<吉祥寺残日録>母が初めて体験したリハビリ特化型デイサービスは案外楽しかったらしい #220113

岡山に帰省して1週間、今日も朝からいろいろあった。

妻は朝の4時ごろから起き出して家の片付けを始めたのだが、土間に運び出した和箪笥の引き出しを開け閉めするたびにギーギーという耳障りな音が聞こえてきた。

私は布団に入ったまま、古いタンスの引き出しの動きを良くする方法を検索してみた。

すると、ロウソクを使う方法がヒットした。

すぐに私もやってみたくなった。

そこで、布団から出て和箪笥の引き出しの底にロウソクを満遍なく塗っていく。

すると、面白いように動きがよくなった。

それを見ていた妻が、オリーブオイルを持ち出してきて和箪笥の表面を拭き始める。

私はニスでも塗ろうかと思っていたのだが、木製品の艶出しはオリーブオイルでもできると言う。

その言葉通り、黒くくすんでいた和箪笥は本来の朱色を取り戻し、なかなかいい感じになった。

床の間に飾っていた花を載せてみると、ちょっとした高級感が感じられる。

それでも、和箪笥の上に花瓶を置くのは危険が伴うと判断し、押し入れに眠っていた小さな一輪挿しを持ってきて、庭に咲いていた「ハナボケ」と「クロガネモチ」の枝を活けてみた。

私は生花の素養が全くないど素人だが、せっかく伯母が育てていた植物で家を飾るとちょっと気分も明るくなる。

午前10時には、岡山市の職員の人が2人、約束通り我が家の畑を見に来てくれた。

柑橘類が植えられた畑に山の上から水が流れ込みびしょびしょになってしまうと相談したところ現場を確認してくれることになったのだ。

畑のすぐ上にはため池があり、伯母は以前からため池の水のせいだと私たちに語っていた。

もしため池が原因であれば行政が治してくれるかもしれないというわけだ。

ところが、私も同行して周囲を歩いて確認したのだが、問題のため池は空の状態で、この池が水浸しの原因ではなさそうだということがわかった。

そうであれば行政としては手の打ちようがないと言って職員は帰っていった。

もしもこの畑を正常な状態に戻すのであれば、自力でやる以外にないようだ。

妻とも相談して、まだ生きている柑橘類はそのままにして、ここは我が家のゴミ置き場や刈った草の集積場として利用することに決めた。

午後2時からは入院している伯母のお見舞い。

ガラス越しに面会した伯母は、先週転んだらしく目の下にうっすら打ち身の跡が残っていた。

病院の話では、足が弱って来たので食堂に移動する際には歩行器や車椅子の使用を勧めているのだが、本人が頑なに拒否して自力で歩いていく途中で転んだとのことだった。

それでもまだ私たちの顔はわかるし、「迷惑かけてすまんなあ。もうすぐ帰って草の一本も抜かんと」と繰り返し、認知症がどんどん進んでいるという印象は受けなかった。

病院の後は市役所に立ち寄り、伯母の入院費の補助を申請する。

収入のない高齢者の場合、入院費の上限が決められ食費も補助されるとのことで、支払った費用の一部が還付されるという。

わずかな額ではあるが、先が見えないだけにありがたい。

市役所の用事を済ませて、今度はマンション暮らしをしている私の実母を訪ねる。

去年の暮れ初めて要支援1と判断された私の母は、コロナ禍で外出を控える間に筋肉が衰えたのが気になるようで、介護サービスの中にあるマシントレーニングに興味を持ち、今日初めて近くのデイサービス施設の体験に行ったという。

知らなかったが、最近この手の「リハビリ特化型デイサービス」の施設が増えているそうだ。

従来の介護施設とは一味違い、高齢者専用のトレーニングジムといった趣きで、フランチャイズ方式で新規参入が相次いでいるという。

去年妻が介護認定の申請を持ちかけた際にはすごく嫌な顔をした母だったが、初めて体験したデイサービスは思いの外楽しかったみたいだ。

スタッフは全員女性でみんな親切で、10人ほどの高齢者が思い思いに時間を過ごしたり、時には一緒に何かをしたり、ランチも試食したが悪くなかったという。

ずっと一人暮らしで時々家族や友達と電話するぐらいの変わらぬ毎日なので、初めてのデイサービスは新鮮だったのだろう。

その施設では、お目当ての運動器具だけでなく、母が大好きな数独やクロスワードゲームなども自由にやることができ、それも母のお眼鏡にかなったようだ。

何はともあれ、一人で引きこもっているよりも週一回新しい人たちと交流するのは今年89歳になる母にはいい刺激である。

今日の出来事を楽しそうに私たちに語る母の様子を眺めながら、いいところが見つかってよかったなあと思う。

認知症で入院した伯母、ヘルパーさんたちに囲まれてどうにか暮らしている義父母、そして初めてデーサービスを体験した母。

4人の高齢者それぞれに、一歩ずつ老いを重ねている。

みんな自分らしく歳を重ねてきた人生の大ベテランたち。

なるべくその人らしい最晩年を過ごしてもらえるよう、適度な距離を保ちながら見守っていくつもりである。

親世代の心の内を本当に理解するには、私はまだまだ若輩なのだと思う。

<吉祥寺残日録>トイレの歳時記❄️七十二候「金盞香(きんせんかさく)」に母を連れて「むらかみ農園」に行く #211117

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