明日からの3連休。
我が家でも義父母が老人ホームに入所したり、次男が単身農作業の手伝いに来てくれたりする予定があるが、あいにく大型台風が日本列島を直撃する予報となっている。

三連休はずっと天気が悪く、特に18日の夜から19日にかけては新幹線も運休になる可能性もあるということで、みんなスケジュールの変更に頭を悩ませている。
子供の頃から次男は雨男と言われていて、大事な行事には決まって雨が降ったことを思い出す。
結婚式は4月だったのに雪が降ったという男なのだ。

市内に暮らす母も、お彼岸までに墓参りをしたいと言っていたので、この連休中か連休明けに迎えに行ってあげようと思っていたのだが、台風の影響が読めないので急遽今日お墓参りをすることになった。
幸い午前中は曇り空でここ数日では最高のコンディション。
無事にお彼岸のお墓参りを済ますことができたものの、台風のおかげで想定より早めのお墓参りになってしまった。

台風といえば、農家にとっては最大の敵である。
天塩にかけて育てた作物を収穫直前で台無しにされる恐れがあるからだ。
アマチュア農家となった我が家の場合も、気になるのはやはりブドウ畑のこと。
なるべく台風が来る前に収穫してしまいたいところだが、出荷するルートもないのでどのように有効活用するかが結構な難題なのだ。

そこで先日ひらめいて、生活困窮世帯に食料品などを支援できる公共冷蔵庫「北長瀬コミュニティフリッジ」という仕組みを見つけ、ブドウを寄付してみた。
プロに混じってブドウを売ろうとあくせくするよりも、素人が作ったブドウでも「ありがとう」と言って食べてもらえる人たちに寄付する方が、私たちの幸福感もずっと高まることをその時実感できた。
これはいい。
私たちが目指す農業の形が初めて見えた気がして、妻と二人でとても大きな満足感を共有できたのだ。

そこで今度は、岡山市内にある「こども食堂」を調べ、その中からちょうどタイミングが合いそうなところを探してみることにした。
すると奇遇にも妻が通っていた小学校で、毎月第1第3木曜日に「うのっこ食堂」というこども食堂が開かれていることを知る。
早速電話で問い合わせると、対応に出た女性が「嬉しいです」とブドウを喜んで受け取ってもらえることになったのだ。

喜び勇んで、昨日の午後、農業用コンテナにブドウを積み込み、妻の母校に向かった。
当然のことながら妻の実家のすぐ近くであり、土地勘もある。
妻はついでに幼なじみにもブドウを配ると言い出して箱詰めのブドウを数箱用意した。

学校の敷地内に車を停め、こども食堂が開かれる予定の「コミュニティハウス」を探す。
小学校なんかに来るのはいつ以来だろう。
すでに授業は終わっていて、学童保育の生徒たちが校庭で楽しそうに遊んでいた。

コンテナ2つを抱えて校内をうろうろしていると体育館が見えた。
電話で確か、体育館の建物と教えられた気がする。
恐る恐る近づくと入口に「コミュニティハウス」と書かれていた。
受付のテーブルに座っていた男性に「ブドウを持ってきたんですが」と伝えると、おじさんはすぐにわかったようで担当の女性を呼んできてくれた。
私が電話で話した女性ですぐに話はつながり、20房ほどのピオーネをスムーズに引き取ってもらえた。

こちらのこども食堂では30人ぐらいが夕食に集まるのだそうだが、「なかなかデザートまでは手が回らないのでありがたいです」と女性は言った。
驚いたことにその女性は、妻と中学で同学年だったことが彼女と雑談をしていて判明した。
こうして新たなことに挑戦していると、不思議な縁に遭遇することがある。

こども食堂に持って行ってもまだブドウがたくさん残っているので、来月遊びに行く予定の大学時代の仲間にも送ってやることにした。
家に泊めてもらう予定なので、宿賃の代わりである。
すると、他の元同級生たちからも「うちにもブドウを送ってくれ」との連絡が次々に入る。
送料がもったいないなと思いつつ、ブドウを無駄にするのも嫌なのでそれぞれの自宅宛に送ってあげた。
所詮、ブドウ作りで儲けようとは思っていない。
せっかく苦労して育てたブドウだから、なるべく旬なうちにみんなに食べてもらいたいのだ。
そういう意味では、少しずつブドウを配るネットワークが広がっていくことは決して悪いことではない。

こうして、残るブドウは100個を切り、畑の中もだいぶスッキリしてきた。
台風の接近で、木にぶら下がっているブドウがどうなるのか?
10月までそのまま置いておいたらブドウはどうなってしまうのか?
何もかも私にとっては初めての経験である。
初心者のブドウ農家として少しずつ経験を積み、来年以降のブドウ作りに活かしていければと謙虚な気持ちで思っている。