今月の帰省の最大のミッションだった伯母のお引っ越しが無事に終わった。
11ヶ月お世話になった認知症専門の河田病院を出て、病院から紹介された岡山市内のグループホームに移ったのだ。
去年病院に入院する時には何をするのも激しく拒否し、最近も電話するたびに「そろそろ家に帰ろうと思う」と言っていたので、施設に行くことに抵抗するのではないかと心配したが、拍子抜けするほど穏やかに新たな住処におさまってくれた。

伯母の新たな家となるのは、岡山駅から徒歩15分ほどのところにある「いやしの家 富田町」。
4階建てのビルに3つのグループホームが同居している都市型のグループホームである。
各階が独立したホームとして運営され、それぞれ9人ずつ認知症の高齢者を受け入れているそうで、ちょうど伯母と同じ要介護2ぐらいの方が多いそうだ。

今回帰省した7月1日に、施設を訪ねて入居の手続きを行なった。
目の前を江戸時代の初期に掘られた西川用水が流れ、今では緑地公園として市民の憩いの場となっている。
久しぶりに西川のほとりを歩いてみたが、水の流れもとてもきれいで、暑い日だったが木陰でしばらく川面を眺めて時間を過ごした。

伯母が入居する部屋は個室で、窓の外に西川沿いの緑が見える。
その向こうには新幹線や交通量の多い大通りもあるのだが、窓を閉めると騒音は全く気にならない。
スタッフの皆さんもベテランでとても温かみがあり、私も妻もとても好印象を持った。
この前の通りは私の母のマンションに通うのにいつも通っていた道で、おまけに西川の対岸には妻のおばあちゃんの家があった。
何やら不思議な縁を感じ、私たちはこのグループホームに入れてもらうことを即決したのだ。

入所のために必要な物を見繕って事前に施設に運び込む。
病院と違って本人が大切にしていた物なども持ってきていいと言われたので、床の間に飾っていた布袋様の置物と玄関にかけてあった「心」と書かれた額を持っていくことにした。
病院の部屋には結局入ることができなかったが、伯母はこの新しい部屋を気に入ってくれるだろうか?

そして今日、私たちが病院に到着したのは午前10時ごろだった。
退院の手続きをして窓口で入院費用の精算をする。
個室代が2ヶ月分必要だったため用意していたお金では足りず、近所のコンビニにお金を引き出しに行って支払った。
10時半過ぎにグループホームのスタッフの人が病院にやってきて一緒に伯母が入院する病棟へ。
コロナのためにずっとここでガラス越しの面会しかできなかったが、今日は中から看護師さんに付き添われて伯母がとぼとぼ歩いて出てきた。

直接体に触れられたのは実に11ヶ月ぶりとなる。
毎日3食きちんと食べて定期的にお風呂にも入り、散髪もしてもらっているので、伯母は元気そうに見えた。
「どこに行くん?」と聞くので、「お引っ越しじゃ」とだけ答えた。
伯母はそれ以上質問したり抵抗することもなく、病院のスタッフさんのお見送りを受けて大人しくエレベーターに乗った。

伯母を私たちの車に乗せることもできたのだが、「家に帰る」と言い出されても困るので、施設の車で伯母を乗せてもらい、私たちは荷物と一緒に後を追うことにした。
病院で伯母が使っていた私物の入った段ボールをそのまま施設でも使うのだ。
伯母がスタッフさんに手を引かれ、施設に入るのを見届けて、私たちも荷物を持って施設に入った。
伯母はこれから暮らす新しい部屋で一人立っていた。
段ボールから衣服などを取り出し、妻が備え付けのタンスに収めていく。
伯母はその様子をじっと見ていたが、私が話しかけると「すまんな迷惑かけて」と言った。
私の顔を見ると「家に帰る」と言うんじゃないかと心配したが、予想に反してその言葉は一回も口にしなかった。
1年近くに及んだ病院生活で、集団での生活にも慣れ、伯母なりに状況を理解しているのかもしれない。

荷物の運び込みが終わり私たちが施設から出ようとすると、伯母は私たちの後をついてきた。
エレベーターに乗り込む私たちに向かってスタッフの人たちと一緒に頭を下げた伯母。
ここで穏やかに暮らせることを祈るしかない。
コロナが沈静化すれば、部屋で自由に面会もでき、一緒に外出することも可能だという。
伯母のお引っ越しという最大のミッションを無事に終え、安心したせいなのか、家に戻るとドッと眠気が襲ってきて昼間から爆睡してしまった。
岡山市に住んでおります、アロマセラピストをしています。
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Laugh gate 岡田