前線が通過した東京は秋の空気に変わった。
暑かった夏もようやく終わりのようだ。
東京の都心でこの夏記録した猛暑日は22日、真夏日は90日、熱帯夜は57日、そして今月20日に最高気温が25度を超え今年140日目の夏日をなった。
いずれも観測史上1位の記録だという。

この季節、面白い雲が出る。
朝の陽だまりに立って、井の頭公園を見下ろす。
上空をかなり強い風が吹き抜けているようで、雲がどんどんと形を変えていく。
そういえば、最近、こうしてベランダから外を見ることがめっきり少なくなっていた。
この眺めに一目惚れしてここに引っ越したくせに、いつしかそれが当たり前の光景になって、最初の頃の感動がなくなってしまった。
人間は飽きる動物。
どんな素敵なことにでも慣れてしまい、喜びや感謝の気持ちを忘れてしまうのだ。

この暑さで農作物には大きな被害が出て、野菜の値段が高騰しているという。
過去最多のペースで熊の出没が相次いでいるのも、今夏の暑さと関係があるのだろうか?
もちろん人間様にも影響が出る。
知らず知らずのうちに疲れが蓄積しているのだ。
私の妻も体調を崩している。
3月には伯母が、8月には義父が亡くなり、介護を担ってくれていた妻は体も心も疲れてしまったんだと思う。
細かいことが苦手な私はついついなんでも先回りして心配してくれる妻に面倒なことを任せっぱなしで、ちゃんと愚痴も聞いてあげなかったことを反省している。
まさに世に言うところの「夫源病」かもしれない。

岡山にいる母や義母のことも心配だ。
二人ともまだ元気だけど、90歳を超えていつ何があっても不思議はない。
能天気な私を横目に妻は介護関係者と相談しながらいろいろ先の準備を考えてくれていた。
妻のことをもっと大事にしてあげないといけないと思った。
真面目で責任感が強い人ほど介護で自らを苦しめるのだ。
私ももっと妻の話を聞いてあげなければならない。
私ができることはもっと肩代わりしてあげないといけない。
旅行にゴルフにと自分の好きなことばかりしていた己を顧みて、少しずつ改めていかねばならないと、秋の雲を眺めながら今更ながらに考えた。
幸せな夫婦二人の生活はいつまでも続くわけではないのだから。