即位の礼

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令和の天皇が内外に即位を宣言する「即位礼」の日、東京には台風崩れの低気圧が近づき、朝からはげしい雨が降った。

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私と妻は、即位後のパレートを見物しようと、人形町に宿をとり準備していたのだが、先の台風の被害が甚大だったため、パレードは11月に延期となり、早めに帰宅してテレビで儀式の様子を拝見した。

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印象に残ったのは、高御座の天皇が発した「おことば」。

それはかつての天皇では考えられないような平易で庶民的な言葉遣いだった。

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『 さきに、日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。

ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。

上皇陛下が三十年以上にわたる御在位の間、常に国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その御心を御自身のお姿でお示しになってきたことに、改めて深く思いを致し、ここに、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います。

国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。』

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「国民の幸せと世界の平和」という言葉を2度も繰り返し、「国民に寄り添いながら、憲法にのっとり」と続けた。

そして何より驚いたのが、「つとめを果たすことを誓います」という言葉。

誓う相手は、国民なのか、皇祖皇宗なのかは定かではないが、まるで選手宣誓のような庶民的な言い回しに、令和の新天皇の強いメッセージを私は感じた。

国民の上に立つのではなく、一人の日本人として自らの責務を果たす覚悟を表明したものと理解したい。

新皇后となった雅子さまと築いていく新たな皇室がどんなものになるのか、期待は高まる。

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この「おことば」を聞きながら、思ったことがある。

新天皇の父である現在の上皇、平成の天皇は、即位礼の「おことば」で何を話したのか、という疑問である。

ちょっと、比較してみたいと思う。

平成の天皇は、次のような「おことば」を発した。

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『 さきに、日本国憲法及び皇室典範の定めるところによって皇位を継承しましたが、ここに即位礼正殿の儀を行い、即位を内外に宣明いたします。

 このときに当り、改めて、御父昭和天皇の六十余年にわたる御在位の間、いかなるときも、国民と苦楽を共にされた御心を心として、常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓い、国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。』

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こうして比較してみると、今回の「おことば」が平成のそれを踏襲していることがわかる。

ただ、文章を短く切って表現することによって、より平易で庶民的な印象を聴く者に与えている。

そして「国民の幸せと世界の平和」というキーワードや、「国民と寄り添い」という自らの基本姿勢を強調し、さらに「誓います」と言い切ることで、誰にでもわかりやすい表現で天皇の意志を明確に示したのだと私は思う。

天皇の威厳という点では重みにかける気もするが、私は新天皇の強い意志表明を高く評価したい。

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さて、さらに遡って昭和天皇の即位礼はどうだったのか?

気になったので、ちょっと調べてみた。

昭和の「即位の礼」は1928年京都御所で行われた。まだ、戦前の時代であり、天皇は現人神であった。

今で言うところの「おことば」は、戦前までは「勅語」と呼ばれた。

天皇の肉声を聞くことは恐れ多いことであり、「即位礼ノ勅語」も国民が直接聞くことはできなかった。

そして勅語の内容も、平成、令和の「おことば」とは、かなり趣を異にするものである。

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『 朕惟フニ我カ皇祖皇宗惟神ノ大道ニ遵ヒ天業ヲ経綸シ万世不易ノ丕基ヲ肇メ一系無窮ノ永祚ヲ伝ヘ以テ朕カ躬ニ逮ヘリ朕祖宗ノ威霊ニ頼リ敬ミテ大統ヲ承ケ恭シク神器ヲ奉シ茲ニ即位ノ礼ヲ行ヒ昭ニ爾有衆ニ誥ク
皇祖皇宗国ヲ建テ民ニ臨ムヤ国ヲ以テ家ト為シ民ヲ視ルコト子ノ如シ列聖相承ケテ仁恕ノ化下ニ洽ク兆民相率ヰテ敬忠ノ俗上ニ奉シ上下感孚シ君民体ヲ一ニス是レ我カ国体ノ精華ニシテ当ニ天地ト並ヒ存スヘキ所ナリ
皇祖考古今ニ鑑ミテ維新ノ鴻図ヲ闢キ中外ニ徴シテ立憲ノ遠猷ヲ敷キ文ヲ経トシ武ヲ緯トシ以テ曠世ノ大業ヲ建ツ皇考先朝ノ宏謨ヲ紹継シ中興ノ丕績ヲ恢弘シ以テ皇風ヲ宇内ニ宣フ朕寡薄ヲ以テ忝ク遺緒ヲ嗣キ祖宗ノ擁護ト億兆ノ翼戴トニ頼リ以テ天職ヲ治メ墜スコト無ク愆ツコト無カラムコトヲ庶幾フ
朕内ハ則チ教化ヲ醇厚ニシ愈民心ノ和会ヲ致シ益国運ノ隆昌ヲ進メムコトヲ念ヒ外ハ則チ国交ヲ親善ニシ永ク世界ノ平和ヲ保チ普ク人類ノ福祉ヲ益サム事ヲ冀フ爾有衆其レ心ヲ協ヘ力ヲ戮セ私ヲ忘レ公ニ奉シ以テ朕カ志ヲ弼成シ朕ヲシテ祖宗作述ノ遺烈ヲ揚ケ以テ祖宗神霊ノ降鑒ニ対フルコトヲ得シメヨ』

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国民に対して発する「おことば」に対し、勅語は天皇家の祖先である「皇祖皇宗」に対して誓いを立てるのだ。

ただ、張作霖爆殺事件が起き、軍部による中国大陸での活動が活発化していた時代に行われた即位礼で、昭和天皇が「世界ノ平和」に言及していることは興味深い。

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「国民の幸せと世界の平和」を願い、「国民と寄り添う」ことを誓った新天皇。

令和の時代が、天皇の願いに沿った時代となることを心から願いたい。

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1件のコメント 追加

  1. dalichoko より:

    御言葉がとても良かったお思いました。
    (=^ェ^=)

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