考えられる」
「このような地震の起こり方が今までなかったわけではなく、それほど特徴的、特別とは考えていないが、いつ地震が起きてもいいよう日頃から準備してほしい」

続いて午前9時28分ごろ、今度は西日本で地震が発生し、和歌山県御坊市で震度5弱を観測した。
震源は紀伊水道で深さは18キロ、マグニチュード5.4の地震だった。
こちらは南海トラフ巨大地震の予想震源域に近く、その予兆ではないかとの不安が走る。
これについて気象庁の見解は・・・
「この地震は地殻内で発生しており、プレートの境界で起きる南海トラフ巨大地震とはメカニズムや規模が異なる。巨大地震が発生する可能性が平常時より高まっているとは考えていない」
とはいえ、断層の動いた方向がプレートの動きと一致しているとして注意深く今後の推移を見守る必要があると指摘する専門家もいた。

この秋、ちょうどTBS日曜劇場で「日本沈没」を放送していることもあり、地震関連の重大情報はどのように発表すべきなのかという難しいテーマがすぐに頭に浮かんだ。
もしも南海トラフ巨大地震の兆候が確認された時、政府はありのままを国民に伝えるだろうか?
パニックを恐れて慎重に情報管理をすると考える方が自然である。
ならば今日の地震についても、巨大地震の前兆である可能性も頭の片隅に置いて心構えをしておいた方がいいだろうと考えた。

そういえば、震災関連の番組を録画したまま見ていなかったことを思い出す。
2010年からNHKが放送している「MEGAQUAKE巨大地震」シリーズの最新作「震災10年 科学はどこまで迫れたか」、今年9月に放送されたスペシャル番組だ。
そしてもう1本、2018年に放送された同じシリーズの「南海トラフ巨大地震 迫りくる“Xデー”に備えよ」。
東日本大震災後、日本では多くの研究者が巨大地震の予兆を見つけようと研究を進めている。
そうした最新研究を紹介するこの2本の番組の中から、私の興味をそそったいくつかを記録したい。

まずは和歌山の地震で想起される南海トラフ巨大地震。
発生確率は今後30年間で70〜80%と予想されている。
近い将来、ほぼ確実に起きるであろう巨大地震だ。
予想されるマグニチュードは9〜9.1で、死者は32万人を超え、1410兆円の経済損失が出ると想定されている。
静岡、和歌山、高知では巨大津波に見舞われ、大阪や名古屋でも5メートルの津波が到達するとされる。
そのため南海トラフ地震に関しては、「南海トラフ地震に関連する情報」(通称・臨時情報)という新たな制度が導入されていて、想定エリアで異常な現象が観測された場合、国民にあらかじめ注意を呼びかけることになった。
東京では震度5強、岡山では震度6の揺れが予想されている中で、二拠点生活をしている我が家はどう備えればいいのか?
それを考える上でもまずは最新研究をチェックして正しい知識を身につけておく必要がある。

東日本大震災後、多くの研究者たちから注目を集めているのが「スロースリップ」という現象である。
ドラマ「日本沈没」でも度々登場する「スロースリップ」は、普通の地震によるプレートのすべり(スリップ)よりもはるかに遅い速度で発生する滑り現象のことで、直接揺れを引き起こさないためこれまではほとんど問題とされてこなかった。
しかし、東日本大震災ではこのスロースリップがM9の巨大地震の引き金になったとして注目を集めるようになり、その後メキシコやチリで起きた巨大地震でも直前にスロースリップが確認された。
南海トラフでは四国沖から紀伊半島沖にかけて「固着域」と呼ばれるプレート同士が強くくっついた部分が広がるが、その周辺で不気味なスロースリップが確認されている。
東北大学の高木涼太助教によると、南海トラフの西端である日向灘では宮崎沖から大分沖、さらに四国内陸部へと「スロースリップ」が固着域に向かって移動する現象が何度も観測されているという。
2002年、2006年、2013年に始まり数年かけて固着域に近づいていくこの動き。
これにより、「固着域」の淵に新たなひずみが溜まっていく。
「スロースリップが起こることで着実に巨大地震発生域の力をためている。確実にその日(Xデー)に近づけているということになっていると思います」

今では南海トラフと呼ばれるこの地震のエリアは、私の現役時代には「東海」「東南海」「南海」と3つに分けられて教えられていた。
過去に起きた南海トラフ地震を見ると、2回に分けて起きることが多かった。
たとえば戦時中の1944年12月7日に起きた「昭和東南海地震(M7.9)」の2年後、1946年12月21日に「昭和南海地震(M8.0)」が発生。
1854年12月23日の「安政東海地震(M8.4)」の32時間後の12月24日には「安政南海地震(M8.4)」が起きた。
ただし、1707年10月28日の「宝永地震」や1605年2月3日の「慶長地震」は、南海トラフ全域が一気に動いたわけで、我々が知り得る限られた過去の知識では地球の営みはまだまだ予測不能なのである。
プレート境界面で発生するこうした巨大地震とは別に、日本各地に存在する活断層が原因の地震も毎年のように起きている。
2016年4月の熊本地震、2018年6月の大阪北部地震、2018年9月の北海道胆振東部地震・・・。
こうした直下型の地震が次にどこで起きるのか、それを予測しようという研究も進められている。

