<吉祥寺残日録>中国恒大集団が破産申請!中国の不動産バブル崩壊が本格的に始まる? 3230818

中国経済の懸念材料として3年前から注目されていた経営再建中の不動産大手「中国恒大集団」が17日、ニューヨークで破産を申請した。

いよいよ中国の不動産バブルが崩壊するのか?

まずは日本経済新聞の記事を引用しておこう。

ニューヨークのマンハッタン地区連邦破産裁判所に、連邦破産法第15条の適用を申請した。同法は米国籍以外の企業が、米国内の資産を保護する目的で資産の強制的な差し押さえなどを回避できる。

中国恒大集団の2021年12月期と22年12月期連結決算は、2年間の最終損益合計が単純合算で約5800億元(約11兆6000億円)の赤字となり、債務超過に転落していた。

1996年創業の恒大は中国の不動産ブームに乗って高成長した。2010年代半ばには売上高で世界トップクラスの不動産会社になったが、不動産価格の高騰を危惧した中国政府が不動産会社の財務に制限を強化したことなどから、経営が傾いた。

中国の不動産市場を巡っては深刻な不況が鮮明になっている。7月には主要70都市中49都市で新築住宅価格が前月より下落した。下落した都市数は6月から11都市増えたほか、各都市平均の価格下落率も拡大した。

恒大のほか、中国不動産最大手で高いブランド力を誇っていた碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)や中堅の遠洋集団控股の資金繰り難が表面化。将来の引き渡し不能リスクを意識し、消費者が未完成住宅の「青田買い」を手控える動きが広がっている。

恒大の債務総額は22年末で2兆4374億元にのぼる。同社は「住宅及び投資不動産事業のほとんどは中国本土で行っている」としており、米国内に保有する資産は限られるもようだ。一方、有利子負債6123億元の27.3%は米ドル及び香港ドル建てとなっている。

恒大は3月下旬、最長12年の債券や関連会社の株式への転換を盛り込んだ外貨建て債務の再編方針を公表した。ただ合意できたのは一部の債権者にとどまり、協議が難航していた。今回の米連邦破産法第15条の申請で、米裁判所の権限下で恒大は米国内での訴訟や資産の強制的な差し押さえなどを回避することができる。これによって28日に予定している外貨建て債券の保有者との債務再編の協議を有利に進める狙いがあるとみられる。

引用:日本経済新聞

なぜ、アメリカで破産を申請したのか?

中国国内ではどのように報道されているのか?

そのあたりは記事には書かれていない。

だが、恒大集団が中国政府の許可なく破産申請をすることはないだろう。

問題は、中国政府がこの問題をどのように解決しようとするのか、そこが焦点だ。

当然、日本の不動産バブル崩壊による経済の低迷、長期にわたるデフレは研究済みのはずだ。

これまでであれば、中国政府が巨額の財政出動をして不動産価格を支えつつ、不良債権の処理を進めたのだろうが、果たしてそれだけの余力が今の中国に残されているのかがポイントだ。

習近平さんが推し進めた極端なコロナ対策と西側諸国との関係悪化が中国経済には確実にボディブローとなって効いている。

「一帯一路」の名の下に推進してきた途上国支援も焦げ付き、グローバルサウスでの優位性も徐々にインドなどに侵食され始めている。

そして異常な速さで推進された全国的な不動産開発が地方政府の財政を悪化させ、これまでのような思い切った財政出動ができなくなっていると見られている。

同じく日本経済新聞の記事『きしむ中国成長モデル 不動産・地方財政・人民元が震源』も引用しておく。

中国経済が揺れている。不動産不況、地方の財政難、人民元安の3つが発火点だ。住宅販売不振で不動産価格の上昇を前提とした成長モデルがきしんでいる。地方財政の悪化と約15年半ぶり水準に迫る人民元安が足かせとなり、中国政府は思い切った財政・金融政策を打ち出せないジレンマに陥っている。

住宅価格、下落都市7割に拡大

中国の不動産不況は深刻さを増している。7月は主要70都市中49都市で新築住宅価格が前月より下落した。1〜7月の住宅以外も含む不動産販売面積は前年同期比6.5%減だった。単純比較はできないが、1〜7月累計値から7月単月を算出すると前年同月比24%減、21年同月比では46%減となる。

中国恒大集団に続き、中国不動産最大手で高いブランド力を誇っていた碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)や中堅の遠洋集団控股の資金繰り難が表面化。将来の引き渡し不能リスクを意識し、消費者が未完成住宅の「青田買い」を手控える動きが広がる。

