今月ステイホーム中の目標に掲げた紙の写真のデジタル化を始めた。
最初にデジタル化を始めたのはいつかと思って調べてみると、今年の5月、緊急事態宣言下でのゴールデンウィークだった。
ステイホームと、思い出整理は私の中で同義語になろうとしている。

『omoidori』という秘密兵器を使うと、写真の表面に映り込む光を遮って比較的きれいにデジタル化ができる。
原理は簡単で、写真の周囲をこの装置で覆って光が入らないようにし、スマホのカメラで撮影するだけだ。

自宅の戸棚には昔のアルバムがたくさん眠っていて、たまたま取り出したのはパリ特派員時代に家族と旅行したトルコ・イスタンブールでの写真だった。
この写真、帰国後20年以上一度も見ていなかった気がする。
ボルボラス海峡に夕日が沈む時間に撮ったと思われる妻と三男の母子像。
この時、三男は1歳、妻もまだ若かった。
とても幸せそうな素敵な写真だ。
デジタル化した写真に簡単な注釈をつけ、非公開のブログ形式にまとめておけば息子たちとも共有できる。
果たして自分の幼い時の写真を見るかどうかは知らないが、有り余る時間の使い道としては悪くない。

あんなに小さかった三男ももう26歳になり、今年9月に入籍した。
今まで2人で暮らしていた賃貸マンションが更新時期を迎えるのを前に、築50年の中古マンションを都心に購入し今日荷物の引っ越しをするという。
数日前に、三男から妻のもとにLINEが届き、新しく買ったベッドが明後日まで届かないのでその間我が家に夫婦で泊めて欲しいと言ってきたのだ。
妻は快諾し、いそいそと掃除を始めた。
コロナには神経質な妻だが、息子に会うのは理屈抜きで嬉しいようである。
今日も私が写真の整理をしていると、妻が買い物に行くのでついてきてと頼まれた。

普段は吉祥寺で一番安い「西友」を利用している妻だが、今日はちょっと奮発して高級スーパー「三浦屋」に行くという。

私も久しぶりに「三浦屋」に行ったが、やはりワンランク上の品揃えで値段も高めだ。
そんな「三浦屋」でレジに並ぶ妻を待ちながらちょっと目についたものがある。

安いお弁当だ。
「ミニわっぱ飯」(350円)。
「三浦屋謹製 のり弁」(300円)。
「ミニ天丼」(380円)。
高級スーパーにしては、どれも安いと思った。
しかしその分、普通のお弁当に比べて相当量が少ないのだ。
少ないとはいえ、私たちも最近この程度あればランチとしては十分なので、シニア層のニーズは確実にあるだろう。
「三浦屋」ブランドで提供している以上、味は期待できるかもしれない。

そんなことも思いながら「三浦屋」を後にして妻の後をついていくと、やはり「西友」にも立ち寄った。
ここでも私は、格安の弁当が気になる。

西友の地下食料品売り場の棚一面にずらりと並んだお弁当。
おにぎり3個におかずも付いて298円。
何だ、この安さは!
「ハンバーグ弁当」も298円、コンビニ弁当よりずっと安い。
そのほかどれも198円から398円、格安弁当が種類豊富に揃っていた。

その脇に設けられたお惣菜コーナー、こちらも安い。
唐揚げがたっぷり入って298円、骨なしスペアリブが398円。
これまで、テイクアウトで吉祥寺の飲食店を応援してきたつもりだが、値段だけ考えれば圧倒的にスーパーのお弁当は安い。
それだけ料理をしない一人暮らしの高齢者が増えたということだろうが、とてもじゃないが一般の飲食店が対抗できる値段ではないと感じた。

昼ごはんを済ませ、息子たちがやってくる前に軽く体を動かそうと井の頭公園に出かける。
今日は風があまりなく、比較的暖かい。
引越しにはちょうどいい天気だ。
一通り体をほぐしてから、課題となっている800m走に挑戦する。
今日のタイムは、4分12秒。
後半またも、へばってしまった。
冷たい空気を思い切り吸い込んで気管支がゼイゼイいっている。
年内に目標の4分は果たしてクリアできるのだろうか?

写真に写った30代の自分を眺めながら、体力の衰えを思う。
あの頃は体力が有り余っていて、帰国を前にまだ行っていない場所にどうしても行きたかったのだ。
3泊4日のイスタンブールからパリに戻り、翌日からはスペインに出かけた。
パリ生活最後の冬休みだったが、家族はさぞ振り回されただろう。

三男夫婦は今夜遅く、ご飯を済ませてから来ると連絡があった。
写真に写る幼子が、今年結婚して新居を構えようとしている。
アルバムを整理しながら、時の流れを感じざるをえなかった。