ゴーン・ショック

投稿日:

久々に、ビックリした。

日産のカルロス・ゴーン会長が、東京地検特捜部に逮捕された。容疑は、金融商品取引法違反。有価証券報告書に、自らの報酬額について過少に記載していたことが直接の逮捕容疑である。

マスコミもまったく寝耳に水の電撃逮捕。ゴーン氏が日本に帰国したタイミングを狙った周到の逮捕劇だった。

ところが、驚いたことに日産は直ちにコメントを発表した。その日の夜には、西川社長自らが記者会見を開き、社内調査の経緯を発表するという手回しの良さだ。私は、とても強い違和感を覚えた。

特捜部による捜査の端緒は、内部告発だったという。

どのような内部告発だったかは明らかになっていないが、これは通常のような特定の一般社員による内部告発ではないだろう。私の勝手な推測だが、西川社長を中心とする日産中枢のグループが特捜部に情報を流したのではないか。長年続いたゴーン体制に対して仕掛けられた西川社長らによる「社内クーデター」に違いないというのが第一報を聞いての私の感想だった。

たった一人で記者の前で話す西川社長の姿を見ながら、「社内クーデター」という私の直感が当たっているのではないかとの確信を強めた。詳しいことは、西川社長しか話せないほど、社長主導で計画されたのではないか。もしくは、もしゴーン派に反撃されたら自分が全責任をとって他のクーデター派を守ろう、そんな決意を感じた。

会見の中で西川社長は、「ゴーン氏の功績は彼一人のものではなく、日産再生のために努力した多くの社員の頑張りの功績」という趣旨の話をした。ゴーンさんが日産を率いた20年近くの間に鬱積した不満が西川社長の口を通して一気に吹き出した印象を受けた。

西川社長らは、社内で問題提起をしてもゴーン氏から返り討ちにあうと考えたのだろう。クーデターを仕掛けるに当たって特捜部を利用した。このところ、世間を唸らせる活躍ができていない特捜部が日産からのタレコミに飛びついた。そして、ゴーン氏の不正行為に加担した日産の幹部社員たちに司法取引を持ちかけ、子会社を使って行っていた不正のカラクリを証拠とともに解明したのだろう。

私は勝手にそう理解した。

ただ、私はゴーンさんが受け取っていた報酬が高すぎるとは思っていない。

彼は、日産から受け取った報酬を年10億円程度と記載していたが、実際にはその倍の金額を受け取っていた。株主総会で認められた役員報酬の枠内、他の役員の報酬額を抑えて余ったお金を自らが受け取っていたようだ。

年20億円というのは日本人の感覚からすれば明らかに高額すぎるということになるのだが、個人的には、ゴーンさんの功績はその高額報酬をもらうに値すると思っている。ゴーンさんがいなければ、すでに日産は倒産していた可能性が高い。村山工場だけではなく、全従業員が路頭に迷っていただろう。株主たちが、現在5%の配当を手にしているのも、ゴーンさんのおかげだ。

ゴーンさん自らがかつて言っていた通り、彼の報酬額は日本では突出していたが、グローバル企業のトップとしては特に珍しくない金額だ。巨大IT企業の経営者たちは、その持ち株によりゴーンさんよりはるかに高額の報酬を受け取っている。ただゴーンさんは、創業者ではなく、プロの経営者だ。株による利益が十分得られない以上、役員報酬の形で自らの実績に見合う金額を受け取る権利があると考えていたのだろう。

しかし、日本は世界でも最も賃金格差の少ない国だ。だからゴーンさんの報酬にも、毎回株主総会で批判が出た。日本一の報酬額としてメディアにも取り上げられる。本人は、そのくらいの報酬をもらって当然だと考えているので、大きな批判にさらされることなく本人が納得する報酬をもらう方法として、様々な方策が編み出されたのではないかと推測する。

海外に子会社を作って日産から融資をさせ、そのお金を使って海外の不動産を購入したり、家族旅行の代金を肩代わりさせたりしたのも、表立ってはもらえないが本来受け取る権利がある報酬を得るための迂回ルートという考え方だったのではないか。そうした工作が始まった当初は、当時の日本人幹部たちも暗黙の了解をしていたのではないかと、私は疑っている。

ゴーンさんの功績は、日産にとってそれほど大きかったのだと思う。

そうした功労者を司法当局に売り飛ばした日産は、今後大変な苦境に陥るのではないかと予測する。西川社長は、ルノー、三菱とのアライアンスには影響はないと述べていたが、そんなことはあり得ないだろう。日産グループがトヨタを抜いて世界第2位の自動車販売台数を記録したというのは、ゴーン氏の力の賜物だ。西川さんにそれが引き継げるわけがない。ましてや日産の株式の40%以上はルノーに握られている。ルノーの新たな経営者が誰になるにせよ、ゴーン氏を売った日産に厳しい態度を示すことは間違いないだろう。

見て見ぬ振りというのは、できなかったのだろうが、今回の逮捕劇は日産の命取りになりかねない。

私個人は、ゴーンさんのようなカリスマ経営者の下で働きたいとはまったく思わないが、彼が稀代の経営者であったことは間違いない。

その寝首を掻いた日産と、彼を葬った日本の経営風土が世界からどのように評価されるのか、今後に注目していきたい。

コメントを残す