<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 ロシアの侵攻から4ヶ月!ウクライナがEUの「加盟候補国」になる一方で・・・ #220624

ロシア軍が電撃的にウクライナに軍事侵攻してから今日で4ヶ月。

このブログでウクライナの記事が減っているのは、戦線が膠着して戦争が長期化しているためである。

今日の東京は、梅雨だというのに晴れて気温がぐんぐん上がり、そんな中妻に連れられて私の服を買いに行った。

もう何年も同じ服を着ているので、「あまりに見苦しい」とせき立てられて渋々デパートに連れていかれたのだ。

テレビでは、気象庁が異例の早さで梅雨明けの検討に入るなどという話が伝えられている。

どういうわけか、梅雨前線は本州を通り越して一気に北上し、北海道に大雨を降らしているという。

来週の予報を見ても東日本から西日本にかけてずっと晴れの予報が続いていて、この調子では今年はカラ梅雨の可能性が高そうである。

そうなると心配されるのは水不足と熱中症。

来週はずっと35度近い日が続く見込みだというので、日本人の関心はこうした暑さや物価高に注がれて、ウクライナのニュースは以前に比べずいぶん少なくなった。

しかしウクライナでの戦闘は全く終わりが見えてこない。

これは最新の戦況の地図だが、1ヶ月前とほとんど変化がないのだ。

マリウポリを陥落させたロシア軍は、その勢いで東部ドンバス地方の2州を手中に収めようと兵力を東部に集中したのだが、思うようには作戦は成功していない。

ルガンスク州の95%をロシアが占領し、完全占領間近と伝えられた後も、最後の拠点セベロドネツクをめぐってウクライナ側の激しい抵抗が続き、ロシア軍の思惑通りに戦況を打開できていないことがうかがえる。

お隣のドネツク州ではさらにロシア軍の侵攻はウクライナ側によって跳ね返されていて、NATOの事務総長は「戦闘は数年続く可能性がある」との見方を示した。

さらにここに来て、ウクライナの要請に応じてアメリカから供与された高機動ロケット砲システム「ハイマース」が到着し、まもなく実戦配備されるという。

ハイマースは、多連装ロケットシステムを軽量化しタイヤで走行できるシステムで、ロケット弾は最大6発、射程300キロの戦術地対地ミサイル「ATACMS」なら1発を搭載できる。

ドイツから供与された自走式155ミリりゅう弾砲もすでに前線に配備され始めていて、ウクライナの高官は「ロシアの占領者にとって灼熱の夏となる。最後の夏になる者もいる」と反転攻勢を警告したと伝えられている。

こうして一進一退の攻防が続く中、ウクライナをめぐって大きな動きがあった。

EUが23日に開いた首脳会議で、ウクライナとモルドバに「加盟候補国」の地位を付与することを承認したのだ。

ウクライナにとって悲願だったEU加盟が皮肉にもロシアによる軍事侵攻によって早まった格好だ。

ロシア側も、NATOと違いEUは軍事組織ではないとして静観の構え。

さらに旧ソ連のジョージアも将来のEU加盟候補国に位置づけられ、プーチンさんの思惑とは裏腹に、周辺国が雪崩を打ってロシア離れを加速させている。

中でも気になるのは、バルト3国の一つリトアニアの動きだ。

ロシア西部の飛び地であるカリーニングラード州にEUの禁輸物資が運び込まれるのを防ぐ目的で、貨物列車のリトアニア領内通過を禁じると発表した。

当然ロシアは激しく反発し、リトアニアに対し報復措置を取ると警告しているが、ウクライナと違いリトアニアはすでにNATO加盟国であり、もしも軍事侵攻すればNATOとの直接対決に発展する危険性が高い。

そのため、ウクライナで兵力を消耗したロシアにさらなる戦線拡大に踏み切る余力があるのかどうか、危険な駆け引きが続いている。

長引く戦闘で、ウクライナ側だけでなくロシア側にもかなりの被害が広がっている。

イギリス国防省の分析によれば、ウクライナ東部で戦う親ロシア派の部隊は、死者2128人、負傷者が8897人で、当初の兵力の55%を失ったと見ている。

しかし私たちが日本で聞く戦争の情報は、主にウクライナや西側諸国からの情報に基づいていて、多少バイアスがかかっていると考えた方がいい。

激戦地には今も多くの一般市民が避難せずに残っているが、フランスのテレビ局が市民を救出するボランティアに同行取材したリポートを見ると、避難を促すウクライナ軍の誘いを拒否しロシア軍が来るのを心待ちにしている住民たちも相当数いるようなのだ。

