いろいろあった今回の帰省。
明日の朝の飛行機で東京に戻る予定だが、それを前にもうひと騒動あった。

天気に恵まれた日曜日。
伯母の葬儀が入ったため行けなかった山へ行ってみるつもりだった。
私が子供の頃、伯母や祖母が山菜摘みに行っていた山だ。
この季節、ワラビやゼンマイなどが顔を出し、それを摘んできて食卓を飾った思い出がある。
子供だった私は山菜が大嫌いで、決していい思い出ではなかったが、この年になると瑞々しいワラビのおひたしなども食べてみたいと思ったりする。
畑や畦道にはツクシの姿も見られ、これも食卓に登場していた。

ところがちょうど昼食を食べ終わった頃、思いがけぬ連絡が妻の携帯に入った。
実家を管理する妻の弟からで、一時帰宅していた義母が転んでひょっとするとまた骨折したかもしれないというのだ。
これから病院に連れていくというので、妻はすぐに駆けつけることに決めた。
私が運転する車で実家に行ってみると、義母は股関節が痛いと言ってどうも私の車には乗れそうにない。
弟の話によれば、義母が寝ている間に買い物に行って戻ってきたら、庭で義母がうずくまり動けなくなっていたという。
水仙の花がきれいだったので昔のようにサンダルで庭に出て摘もうとしたものの、義母の下半身は昔のようには機能せず転んで動けなくなっていたらしい。

時間が経つと共に痛みが強くなってきて、仕方なく救急車を呼んで、いつもの病院まで運んでもらうことにする。
義弟が電話すると程なく救急車がやってきた。
義母はストレッチャーに横たわって救急車に乗せられ、私たちは車で救急車の後を追う。
しかし赤信号を無視して病院に向かう救急車について行くことはできず、私たちが病院に到着した時には義母はすでに救急病棟に運び込まれレントゲンとCT検査を受けていた。
待合室で待っているとすぐに結果が出て、どうも骨折が確認できなかったらしい。
義母はすでに右の股関節を骨折し手術を受けている。
今度痛いのは左の股関節で、もしも骨折していたら右側と同じように骨をつなぐためのパイプを体内に埋め込まなければならない。

医師は、おそらく骨折はしていないと思うが、レントゲンやCTでは見つからない骨折もあるので、一晩入院して明日MRI検査を受けた方が安心だろうと提案してくれた。
義弟が入院をお願いし、義母の一時帰宅は途中でストップ、病院への入院という残念な結果となってしまった。
義父と共に老人ホームに入所中の義母は一時帰宅を楽しみにしているが、もうそろそろ限界かもしれない。
結果的に骨折していなければ不幸中の幸い、それでも病院からそのまま老人ホームに直行することになるだろう。

義母の家では今まさにユキヤナギやモクレンの花が満開だ。
長年世話をしていた庭を眺めるだけでも義母の心は癒やされるのだろう。
一時帰宅を楽しみにしている義母の気持ちはとてもよくわかる。
でも、90歳の義母がいつまで家に戻ることができるのか、難しい決断がもう目の前まで迫っている気がする。