<吉祥寺残日録>岡山二拠点生活🍇 来年90歳を迎える一人暮らしの母、元気なうちに訪問ケアサービスを始める #221119

11月にもなると、先月までは嫌というほどいた虫たちの姿がめっきり少なくなる。

ある日、玄関を出ようとすると、庭先に弱ったカマキリがじっとしている。

色も茶色に変わり、触ってもほとんど反応しない。

昆虫界の王者もその寿命は1年限りである。

それに比べて人間の寿命は長い。

我が家の年寄り4人のうち、伯母は89歳の時に認知症で入院しその後グループホームに移った。

今年は、93歳の義父が食事ができなくなり、義母と一緒に老人ホームに入所した。

残っているのは、岡山市内のマンションで一人暮らしをしている私の母一人である。

年齢の割に元気で、自分なりにいろいろ健康に気を遣いながらマイペースの生活を工夫しながら過ごしてくれている。

ただ離れて東京で暮らす私たちからすると、高齢の母の一人暮らしはやはり心配である。

いつも笑顔を絶やさず朗らかに過ごしている母だが、コロナ禍の生活で外出が極端に減り、室内で転ぶことも考えられる。

本人はあまり乗り気ではなかったのだが、我々が半ば強引に介護認定を申請した結果、1年ほど前に「要支援」との判定が出た。

認知機能は問題ないし体も特に悪いところはないので、一人暮らしですぐ駆けつけられる人間がいないことが考慮されたのだろう。

担当のケアマネージャーさんも決まり、いろいろ相談する中で、とりあえず週1回の訪問サービスを受けることを勧められ、きのうがその初回だった。

介護サービスを提供する会社との契約もあるというので、私も立ち会った。

普段スカートしか履かない母が、この日はズボン姿で待っていた。

やってきたのは東京に本社を持つ大手の介護サービス会社「セントケア」のスタッフ。

岡山にはこの秋に初進出したばかりで、母はその最初の顧客の一人になるらしい。

ケアマネージャーさんに連れられる形で訪れたのは、男女2人。

男性の方は岡山にできた訪問看護ステーションの所長で、二人とも正看護師の資格を持っているという。

所長さんから会社の概要や契約内容の細かい説明があり、母はどこまで理解したのかわからないが素直に契約書にサインをした。

現在すぐに介護が必要な状況でもないため、週1回30分の「予防訪問管理」というサービスから始めることになった。

セントケアの看護スタッフが定期的に母のマンションにやってきて、血圧を測ったり体調について質問し、軽い運動なども支援してくれるらしい。

私からすると、週1回会って話し相手をしてもらい、気になる点があれば私たちに連絡してくれる体制ができるとそれだけでもありがたい。

介護保険が適用されて1回の本人負担は460円ほど。

これで安心が買えるならば安いものだ。

伯母の入院の頃には、自宅にいたければリスクを承知で本人の意思を尊重したいと考えていた私も、この2年間の見守り生活を経て、介護現場の人たちのプロ意識に接し、上手にサービスを利用させてもらったほうが結果的には穏やかな最期を迎えられるのではないかという考えに変わった。

契約が終わって所長さんが母の状態をチェックする。

腕を回したり、足を上げたり手順に従って運動機能を調べていくが、母がスムーズにそれをこなすとその度に「お元気ですね」と褒められたので、母もまんざらでもなかったようだ。

伯母の場合は認知症が悪化してから訪問介護サービスを利用し始めたのだが、ヘルパーさんも看護師さんも一切受け入れず、仕方なく入院という手段を取らざるを得なかった。

在宅でのサービスをうまく利用すれば、住み慣れた家で長く過ごすことが可能となるので、母には元気なうちに自分も納得した形でサービスに慣れてもらい、気の合うヘルパーさんや看護師の人を見つけてもらいたいと願っている。

母は伯母と違って人当たりがいいので、おそらくうまくやってくれると思うが、相性のいい人がうまく見つかると残りの人生、いい相談相手になってくれるだろう。

今回の帰省では、先月吊るした干し柿がもうすっかり出来上がっていて、母にも少しお裾分けをした。

生の状態では渋くて食べられない柿も皮をむいて日光に当てることで、見た目はシワシワだが中身は甘くて濃厚な干し柿になる。

本当に不思議だが、人間も干し柿のように、歳をとるごとに温厚で深みを増す高齢者になれるといいなと思う。

転倒などしなければ母はきっと100歳まで生きるだろう。

自分で身の回りのことができる間は今の生活を続けたいという母の希望に沿って、介護のプロの手を借りながらできる支援をこれからも続けていくつもりだ。

ヘタをすると私の方が先にくたばってしまうかもしれない。

<吉祥寺残日録>衆院選公示の日、母の介護サービス契約と松坂大輔の引退 #211019

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