内戦のきっかけとなった2014年の大統領選挙でも、ドンバス地方では8割の住民たちが親ロシア派の候補者を支持していた。

その意味では、キッシンジャー氏がいみじくも語ったように「ウクライナ分割」というのも有力な解決策だと客観的には見えてしまう。

そんな戦場で暮らす一人の老女を取材した英BBCのリポートを今日は引用しておきたいと思う。

『ロシアのプロパガンダの「顔」になったウクライナの高齢女性』というこの記事。

ソヴィエト連邦の赤い国旗を振り回したウクライナの高齢女性が、ロシアのプロパガンダの「顔」になっている。きっかけは、ウクライナ兵と遭遇した際の動画が急速に拡散されたことだった。BBCはこの件の真相に迫ろうと、「バブーシュカZ」と呼ばれるようになった女性を探し当てた。

「バブーシュカZ」という一人のおばあさんの物語は、戦争につきものの情報戦の一端を私たちに教えてくれる。

記事を引用させていただく。

「私を美化してはいけません。私はただの農家の女性です。なぜ私が有名人になったのかわかりません」

バブーシュカZ(バブーシュカはロシア語で「おばあさん」、アルファベットの「Z」はロシアで戦争支持のシンボルとなり、装甲車などに描かれている)は、その有名ぶりを示す画像をBBC記者に見せられてひどく驚き、「こんなの見たことありませんでした」と言った。

動画では、バブーシュカZは赤いソ連の国旗を手に、2人のウクライナ兵に向かって歩いて行く。

兵士らは助けに来たと言い、食料の入った袋を差し出す。そして、彼女から旗を取り上げると、地面に投げつけ、踏みつける。彼女は侮辱されたと感じ、食料を押し返す。

動画の中でバブーシュカZは、「私の両親は第2次世界大戦で、その旗のために死んだんです」と、憤慨して言う。

ロシアにとって最高の内容だ。ロシアのプロパガンダが個人に焦点をあてるのは難しいが、バブーシュカZは例外だった。ソ連の崩壊を残念がり、ロシア人を解放者とみなす、珍しいウクライナ人として、ロシアはバブーシュカZを利用することにしたのだ。

ほとんどのウクライナ人は、たとえロシア語が話されている地域の住民であっても、今回の侵略を歓迎していない。そのため、ソ連の国旗を振り回すこの女性は、ロシアの行動が地元住民に支持されていることの証明として使われた。

ソ連国旗とバブーシュカZを組み合わせた図柄は、第2次世界大戦中の「母なるロシア」絵葉書を知るロシア人全員の心に響く。それも、プラスに働いている。

これを受け、ロシアのプロパガンダ・マシンが動き出した。数日のうちに、昔ながらのスカーフ、フェルトのブーツ、厚手のスカートという、ソ連時代のステレオタイプの農家の女性のイメージは、モスクワからシベリア、極東のサハリン島まで、ロシア国内のあちこちで見られるようになった。

バブーシュカZはいまや、壁画、プラカード、絵葉書、彫刻、車のバンパーのステッカーの中で不滅の存在となった。歌や詩も作られた。ロシア当局は、爆撃で完全に破壊されたウクライナの都市マリウポリに、バブーシュカZの像を建てた。

引用:BBC

バブーシュカZの正体を知る人は、最近までいなかった。実際のところ、生きているのかすら誰もわからなかった。

しかし、この女性は紛れもなく実在している。名をアンナ・イワノフナと言い、ウクライナ北東部ハルキウ近郊のヴェリカ・ダニリウカ村で、夫、犬、猫、ウサギと暮らしている。

