<吉祥寺残日録>パレスチナ危機🇵🇸 イスラエルが「第二段階」と呼ぶ地上攻撃開始!ガザに迫るガダルカナルの悲劇 #231029

昨日は5歳になる孫の七五三。

1200年の歴史を持つという立川の諏訪神社にお参りしてきた。

朝から貸衣装店に連れて行かれ、普段着慣れない晴れ着を着せられた男の子は、緊張しているのかいつもの元気がなく、祈祷が終わるまでほとんど口をきかなかった。

日常と違う環境は子どもたちの心に大人以上のストレスを与えるものである。

とはいえ、平和な日本でもささやかな変化など、ガザの子どもたちが晒されている非日常に比べればどうということはない。

ガザでは3週間に及ぶ戦闘で、すでに7703人が死亡、そのうちの3000人以上が子どもたちだと伝えられている。

出口の見えない地獄のような状況に、ただただ胸が苦しくなる。

イスラエルのネタニヤフ首相は28日、ハマスとの戦争が「第二段階」に入ったと宣言した。

「われわれの戦いはまだ始まったばかりだ。ガザ地区での戦いは困難で長いものになる。これはわれわれにとって第2の独立戦争だ」

イスラエル建国以来、ユダヤ人国家を守り抜くために、イスラエルは周辺のアラブ諸国と戦い続けてきた。

今回の戦争も、まさに国家の存亡をかけた絶対に譲れない戦いなのだと国内外に明言した形だ。

一方で、イスラエルは国際社会が懸念する大規模な地上侵攻を避け、曖昧な形で地上作戦を始める道を選んだようだ。

最初の地上作戦は25日に始まり、3日連続でガザ北部に戦車部隊を進入させ地上からの攻撃を強化すると同時に、空からも最大規模の空爆を行ない、地下に張り巡らされたハマスの拠点を集中攻撃しているとみられるが、その詳細は不明である。

ガザ北部の住民の多くはイスラエルの警告に従って南部に避難しているようだが、依然として相当数の市民が北部に残っていると推定される。

ガザではここ数日、電気に加えインターネットも遮断され、海外との連絡が非常に困難な状況に陥っているという。

ガザで今何が起きているのか、情報が遮断される中で、かつてない悲劇が起きようとしている。

現地で人道活動に従事している国連職員にも犠牲者が出始めている。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は27日、ガザ地区で死亡した国連職員は53人に増えたと報告した。

CNNが掲載した国連を示すブルーのヘルメットが置かれた棺の写真。

私がかつて取材したルワンダでも多くの国連関係者がこうして犠牲となったことを思い出す。

さらに、イスラエルが支援物資の搬入を厳しく制限しているため、ガザでの国連の活動は大幅な縮小を余儀なくされており、国連施設に避難している60万人を超える市民の命も懸念され、事態は深刻化する一方である。

ガザ地区にある医療機関も、すでに3分の2は機能しておらず、35カ所ある病院のうち12は閉鎖している。

残された病院には連日多くのケガ人が運び込まれているが、燃料や医薬品の不足のため、助かる命も助けられない状態だと医療関係者たちから国際社会にSOSの声が届き続ける。

さらにイスラエルは、ガザ最大の病院「シファ病院」がハマスの指揮統制拠点になっていると非難した。

イスラエル軍の報道官は「医療施設がテロ目的で利用される場合、国際法に従い、医療施設は攻撃からの保護を失う」と、今後は病院といえども攻撃の対象になると警告している。

もはやガザの中に安全な逃げ場はますますなくなろうとしているのだ。

暗闇の中に唯一灯りがともる病院の写真を見ていると、ガザの緊迫した状況が、私が今ちょうど読んでいる太平洋戦争の激戦地ガダルカナルの悲劇と重なって見えてくる。

この戦いは、ソロモン諸島の要衝ガダルカナル島をめぐり、日本海軍が建設を進めていた飛行場をアメリカ海兵隊が占領するところから始まった。

開戦以来、破竹の勢いで勢力圏を拡大してきた日本軍は、前進基地として確保したラバウルの防衛と、連合軍の反撃の拠点となると予想されたオーストラリアとアメリカ本土を遮断することを目的に、遠く離れたソロモン諸島に新たな拠点を作ろうと考えた。

直前のミッドウェイ海戦では手痛い敗北を喫したものの、この時期の状況は依然として日本軍が優勢であり、特に「皇軍無敗」の神話が生き続けていた陸軍を投入すれば奪われた飛行場を奪回することなど容易いことだと判断し、上陸した敵の兵力も調べないままに軽装備の部隊を投入した。

度重なる日本側の判断ミスもあったが、半年余りにわたる日米の攻防を分けたのは「補給」だった。

三度にわたる海戦と地上作戦の失敗により、制海権も制空権も失った日本軍は輸送船による補給ができず、上陸した3万という兵士たちは飢餓と病気で命を落としていく。

ガダルカナル島が「餓島」と呼ばれる地獄となったのだ。

ガザに対する物資搬入がこのまま続けば、200万人の人々はガダルカナルの日本兵と同じ運命を辿ることになるのではないか。

しかも、この200万人の大半は兵士ではなく一般の市民や子どもたちである。

アメリカやロシア・中国が拒否権を行使して機能不全に陥っている安保理をよそに、全ての加盟国が参加する国連総会はこの問題に関する緊急特別会合を開き、「人道的休戦」や人道回廊の設置を求める決議案を全体の3分の2以上の賛成で採択した。

ただ、アラブ諸国が中心にまとめた決議案にはハマスの非難する文言はなく、アメリカやイスラエルなど14カ国が反対、日本やイギリス、インドなど44カ国が棄権に回った。

西側諸国の間では、ガザの住民が選挙でテロ組織であるハマスを選んだことがそもそもの間違いだったとの指摘もあるが、日常的に続くイスラエルによるガザ住民に対する非人道的な扱いが生んだ反抗心の表れと考えれば、ガザの市民たちが置かれている惨状は到底容認できない。

イスラエル建国からすでに75年が経った。

今更、イスラエルの存在を否定しても意味はなく、アラブの人たちの間でもイスラエルの存在を前提とした中東の新秩序を模索する動きが進んでいた。

現在の国境線を維持するという国際社会の合意に基づけば、イスラエルとパレスチナの二国家共存を平和的に実現する以外に解決の道はないのだ。

しかし、ネタニヤフ氏が代表するイスラエルの右派勢力の間には、自らの安全を確保するためにパレスチナ人を領土から一掃したいという野望を常に感じる。

ハマスが激しく抵抗し戦いが長期化する可能性は十分にあるものの、補給を断たれたハマスには最終的に強力なイスラエル軍を押し返す手段は残されていないだろう。

ひょっとするとこの戦争を機に、イスラエルによるガザ占領が今後長期にわたって続き、やがてガザがイスラエルに飲み込まれる日が来るのかもしれない。

中東にとっては、極めて重要な転換点であり、イスラエルの地上侵攻でさらに多くの人命が失われるような大虐殺が明らかになった場合、パレスチナの問題が中東全体を巻き込む誰も望まない戦争に発展する危険性も孕む。

この世界的な危機を前に、日本の政治家たち、そして日本社会全体があまりに無関心なのが私にはとても気になっている。

<吉祥寺残日録>パレスチナ危機🇵🇸 地上戦が迫る中、CNNが伝えたパレスチナ人ジャーナリストの深い絶望 #231015

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