昨日、バタバタと東京に戻ってきた。

一昨日の夜、妻の元に三男から連絡が入り、奥さんがインフルエンザにかかり、息子と1歳の孫も咳が止まらないので食事を作りにきてもらうと助かるという。
正確に言うと、一昨日の朝に妻宛にLINEが入っていたが母の用事に行くのにスマホを持って行くのを忘れていて、夜になって三男からのメッセージを確認したという次第だ。
三男の一家は今月初め、3人揃って岡山まで来てくれて父の法事の集まりに参加した。
そこで病に感染したに違いない。
母を担当する新しいケアマネージャーさんとの面会も終わっていたので、妻は岡山での予定を切り上げて、急遽息子の手伝いに戻ることになった。
とりあえず、衣服などの身の回りのものはスーツケースに入れて発送し、できるだけ身軽にして東京に着いたらその足で目黒に住む三男のマンションに向かう手筈だ。
ところが、帰り支度をしていた妻が「一緒に帰ってくれない」と私に声をかけてきた。
目黒のスーパーで食材を買ってマンションまで持って行くのが大変だと思ったらしい。

私は、購入したばかりのステンレス製の焼却炉を使い、今年伐採した木の枝などを燃やすつもりだった。
刈った草とは違い、木材は燃焼するのに時間がかかるため、野焼きではなくご近所の迷惑にならないよう安全に処分するために3万円ほどかけてこの焼却炉を購入したのだ。
ちゃんと燃やせるかどうか、今回の滞在中に一度試してみたかった。
でも、仕方がない。
親の介護や法事の集まりで疲弊し、介護うつのような状況になっている妻の願いを断るわけにもいかないだろう。
私も観念して、妻と一緒に荷造りを始めた。
来月初めには厳冬のアイスランド・グリーンランド旅行が控えている。
普段使わないため岡山に置いていた私のスーツケースを取り出し、昔スイスで買った分厚いダウンコートや役立ちそうな防寒具をそれに詰めていく。
普段は飛行機で移動する私だが、当日購入だとチケット代が倍に跳ね上がるため、今回はやむなく妻と一緒に新幹線で東京に向かうことにして、昨日の朝イチで2つのスーツケースを吉祥寺に送る手続きをした。

それにしても、今回の法事は思いのほか、みんなに負担をかけてしまったようだ。
お坊さんは呼んだものの、基本的に身内だけの集まりなので適当にやればいいだろうと私は考えていたのだが、準備をする妻はいろいろ気苦労もあったようで、終わってようやく一段落したところだった。
参列してくれた親族やお坊さんへの粗供養として妻が用意したのは、吉祥寺のショップ「プレスキルショコラトリー」の詰め合わせ。
我が家の分を食べながらやれやれと思っているところに、長男から連絡が入り、法事に参加してくれた奥さんと孫娘がインフルエンザを発症し学校を5日も休んだと知らされた。
そして今度は三男一家も全滅した様子、ひょっとすると弟の家族でも誰か病気になった人が出たかもしれない。
救いだったのは、高齢の母や私たちにうつらなかったこと。
とはいえ、まだ油断はできない。
特に妻はずっと体調が今ひとつなので、東京で少しゆっくりできればと思っている。

とりあえず、目黒のスーパーで買い出ししてから三男のマンションに向かう。
3人が寝込んでいるのかと思っていたが、マンションにいたのは三男ひとりだった。
聞くと、奥さんは熱が下がり会社に行き、1歳の孫も熱はないので保育所で預かってもらえたという。
三男も泊まり勤務明けだといい、病気になってもゆっくり休めないのは昔も今はさほど変わらないようである。
慣れない台所を使って妻がその晩の食事だけでなく、保存が効く料理をいくつか作る間、私はマスクをして距離を置き息子から仕事の様子などを聞いて過ごした。
病が蔓延した家での手伝いというのは、やはり気持ちの良いものではない。
妻の調理が終わり私たちが家路についたのは夕暮れ時。
久しぶりに通る渋谷駅は相変わらずの迷路で、見上げる高層ビルには煌々と灯りが点っていた。
今月は夫婦ともども、ゆっくり休めという神のご指示なのかもしれない。