<吉祥寺残日録>【東京五輪2日目】内村敗戦の日、私は自転車ロードレースを見に行った #210725

開会式も終わり、東京オリンピックでは様々な競技で一斉に試合が始まった。

次々に始まる競技を追って、テレビのチャンネルをカチャカチャいじり続ける。

でも、直接オリンピックに触れたい。

そう思って私が出かけたのは、府中・調布・三鷹にまたがる「都立武蔵野の森公園」からスタートする自転車ロードレースだった。

競技がスタートする11時を意識して、自宅を10時に出て、東八道路を西に向かう。

スタート地点が近づくにつれ、道路が混雑し始める。

警視庁の警備車両も渋滞に巻き込まれていた。

渋滞の原因はすぐに分かった。

かつて私が暮らしていたエリアの近くで東八道路が通行止めとなっていたのだ。

自衛隊員が道路の真ん中に仁王立ちし、居住者以外の通行車両を迂回させている。

もう一つ気づいたのは、普段より多くの自転車が私と同じように西に向かっているということだ。

その中にはサイクリング愛好者らしき人の姿も目立つ。

「みんなロードレースを見に行っているんだ」

私の場合は2日前、東京スタジアムを見学に行った際に偶然、隣接する「都立武蔵野の森公園」が自転車ロードレースのスタート地点になっていることを知ったので、メディアで報じられることがほとんどない日本ではマイナーな競技ならそれほど混雑することなくオリンピック気分を味わえるだろうと考えたのだが、世の中それほど甘くはなかった。

みんな私よりはるかにオリンピックについてよく知っているのだ。

どこでレースを見るか迷った末、とにかく武蔵野の森公園のスタート地点に行ってみることにした。

公園内ならゆったりとしていてスペースもあるだろうと判断したからだ。

しかし、公園は完全に封鎖されていた。

仕方なく、選手たちが最初に公道に出てくる曲がり角に陣取り15分後のスタートを待つことにした。

この場所には公式映像を撮影する中継カメラも設置されている。

自転車のロードレースといえば、日本ではあまりテレビで放送されることはないが、本場ヨーロッパでは夏の超人気スポーツ競技である。

沿道には自転車ヘルメットをかぶった人の姿も。

「ツール・ド・フランス」など世界の最高峰レースで活躍する超一流選手を間近に見られるのだ。

自転車ファンの人にとっては垂涎の機会なのだろう。

スタート10分前、選手たちを先導するオートバイの集団が姿を現す。

前輪が二つある珍しいオートバイも出てきた。

普段自転車レースなど見たことのない私にはとても新鮮だ。

スペアの車輪を積んだサポートチームのオートバイもいる。

たくさんの自転車を積んだサポートカーも登場する。

いよいよスタートまで残り1分。

いつの間にか、沿道は多くの人で埋まっていた。

コロナ禍にもかかわらずすごい「密」。

でもみんな静かにスタート時間を待っている。

スタート時間の午前11時。

予定通り選手たちの大群が私たちの前を通り過ぎた。

スタートから府中あたりまでは「パレード区間」と呼ばれ、先導車の後ろを選手たちが集団で走っていく。

私には誰が誰かわからないが、自転車の世界でのスーパースターたちがこの中にいるのだ。

沿道に詰めかけた野次馬たちが一斉にスマホを構える。

選手たちの最後尾が通り過ぎるまで、ほんの30秒ほどの出来事だったが、みんなオリンピックを身近に感じられて満足そうにその場を離れていく。

この日の男子ロードレースには他のエリアでも多くの人たちが沿道に詰め掛けたらしい。

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自転車ロードレース男子は、私がいた武蔵野の森公園を出発し、静岡県の富士スピードウェイのゴールまで244キロまでの長丁場だ。

優勝したのは南米エクアドルのガラパス、ツール・ド・フランスで総合優勝を果たしたスロベニアのポガチャルは銅メダルとなった。

オリンピックは、普段目にしないマイナースポーツに親しむ機会だ。

柔道だってオリンピック以外で見ることはほとんどない。

地元東京開催ということでますますプレッシャーがかかる柔道陣だが、男子60キロ級の高藤直寿が日本選手初の金メダルを獲得。

泥臭く「負けない柔道」に徹して腕力の強い外国人選手たちを制した。

一方、女子48キロ級の渡名喜風南は堂々の銀メダル。

最大の強敵と見られたウクライナの「モデル柔道家」ビロディドを準決勝で下し、優勝が期待されたが一瞬の隙をつかれて決勝で敗れた。

両親が沖縄出身でいかにも沖縄という容貌だが、彼女自身は神奈川県の出身だそうだ。

まったく緊張した雰囲気を見せないメンタルの強さがとても魅力的な選手だった。

一方、大会2日目は新旧交替を強く印象づけた1日だった。

最大の衝撃は、4大会連続出場、体操界のレジェンド内村航平。

団体メンバーから外れ、鉄棒の種目別一本に絞って出場した東京オリンピックだったが、高難度の離れ業を次々と決めた後に突然鉄棒から落下した。

内村本人も「何が起きたかわからなかった」という魔の瞬間。

ほんの一瞬のミスが選手の運命を決める。

内村の東京五輪はあっけなく終わった。

女子重量挙げのメダリスト三宅宏実も5回目のオリンピックとなる東京大会は、ジャークで3回連続で失敗、「記録なし」で終わる。

しかし三宅の場合は全てを出し切り思い残すことなし。

試合後、現役引退を発表した。

そして病と闘った池江璃花子もオリンピックの初戦に臨んだ。

競泳女子400メートルリレー。

第2泳者として泳いだ池江だが、日本チームは残念ながら予選敗退。

でも彼女がここにいるだけで、多くの日本人が感動を味わう。

日本はこの57年間に成熟した。

勝利だけが価値ではない。

結果だけでははかれない人間の強さ、魅力をオリンピックは感じさせるのだ。

勝者だけではなく、敗者にも注目しながら、これからのオリンピックを楽しんでいきたいと思う。

<吉祥寺残日録>本当の問題は「GO TO」じゃなく一人一人の無責任さなんじゃない? #201213

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