アンナさんのイメージをもとに作られた像の写真を見せると、元気そうな69歳は驚いたような顔をする。

「私って本当にこんなに老けて見えます? 知らない人に見つめられているみたい!」

ただ、アンナさんの物語は、ロシアのメディアが描いてきたイメージとは大きく異なる。アンナさんは戦争を支持していない。

「同じ国の人たちが死ぬのを、支持できるわけなどありません。私の孫やひ孫たちは、ポーランドに行かなくてはなりませんでした。私たちは恐怖の中で暮らしています」

ではなぜ、ソ連の国旗を持って兵士らを出迎えたのか。誤解なのだと、アンナさんは言う。食べ物を渡してくれたウクライナ兵2人を、ロシア兵だと勘違いしたのだと。

「ロシア人が来て、私たちと戦わないことがうれしかったんです。私たちが再び団結するのがうれしかったんです」

引用:BBC

アンナさんは自分の振る舞いに、政治的な含みはなかったと説明。赤い旗は、ソ連の国旗でもなく、ロシアの国旗でもなく、「すべての家庭、すべての都市、すべての共和国の愛と幸福の旗です。流血の旗ではありません。違うことを言う人は間違っています」と話す。

アンナさんが話している間、近くでは絶えず大砲や戦闘のごう音が聞こえていた。しかしアンナさんは一度もひるまなかった。慣れていたのだった。

「もしウラジーミル・プーチンと話せるなら、あなたは間違いを犯したと言いたい。こんな目に遭うなんて、いったい私たちウクライナの労働者が何をしたっていうんです。一番苦しんでいるのは私たちです」

しかし、アンナさんはソ連時代の人だ。プーチン大統領を公然と批判することには消極的だ。

「プーチンは大統領です。皇帝、王、帝王です」

引用:BBC

アンナさんはモスクワでスターになったが、アンナさんの村はプーチン氏の軍隊の攻撃を免れておらず、たびたび空爆を受けている。

私たちが車を走らせている時も、何軒かの民家で火の手が上がっていた。灰になった家もある。アンナさんの自宅も砲撃の被害を受けていた。窓ガラスは割れ、屋根は損傷し、芝生には破片が散らばっている。

「今はわかります」とアンナさんは言った。

「ロシアの人たちは、ここウクライナの人のことなど気にかけていません。私たちの土地を征服することだけを考えているのです」

ウクライナ文化省のドミトリー・ガルコ氏も同意見だ。ロシアのプロパガンダは、すべてを薄っぺらいものにしてしまうという。

「ロシアは真実には無関心です。実在の人物に関心などありません。アンナさんが誰なのか、その運命はどんなものなのか、興味がないのです。もし可能ならアンナさんをさらい、ミイラにし、霊堂に納めるでしょう」

引用:BBC

アンナさんは今、身の危険を感じている。ウクライナで親ロシア派と見られ、オンラインで攻撃されている。

近所の人たちも皆、アンナさんを避けているという。小さな村なので、全員が顔見知りだ。

「有名にされて迷惑です。ウクライナで私は裏切り者だと思われています」

しかし、アンナさんの名声が彼女に及ぼした影響の本当の大きさがはっきりしたのは、インタビューの最後になってからだった。別れ際、アンナさんは鎌とつちが描かれた愛着のある赤い旗を、私たちに渡そうとしたのだ。

「トラブルはごめんです。これを理由に誰かに攻撃されるなど、二度と起きてほしくない」

引用:BBC

戦争には美談や英雄がつきものだ。

その多くは国民を鼓舞するために事実を離れて捏造される。

平時であればみんなが疑いの目を向ける情報でも、国の存亡がかかる非常時には国民の多くがその美談に感動し自らも国家に尽くそうと奮い立つのだ。

ロシアで「バブーシュカZ」と呼ばれ偶像化されたおばあさんも、本当は親ロシアだったのかもしれない。

しかしロシアのプロパガンダに利用され、ウクライナ国内で非国民扱いされるうちに主張を変えざるをえなかったのかもしれない。

一瞬の行動がプロパガンダに利用され、それによってその人の全人格が否定されるのが戦争だ。

軍事侵攻から4ヶ月、普通のウクライナ国民だけでなく親ロシア派の住民たちにも戦争は容赦なく過酷な運命を用意している。

<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 軍事侵攻から2ヶ月!「第2段階」に入った戦闘に翻弄される人々 #220424

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