<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 ロシアによる「マウリポリ掌握」の発表は近い将来の「作戦完了」への布石か #220422

それはとても奇妙な映像だった。

ロシアのプーチン大統領が、ジョイグ国防相と小さなテーブルを挟んで座り、「マリウポリを掌握した」との報告を受ける。

今回のウクライナ侵攻を決めた際の報告では、異様に長いテーブルの端に離れて座っていた2人の映像とはあまりに対照的であり、これにもきっと何かの意味が込められているのだろう。

プーチン大統領は、マリウポリの「解放」を祝い、ロシア軍を称えた。

そのうえで、以前2000人以上のウクライナ兵士が籠城しているとされる「アゾフスタリ製鉄所」への総攻撃を中止し、徹底的に封鎖するよう命じた。

プーチン大統領は、映像の中で、広大な工業施設を一気に襲撃するのは「合理的ではない」と述べ、総攻撃を中止するのはロシア兵の命を守るためだと話した。

この製鉄所はウクライナ側の最後の拠点となっていて、地下には強固で複雑なシェルターが張り巡らされている。

多くの市民もこの地下シェルターで避難生活を送っていて、ここ数日、国際的な注目がこの製鉄所に集まっていた。

ロシア軍は、地下貫通弾などを使って製鉄所の攻撃を試みていたが、どうやら短期間での攻略は難しいと判断したのだろう。

プーチン大統領自らが、製鉄所への総攻撃中止を命令し、それを音声付きの動画でロシア国民と国際社会に見せることで、ロシア側が人命を尊重していることをアピールしつつ、作戦を次のステージに移行するお膳立てを整えたように見える。

このプーチン大統領の決定の前、20日には製鉄所の地下に立てこもって抵抗しているウクライナ第36海軍歩兵旅団のセルヒー・ウォリナ団長が動画を発信していた。

「世界に対する我々の最後の訴えだ。(我々がメッセージを発信するのは)これが最後になるかもしれない」

製鉄所を包囲するロシア軍は「何十倍」も多いと述べ、地下に残っている民間人の救出を国際社会に訴えていた。

地下シェルターの様子を写したとされる映像も配信され、多くの子供たちが窓のない部屋に寄り集まって暮らしている。

その様子はまるで、映画「ターミネーター」に登場する抵抗軍のアジトのようだった。

英BBCのサイトに掲載されたマリウポリの地図。

激しい戦闘の末、市内の大半がすでにロシアの支配下に入ったことは間違いないらしい。

それでも製鉄所や港湾施設では今もウクライナ側の抵抗が続いている。

ロシア側はこうした市街戦を想定して、チェチェンやシリアなどから戦闘経験豊富な兵士を送り込んできたとも伝えられていたが、今回プーチン大統領が総攻撃の中止を発表し「兵糧攻め」を指示した背景には、やはり来月9日の「対独戦勝記念日」に勝利宣言を行うというタイムスケジュールが存在するように見える。

最大の激戦地マリウポリでの「作戦完了」を発表したことで、ロシア軍は未だ4割をウクライナ側が押さえているドネツク州の完全掌握に部隊を振り向けるものと予想されている。

この地域は広大な平野で、戦車を中心とした機動部隊の戦いになるという。

物量に勝るロシア軍にとって市街戦よりも有利との判断もあるのだろう。

そして、侵攻の大義をされたドンバス地方2州を完全に占領し、クリミア半島と地続きとしてアゾフ海を完全に手中に収めることにより、「当初の目的は達成した」として勝利宣言を行い、作戦の完了を国内外に発表するというのがプーチン大統領が思い描くシナリオのように思える。

とすると、5月初めにはウクライナの戦闘が止む可能性がある。

経済制裁に疲れ始めた西側諸国も、内心ホッとしてそれ以上の制裁強化には踏み込まず、占領地域のロシア化が時間をかけて行われていくのだろう。

当然のことながら、ウクライナ側は占領地の固定化に抵抗するだろうが、西側からの支援は次第に減り、2014年に似た膠着状態が今後続いていくというのが私の見立てだ。

今回の戦争で、ウクライナは再び国土の一部を奪われることになるが、ウクライナ側の人的損害も大きく、一旦停戦が実現した後再度ロシアに戦いを挑むというのは難しいのではないかと思う。

生き残ったゼレンスキー政権はEU加盟を目指し、親ロシア系住民をロシア支配地域に追い出したうえで、ウクライナの民主化をこれまで以上に進めていくことになる。

今回の戦争で、ゼレンスキー大統領のカリスマ性は飛躍的に高まった。

プーチン大統領が目指した親ロシア政権の樹立やウクライナの中立化には完全に失敗するだろう。

気になるのは、ロシアが占領した地域で、住民たちの強制移住が進められているという報道だ。

今後占領地域にはロシア人が意図的に移り住み、ロシア系住民たちによる「国家建設」が始まる。

EU寄りの住民とロシア寄りの住民が棲み分けることでウクライナの人々が幸せになるならば、それはそれで一つの着地点となるだろう。

問われるのはむしろ私たち、国際社会の価値観である。

「武力による一方的な現状変更を認めない」としてきた西側の論理が完全に破綻するからだ。

ロシアは20日、西側諸国を威嚇するかのように、次世代のICBM「サルマト」の発射実験を行った。

米戦略国際問題研究所(CSIS)や米議会調査局によると、サルマトの最大射程は1万8000キロメートルで、10個程度の核弾頭を搭載できる。核弾頭は飛行途中にそれぞれ分離されて別々の攻撃目標に向かうため、迎撃する難度は上がる。核弾頭の搭載数を減らせば、北極回りだけでなく米軍のミサイル防衛網が手薄な南極回りで米本土を攻撃できるとされる。

引用:日本経済新聞

今年秋にも実践配備される予定で、プーチン大統領は「最高の性能を持ち、現代の全てのミサイル防衛システムを突破できる。我々を脅かそうとする者の考えを改めさせるだろう」と語ったという。

こんなロシアを国際社会はずっと除け者にしたままやっていくのか、それとも一定の時間を経たのち妥協してしまうのか?

私には後者の可能性が高いと思える。

結局は「力のある者が得をする弱肉強食の世界」が復活し、日本を含む各国が軍備強化に励む時代に逆戻りしてしまう。

そんな嬉しくない未来が待っている気がして仕方がない。

<吉祥寺残日録>ウクライナ危機🇺🇦 ロシアからの降伏要求を拒否!マリウポリ包囲戦は6年前のアレッポそっくり #220321

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