<吉祥寺残日録>台風中継を見ながら感じたこと #200906

台風10号が今、九州に最接近している。

NHKでは大河ドラマも休止して台風特番を行っている。

私もテレビマンとして多くの台風特番に携わってきたが、最近の台風中継を見てちょっとした違和感を感じたので書き残しておこうと思う。

昔の台風中継といえば、若手記者が風に吹き飛ばされそうになりながら台風の凄さを体を張って伝えたものだ。

記者以上に張り切るのがカメラマンたちで、他局よりも「いい映像」を撮るためにしのぎを削った。

「いい映像」を撮影するためには、台風についての知識が必要で、そこでカメラマンの力量が画面に出たものだ。

台風特番は、最もテレビ的な報道特番であり、私は大好きだった。

どこにカメラを出すか、どこに中継車を出すか、デスクや編集長の腕の見せ所だった。

それは単に、すごい映像を撮って視聴者の恐怖を煽ることが目的ではない。

台風列島で暮らす私たち日本人にとって、台風について正しい知識を知ることはとても大切であり、そのために台風の実像を映像で伝える努力をしてきたのだ。

様々なタイプの台風が日本列島にやってくるが、その一つ一つをできるだけきちんと映像で記録しておくこと、それが防災に役立つからだ。

ところが、最近のテレビはすっかり変わってしまったらしい。

NHKが一番顕著だが、記者やカメラが屋外にも出ず、建物の中から中継する。

だから状況がよくわからないのだ。

「激しい風で街路樹が大きく揺れています」と実況しているが、窓越しに写っている街路樹はあまり揺れていなかったりする。

風というものを表現するためには、何か風にあおられる物が必要だ。

鉄筋コンクリートの建物は、風を表現するには最も相応しくない物なのに、窓の外にはそんな建物しか映っていなかったりする。

安全な場所からリポートするにしても、場所を探す努力はするべきだろう。

記者がいくら大袈裟に騒いでいても、映像がショボければ台風の凄さ、危険性は伝わらない。

「危険ですから絶対に屋外に出ないでください」とテレビで呼びかけているので、自分たちが屋外から中継していてはネットで攻撃されるという事情があるのかもしれないが、それはプロの仕事ではないと私は思う。

危険だから一般の人が行けない所に代わりに行くこと、つまり「現場に行ってありのままを伝える」ことこそがテレビニュースの仕事だと思うのだ。

しかし、今日の放送を見る限り、「いい映像」を撮ろうという努力は微塵も感じられなかった。

間違いなく上司から「安全第一」の指令が現場に徹底されているのだろう。

つまらない時代だ。

しかし、テレビマンというのは映像のプロではないのか?

その映像のプロが自分で映像を撮影することを放棄し、ネットにアップされた「いい映像」を集めて放送している。

もちろん誰もが動画を撮影してアップできる時代だからその映像を活用することは当然だと思うが、だからと言ってテレビマンが映像を撮影する努力を放棄するなら、テレビというメディアはもう必要ないくんじゃないの?

映像を軽視する一方で、言葉だけは大袈裟になっている。

「命を守る行動をとってください」という言葉も、いつの間にか常套句になってしまった。

「弱い映像」と「強い言葉」のギャップ。

映像を軽視するテレビは、嘘っぽく見える。

映像を撮影するのは「強い言葉」を発するよりずっと難しく、テレビマンの力量が問われるのだ。

テレビマンたるもの、もっといい映像を撮る努力をしてほしい。

さて、今回の台風10号について、気象庁は当初、特別警報級に発達すると見て事前に予告までしていたが、九州に接近するに従って勢力が少し衰え、結果的には特別警報の基準には達しなかった。

特別警報を出す基準は、本土に最接近した際の中心気圧が930ヘクトパスカル以下になることだそうだ。

実際に鹿児島に接近した今夜の中心気圧は945ヘクトパスカル。

そのため、特別警報は見送られた。

テレビではここ数日、「かつて経験したことのない被害が出る可能性」という表現が連日繰り返された。

でも幸いなことに、まだそれに当てはまるような被害は出ていない。

でも気象庁の異例の呼びかけは効果絶大で、九州ではこれまで避難したことがなかった人たちが避難所に押しかけた。

ところが、今年は新型コロナ対策もしなければならないため、1箇所の収容人数を大幅に減らしたため、多くの避難所で収容人数の上限に達してしまったらしい。

それもあって、多くの人たちがホテルに殺到し、コロナで大打撃を受けている宿泊施設が今夜に限ってどこも満室状態だというのだ。

中には避難先の宿泊代に「GO TO トラベル」の補助を使うという人もいる。

みんないろいろ考えるものだ。

今年ならではのいろんな要素が絡まって、「これまでに経験したことのない」不思議な現象が起きているというニュースの方が台風そのものよりも興味深かった次第である。

台風から遠く離れた東京では、今日は結構晴れていたが、時折激しい雨も降った。

こうした天気が明日以降も続くらしい。

そんな日曜日。

私にとっては、明日の白内障の手術に備え、事前に点眼剤をさす作業が始まった。

2種類の目薬を1日4回。

そして寝る前には、眼軟膏を塗る。

そして明日の午前10時から白内障の手術である。

果たして術後はどんな風に見えるんだろう。

明日のブログがちゃんと書けるといいんだが・・・。

コメントを残す