WHO世界保健機関は5日、2020年1月に出した新型コロナの緊急事態宣言をほぼ3年3ヶ月ぶりに終了すると発表した。
ワクチンの普及などにより世界での死者が大幅に減少したのが理由だという。
過去のパンデミック同様、世界中を震撼させた新型コロナウイルスのパンデミックも3年間でほぼ終息に向かうことになりそうである。

ちょうどこのタイミングで、我が家では3人の息子ファミリーが一堂に会する食事会を催した。
大阪に赴任していた次男家族が東京に戻ってきたことを祝い、久しぶりにみんなで遊ぶことが目的である。

今日の会食を前に、三男から前の日に一晩泊めてもらいたいと連絡が入った。
去年生まれた孫を私たちに見せたいと思ってくれたらしい。
外に出ると孫が泣くのでほとんど外食もしていないらしく「そばが食べたい」というので、愛用のそば屋「ほさか」に一足先に行って行列に並んだ。

三男たちが到着する前に私たちの順番になったので、とりあえず妻と二人で店に入って日本酒やおつまみなどを注文して時間を稼ぐことにした。
上の写真はその時注文した「鳥レバーの生姜煮」(640円)。
サクッとお蕎麦を食べようと並んでいる人たちの視線も気になって、さらに「梅しそサンド」(670円)や日本酒の「千寿」(1合870円)などを注文して、そば屋によくいる昼飲みの客を装った。
三男たちは私たちが席についてから15分ほどしてからやってきた。

バギーに乗せられてやってきた孫は、生まれて8ヶ月になり髪の毛もふさふさになりしっかり成長していたが、慣れない場所にすぐに泣き声をあげ始めた。
三男とお嫁さんは代わる代わる孫を抱き上げ、一人があやしている間にもう一人が急いでそばを食べるといった感じで、とてもゆっくりと食事を楽しめる状況ではない。
私たちもその様子を眺めつつ、まだ助けてあげることもできず、急いで注文していたつまみやそばを平らげてそそくさと店を後にした。

食事後、うちのマンションに来てからは孫も少し落ち着いた様子で、最初のうちは私たちの顔をじっと見つめて警戒していたものの、次第に慣れてきて一緒に遊べるようになった。
我が家に一泊し、翌朝にはすっかり警戒心も解けたようで、特にぐずることもなく私のベッドで戯れて過ごす。

そしていよいよ今日の会食。
ランチで予約したのは、ちょっと奮発して吉祥寺きっての高級中華料理店「吉祥寺聘珍楼」だ。

3つの個室をつなげてもらい、3つの円卓に分かれて座る。
最初は家族ごとに座ってもらおうと考えていたが、久しぶりだから家族単位ではなく混ざって座った方が楽しいということになり、それぞれ好きな席に座ってもらった。
こうして3人の息子家族全員が集まるのは2年前の三男の結婚式以来である。

料理は「吉祥之筵」(6800円)というコースを選んだ。
聘珍楼ではこれが最も安いコースで、前菜からデザートまで全7品で構成されている。
私の円卓には長男と次男、そして長男の家の今年中学3年になった男の子が座り、男同士の話で盛り上がった。

ウェブデザイナーとして活躍する長男は、コロナの3年、仕事量が落ち込み苦労したらしいがここに来て注文が増え大忙しだという。
住宅メーカーに勤める次男は、大阪から戻ってきたばかりだが大阪の仕事から外れたわけではなく、毎週東京と大阪を往復する過酷な勤務状況になっているらしい。
コロナ禍でオンラインでの仕事が社会に定着するとも言われたが、やっぱりパンデミックが終われば物理的な移動も復活したようである。

中三になった孫は来年高校受験ということで、週3回塾に通いかなり本気で受験勉強を始めている。
志望校はまだ決まっていないようだが、勉強嫌いだった長男が自分の子供のこととなると熱心になっているのがちょっとおかしかった。
少し会わない間に、孫たちはみんな成長していて、その変化を見るだけで楽しくなってくる。

お昼寝のため少し遅れてきた三男家族も合流し、賑やかな会食が始まった。
次男は子供の頃からエビとカニが苦手だったが、今も食べられないというので食材を別のものに変えてもらった。
すると、次男の家の2人の女の子たちもエビとカニは嫌だというので、お子様ランチもエビとカニを避けてもらうようお願いする。
どうやら次男の家では奥さんが気を遣ってエビ・カニを使った料理が食卓にのぼらなかったらしく、そのためアレルギーでもないのに娘たちもエビ・カニが食べられなくなってしまったようだ。

ここでもまたぐずる赤ちゃんをみんなであやしながら、ワイワイ賑やかに楽しくランチをいただいた。
こうしてみんなで集まるのは年に一度か二度のこと。
最初はなんとなく緊張気味だった孫娘たちも次第に打ち解けておしゃべりをしてくれる。
5歳になった次男の家の末っ子は、3歳ぐらいまではほとんど喋らず言葉の遅い子供だったが、今では孫の中で一番元気で大好きな恐竜や新幹線を赤ちゃんに見せたりしながらずっとおしゃべりしていた。

こうして家族13人揃ってのランチを終え、私たちのマンションに向かう。
食事の後はみんなでゲームなどをして遊ぶのが我が家の習慣だ。
とはいえ、赤ちゃんから中学生まで年齢の幅ができてしまったので、以前のように全員でトランプやゲームに集中するという雰囲気にはならない。
小さい子に合わせると中学生には退屈だし、中学生に合わせれば小さい子たちはついてこれないのだ。
でも、白けたような振る舞いをする子供はおらず、折り紙をしたり野球盤をやったりグループを作りながら思い思いに楽しんでいた。
その様子を見ながら、「幸せな家族だな」と思う。
この先、孫たちがどんな大人になっていくのかはわからないが、それぞれ自分の好きな道を選び、自立した人間に育ってくれればと願うばかりだ。
人と人が遮断され自由を制約された3年間は終わった。
100年前のスペイン風邪がそうだったように、今回のコロナ禍も時間の経過とともに後世の人たちには忘れ去られてしまうのだろう。
それはそれでいい。
大地震と違って、パンデミックには必ず前兆がある。
それまでは感染症のことなど忘れて、人との交流を思う存分楽しんでほしい。
コロナ禍の3年間、不自由な思いをした子供たちに変な自粛癖がつかないように、子供たちがさまざまな経験を積めるよう私たち周囲の大人たちが環境整備をしてやらねばならない。
WHOが緊急事態宣言の終了を発表した日に、楽しそうに遊ぶ孫たちの姿を見ながら、私はそんなことを考えていた。