フェイスブック・ショック

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このところ巨大IT企業に対する風向きが変わってきたようだ。

昨日のニューヨーク市場では突然フェイスブック株が急落した。「フェイスブック・ショック」という言葉も生まれたようだ。

今朝の日経新聞から引用する。

 

『 発端はイギリスに本社を置く政策コンサルティング会社、ケンブリッジ・アナリティカ。同社がフェイスブック上の個人情報を自らの政策アドバイスに活用していたとされる問題だ。

英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票で離脱派を支援し、成果を上げたケンブリッジ社は2016年の米大統領選でトランプ陣営についた。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利用し、陣営に有利なニュースや広告をネット上で効率的に流布するなどのアドバイスを手がけたとされる。

同社の設立時に世界で最も成功しているコンピューターを駆使して投資をするクオンツヘッジファンドの一つ、ルネッサンス・テクノロジーズの元共同最高経営責任者(CEO)のロバート・マーサー氏が資金を提供したのは運用業界では有名な話しだ。バノン元首席戦略官も幹部に名を連ねていた。トランプ陣営が大統領選で勢いをつけたのはバノン氏とケンブリッジ社を取り込んでからだ。

そのケンブリッジ社がフェイスブック上の5000万人を超すデータを活用していた実態が元社員によって告発された。米議会や英情報コミッショナーなどが調査に乗り出す姿勢を表明。フェイスブック株は一時8%超下げる急落を演じた。

ケンブリッジ社がハッキングしたわけでもフェイスブックが情報を漏洩したわけでもない。フェイスブック上で通常やり取りされているデータを規則を超えて活用した。これが問題視されると、個人のデータを分析し効率的に広告出稿するビジネスモデルそのものが危機にさらされる。フェイスブックのライバルのスナップチャット株も大きく下落した。

米市場の時価総額上位5社であるITビッグ5も軒並み売られた。個人データの分析・活用に規制が入ると影響はフェイスブックにとどまらない。5社がこの日失った時価総額は1000億ドル規模(約10兆円)に上った。

欧州当局は寡占に絡んで米IT企業に制裁金を科す動きが止まらない。トランプ大統領も時折アマゾン・ドット・コムの独占状態を批判する。IT企業によるデータ独占状態である「ニューモノポリー」への懸念は高まっている。

人材と技術と情報を握り、盤石に見えるビッグ5も「情報規制がかかると極めて厳しい状況に追いやるだろう」(GBHインサイツのダニエル・アイベス氏)。米メディアの中にはフェイスブックが「存亡の危機」に直面していると評するものもあった。

「1960年代、GMとフォードは米市場の75%のシェアを持っていた。ちょうどグーグルの検索シェアと同じくらい。当時、米自動車産業は無敵だと思っていた」。データ・トレック・リサーチのニコラス・コラス氏は振り返り、いつまでも優位な状況は続かないと見る。「テック株を支持するが、歴史は繰り返されることも知っている」。

米IT企業が抱える膨大な個人情報と活用の仕方を巡り社会が納得する落としどころはどこか。こうした議論と無縁なのは個人情報が政府に渡ることもいとわない中国市場を地盤とする中国ネット勢だけ。個人情報のあり方を巡る議論の高まりは、短期的に米IT企業の勢いをそぐ可能性もあるが、成長の持続性の観点からは目を背けられない。米株市場の先行きをも左右する。』

 

あまりに巨大化したIT企業に対し、世界中で政府側からの反撃が始まっている。

先週の日経新聞には、こんな記事も出ていた。

 

『  欧州連合(EU)欧州委員会は米アップルやグーグルなどIT(情報技術)分野の巨人企業を対象とする独自の「デジタル課税」にカジを切り始めた。国際協調によるルール見直し論議も進むが、早期の実現は難しいと判断。低税率の国・地域に利益を移す「税逃れ」を防ぐため、域内売上高に課税する案を3月中に加盟国に示す方針だ。

EU域内の多くの国では多国籍企業が欧州市場を席巻する一方、利益に見合った税金を納めていないとの不満が強い。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、欧州委は域内で旧来型の企業が実効税率23.3%の法人税を納めているのに対し、IT企業は平均9.5%だとみている。

IT分野はどこで収益を稼いでいるのか特定するのが難しい。低税率の国に利益を移し「節税」する事例は多く、欧州委も取り締まりを強化。16年夏にはアイルランド政府に対し、米アップルに与えた最大130億ユーロ(約1兆7千億円)の税優遇が「違法」だったと認定し、追徴課税で取り戻すよう指示した。

欧州委が提案を検討しているのは、IT企業の課税対象を利益から売上高へ切り替える案だ。検討する税率は1~5%で、3%が有力視される。3%なら年約50億ユーロの税収拡大が見込める。世界売上高が年7.5億ユーロ以上などといった企業を対象とする方向だ。

世界を舞台とするIT企業の課税逃れを巡っては、経済協力開発機構(OECD)など国際的な枠組みでの課税ルール見直しも進む。19日からアルゼンチンで開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも議題となる見通しだ。

現行のOECD租税条約では、国内に支店や工場などの恒久的施設(PE)がない企業には法人税を課税できないのが原則。世界的なIT企業の実態に合わせ、PEがなくても利益があれば課税できるようにする案などが検討されている。

EUも17年秋、国際協調に基づく課税見直しを最優先する方針を示し協議に参加してきた。だが利害が交錯して早期のルール見直しは望めないのが実情のため、独自課税の検討を先行させる。

もともと売上高への課税案は17年秋にフランス、ドイツ、イタリア、スペインが共同提案し、国内企業と世界的なIT企業との「税格差」を是正する応急措置を求めた。欧州委は国際ルールの見直しが実現するまでの暫定措置と位置づけ、国際的な議論を後押しすることを狙っている。

もっとも、EUでは税制の変更は加盟28カ国の全会一致の承認が必要。低税率国のアイルランドやルクセンブルクなどは独自課税案に反対姿勢で「EUがデジタル分野でリーダーになるためには、課税や規制の強化は解決策にならない」(アイルランドのバラッカー首相)との異論がある。

米国は23日に鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を発動する。米系企業が多いIT大手を狙う課税強化策をEUが打ち出せば、米欧の対立が一段と深まる恐れもある。』

 

グローバル経済の急拡大は、世界中に大きな歪みを生んでいる。

タックスヘブンを筆頭に、世界の国々が法人税の大幅引き下げを競い合う。問題は減った法人税をどこから回収するかだ。特効薬などはない。広く薄く個人負担が増えていく。そして、ますます格差が拡大する。

だから、グローバル企業への課税強化は絶対に必要だ。EUやOECDのような国際機関がイニシアチブを握らない限り、各国の利害が対立しいつまで経っても実現しない課題だ。

インターネットを魔法の杖として崇める時代はもう終わる頃だ。そこにも常識的なルールが必要であり、そのポイントは公正さである。

インターネットを優遇し、リアルな商売を衰退させた後には殺伐とした社会が待っていることだろう。ネット企業による個人情報の利用にも歯止めをかけないと、プライバシーのない監視社会が確実にやってくる。

今、必要な国際的な規制を導入しないと、手遅れになってしまうだろう。

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