京都大学防災研究所の西村卓也准教授は、西日本が乗っかる「ユーラシアプレート」が一枚のしっかりしたプレートではなく、いくつものブロックに分かれていると考えている。
2016年の放送で西村さんは山陰地方で大きな地震が起きる恐れがあると予測し、その年の10月21日、鳥取県中部でM6.6の地震が発生した。
この震源地は、まさに西村さんが考えたブロックの境界線近くに位置していて、熊本地震の震源地も同じく黄色い線上にあった。
西村さんは地殻変動、全国各地に設置されているGPSのデータを利用している。

フィリピン海プレートの沈み込みによって、西日本は北西方向に押されていることがわかるが、山陰を見ると東向き、九州では南東向きに動いていることがわかる。
この動きの原因を考える中で西村さんはプレートがいくつかのブロックに分かれていると考えるようになった。
プレートとプレートがぶつかることによって、その端が割れていくつもの小さなブロックができたと考えている。
こうして西日本のGPSデータを徹底分析することにより、どこで地震が起こりやすいかを予測した。

赤い色が濃くなるほどM6.8以上の大地震が発生する確率が高いことを表す。
その結果、北陸から京阪神にかけて大きなひずみが蓄積し地震の発生確率が高いと予測された。
さらに九州でも、大分から熊本、鹿児島にかけて赤い部分が広がっている。

鹿児島周辺では、現在わかっている活断層はあまりないにも関わらず地震の発生確率が高いと判断された。
西村さんは・・・
「このあたりの活断層がまだ十分発見されていない可能性もある。最近、大地が急激に動き始めているそういう場所だと、今のGPSのデータではひずみが高いと見えて確率も高くなる」
桜島の火山灰が厚く降り積もったいわゆるシラス台地では活断層を見つけるのが容易ではない。
そういう意味では富士山の火山灰が分厚く積もった関東ローム層に作られた首都圏でも、活断層はほとんどわかっていない。

これに関連して気になる記事を見つけた。
「NEWポストセブン」に掲載されていた『首都圏直下地震の引き金になる可能性も 東京「隠れ断層マップ」』という記事だ。
キーワードは「隠れ断層」、この記事から一部引用させていただこう。
11月20日朝8時57分、東京を中心にマグニチュード4.6、最大震度3の地震が発生した。震源地が地下100kmと深かったため甚大な被害は出なかったが、土曜休日で眠い目をこすった都民を驚かせたのは、震源地が東京・杉並区西荻窪の地底だったことだ。
都内にはまだ大地震の震源地になりうる場所が複数あり、東京23区内を震源とする直下型地震は、いつ発生してもおかしくない。その震源となる可能性があるのが、大都市の地下にひっそりと眠る「隠れ断層」だ。
引用:NEWポストセブン

これは、元日本活断層学会副会長の豊蔵勇さんが調べた都心の地下を走る「推定断層」の地図。
東京の地下深部には10万~30万年ほど前の「東京層」と呼ばれる地層があり、その上に約7万~8万年前の「砂礫層」、さらにその上を富士山などの火山噴火に由来する「関東ローム層」が覆っている。
「都心部の地盤は、二重に柔らかい布団をかけているような状態なので、その下にある断層が発見されにくいんです」(豊蔵氏)
「土木・建築工事などのボーリング調査のデータをもとに、また現地調査も行なった結果、地下の地盤にずれが存在すると考えられる場所がいくつも見つかりました。これが推定断層になります。 重要なのは年代が古い地層、つまり地下深くにある地層ほど、断層のずれが大きいと推定できたことです。例えば地層が2m動くとマグニチュード7.0程度の地震が起きます」
引用:NEWポストセブン
豊蔵さんが「いつ動いてもおかしくない」と指摘するのが「飯田橋推定断層」である。
JR田端駅付近から飯田橋駅、市ケ谷駅、四ツ谷駅の地下を通るこの断層がもしも動いたら、阪神大震災を上回る被害が予想される。

築50年の老朽マンションに住む私にとって、首都直下地震はまさに脅威である。
岡山との二拠点生活はその意味でリスク回避には役立つと考えていたが、岡山にあるのは築100年の古民家、大地震に遭遇すると石の上に置かれただけの柱は崩壊が危惧される。
南海トラフ巨大地震が起きると、東京も岡山も大きな被害が予想されるだけに、その時どう行動すればいいのか改めて考えておかなければならないだろう。
4つのプレートの境界に位置する日本列島。
この島に暮らしている以上、いつかは巨大地震に遭遇することになる。
今朝の地震は、そうした頭の体操を常にしておけよと催促するための地震だったのかもしれない。

とはいえ、せっかくならば、富士山の噴火も南海トラフ地震も、私が生きている間に経験してみたいと変な好奇心を捨てられないのも元テレビマンの習い性だろうか・・・。