小豆島旅行2日目。
朝起きると、窓の外には静かな瀬戸の海が広がっていた。
昨日、波間に沈んだ恋人の聖地「エンジェルロード」が再び姿を現している。
波ひとつない穏やかな海だ。
部屋の窓からは日の出は拝めなかったが、朝6時20分ごろに向かいの建物に朝日が当たるのを見て太陽が昇ったことを感じ取った。
1階の大浴場に向かう。
チェックイン後これで3度目の入浴となる。
朝風呂を浴び、豪華な朝食をいただく。
普段の倍の量を食べてしまった。
あとはチェックアウトまで部屋でまったり、やっぱり旅行は最高だ。
チェックアウト後、私たちが向かったのは誓願寺という小さなお寺だった。
請願寺は8世紀、行基によって開かれたと伝わる歴史のあるお寺だが、海に面した小さな集落にある一見どこにでもあるような普通のお寺といった印象である。
だが、ここには日本でも珍しい巨樹があるという。
正面の楼門をくぐると目の前にそれは現れた。
国指定天然記念物「請願寺のソテツ」である。
お寺の境内にソテツというのは珍しいが、実はこれ、“日本一”の大ソテツと地元では言われているそうだ。
しかし、調べてみるとソテツの巨樹というのは他にもあるようで、「日本三大ソテツ」というのまであるらしい。
静岡県の「龍華寺」と「能満寺」、そして大阪府の「妙国寺」にある大ソテツがそれで、いずれも樹齢1000年以上なのだという。
その点、小豆島の大ソテツは樹齢がはっきりしない。
お寺に伝わる寺伝では、お寺を開いた天平時代の僧・行基が自ら植えたとされているが、有力なのは江戸元禄の時代にこの地で廻船業を営んでいた豪商塩屋金八が長崎方面から持ち帰り寄進したというものである。
もし行基が植えたものならば樹齢1300年、塩屋金八なら450年と随分開きがあってはっきりしないのだ。
ただ、その猛々しい葉に近づいて青空をバックに大ソテツを見上げると、実に南国気分を味わえる。
椰子の木が密集するプランテーションのような光景にも見えるが、実はすべて一本のソテツなのだ。
その証拠は、葉の下をくぐって樹木の内部を覗き込むとはっきりとわかる。
根元の太さは約8.1メートル。
その太い1つの根から5本の太い幹が四方に伸び、それぞれの幹が奔放に枝を伸ばしている。
あまりにも盛んに茂っているので、幹がその重さに耐えられるよう、石材でつっかえ棒がしてあった。
右に左に上に下に、思い思いに伸びるソテツの枝は、その質感も相まって竜の首のように見える。
伝説に登場するヤマタノオロチや、私たち世代で言えば怪獣映画の人気悪役「キングギドラ」を彷彿とさせるではないか。
この大ソテツは、ただ外から見るのではなく、懐に入り込んで中から見上げるのが良い。
人間が築いた石の囲いを今にも乗り越えて、本堂を飲み込みそうな迫力を感じる。
昨日同じ小豆島で見た「宝生院のシンパク」ほどの神々しさは感じないが、自然の持つパワーというものを思い切り感じることができるパワースポットだろう。
ちなみに、大ソテツには白い大きな花が咲いていた。
調べるとどうやら雌花のようだ。
ソテツの花は10年に一度しか咲かない珍しいものだと書いてあったが、もしそうだとすると私はちょっとラッキーかも。
でもこれだけたくさんの枝があることを考えると、順番に毎年のように花が咲いているのかもしれないとも思う。
ともあれ、巨樹に出会うと元気が出る。
これからも旅先に巨樹があれば、積極的に会いに行きこのブログに記録していきたい。
昨日の投稿と合わせて、新シリーズ「巨樹を見にいく🌳 」をスタートさせ、私のライフワークの1つとして続けていこうと考えている。
さて、ソテツを見た後、本当はのんびり小豆島をドライブする予定にしていたのだが、妻が「早く帰って庭いじりをしたい」と言い出したもので、お昼前のフェリーに乗って岡山に変えることになった。
実のところ私も、残してきた農作業のことが気になっていたのでなっていたので妻の意見に素直に従ったのだ。
帰りのフェリーは天気にも恵まれて、青く穏やかな瀬戸内海の絶景の中を静かに進んでいった。
小豆島・土庄港から岡山港までは1時間ちょっとの船旅である。
昨日乗った日生からのフェリー以上に岡山行きのフェリーは内部がきれいで、最前列の特等席に陣取って世界有数の多島美を堪能する。
そして夕方、妻が小豆島で買ってきたオリーブの苗木をお墓の近くの空いたスペースに植えた。
周りは雑草だらけなので果たして根付くかどうかわからないが、どうやら妻はこの苗木を早く土に埋めたくて帰りたがっていたということがわかった。
もしもオリーブの木がこの場所を気に入ってくれて大きく育つと、世界平和を願う私たちの想いが後世に残せるような気がして楽しみでもある。
ついでにもう1つ。
小豆島にいる間に電話がかかってきて、注文していたミニ耕運機が入荷したと連絡があったので帰りにホームセンターに立ち寄って受け取ってきた。
卓上コンロで使うガスボンベで動く小さな耕運機である。
まだ使い方もわからないのでちゃんと使えるかどうか不安だが、今回の滞在中に試してみて、畑に何かタネでも播きたいと考えている。
やることは、いくらでもある。
入院した伯母がいつも言っていた言葉を思い出しながら、「確かに」と納得する日々である。
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