中国の7月末の不動産在庫は前年同月比17.9%増の6億4564万平方メートルだった。ほぼ東京都区部の面積に相当する規模で、恒大や碧桂園など膨大な在庫を抱える不動産開発会社は新たな開発意欲を失っている。

地方政府、財政厳しく

不動産開発会社の経営難は地方政府を直撃している。税収と並ぶ地方財政の二大柱だった土地使用権の売却収入が急減し、財政余力が低下。地方政府傘下のインフラ投資会社「融資平台」に対する資金支援が難しくなっており、雲南省や貴州省、天津市などの融資平台で債務不履行(デフォルト)懸念が浮上する。

融資平台の債務は、中国政府が公式な統計に含めない「隠れ債務」だが、その規模は小さくない。国際通貨基金(IMF)の推計によると、23年の融資平台の債務額は中国の対国内総生産(GDP)で53%となり、中央政府(24%)と地方政府(32%)を上回る。

中国は農村から大都市への人口移動を指す都市化が一段落し、人口も減少に転じた。かつてのような住宅需要の急回復は見込めない。中国の華泰証券が11日に投資家向けに行ったアンケート調査では、政府が不動産市場活性化策を打ち出した場合の効果について「不動産市場は好転する」との回答は6%にとどまり、51%が「多少改善するが、効果は限定的」との回答だった。不動産の値上がりを前提とした成長モデルの持続は困難で、長期停滞を示す「日本化」リスクが浮上している。

金融システム、波及焦点

こうした見方を金融市場は織り込んでいる。長期金利の指標となる10年物国債(ベンチマーク債)利回りは2.5%台に低下(価格は上昇)。リフィニティブでデータを取得できる範囲で過去最低の2.352%(02年6月5日)に迫る。

米中金利差拡大の思惑から人民元安も進む。16日日中の上海外国為替市場で人民元は対ドルで一時7.2989元に下落した。22年11月1日に付けた7.328元を超えれば、約15年半ぶり安値となる。市場では「米国と中国の金利差が広がっており、人民元は22年11月の水準を突破する可能性が高い」(中航証券のアナリスト)との見方が広がる。

米ドル債市場では、デフォルトリスクを織り込み、碧桂園の米ドル債の流通利回りが11日に3000%を超えた。さらに中融国際信託が設定・運用する信託商品と呼ばれる投資商品が満期になっても償還されない問題が明らかになり、金融市場の不安を誘っている。投資先の不動産企業の苦境が波及した可能性がある。ロイター通信は16日、同信託幹部の発言をもとに、償還停止の信託商品の規模が「1000億元以下」と伝えている。

中国はリーマン・ショック後に「4兆元景気対策(当時の為替レートで52兆円)」で景気を浮揚させた。だが、現在は人民元安を通じて15年の「人民元ショック」のような想定外のキャピタルフライト(資金逃避)を招きかねない大規模な金融緩和や、融資平台の債務リスクを加速しかねない財政出動が難しい問題を抱える。

今後の焦点は金融システムへの波及だ。中国工商銀行など四大国有銀行が安定した利ざやを確保する一方、地方に点在する非上場の中小・零細銀行の実態は不透明さが拭えない。いったん預金流出などのパニックが起きれば金融システム不安を引き起こしかねない。

引用:日本経済新聞

不動産価格の下落があぶり出すバブルの構造。

「融資平台」と呼ばれるカネを産む鶏は、日本で問題となった住専と同じように見える。

焦げついた巨額の債務をどのように処理するか、30年前に日本政府が迷走した負の連鎖に中国政府は賢明な回答ができるのだろうか?

不動産価格の下落が不動産会社や住専のような融資企業を破綻させ、そうした企業に融資していた金融機関に飛び火する、それが日本のバブル崩壊であった。

共産党一党独裁国家である中国の場合、債務を帳消しにするような超法規的措置も取れるのかもしれない。

しかし、多くの中国人が財産を失うことは確実で、それがいずれ反政府的な火種になる可能性もある。

強権的な習近平体制は友好的だったヨーロッパ諸国も敵に回してしまった。

米中対立が改善する見込みもない中で、中国経済を軟着陸させるのは至難の業だ。

果たして中国共産党にその離れ業ができるのか?

中国経済が失速すれば日本経済もタダでは済まない。

私も重大な関心を持って中国政府の対応策を見ていきたいと思う。

中国バブル

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