
ホームは結構混雑していた。
午前8時53分発、井の頭線の渋谷行き急行電車。
コロナ前、私がいつも乗っていた電車だ。会議に出席するため、今日数ヶ月ぶりにこの電車に乗った。

それでも車内はこんな感じ。時差出勤が定着しているのか、コロナ前に比べると全然空いている。
6月末に会社を辞めるまで出勤する必要がある日以外は有給を消化しているため、今日を含めて出社するのは残り数日となった。

この週末、私は会社を辞めた後の個人活動で使う(かもしれない)名刺を作ってみることにした。
特に何をやるか決まっているわけではない。
基本的に、その日の朝起きてやりたいと思ったことをやる、いわゆる「悠々自適」の生活を目指しているのだが、それに加えて多少なりとも、個人的に応援したいと思った人物や活動をお手伝いしてみたいと思っている。
そうした際に、名刺ぐらい持っていた方が、何かと便利だと思ったわけだ。

わざわざプロに頼むほどのことでもないので、自宅のプリンターで印刷できる名刺用のシートを買うことにした。
最初に買ったのは、ELECOMの「なっとく。名刺」というマルチプリント紙。
どれがいいのかわからないので、山積みになっていた中なら「厚口」と書かれたものを選んだ。
ところが、我が家のプリンターは前面の給紙カセットからしか印刷する紙を挿入できないタイプ。何度やっても途中で紙が引っかかってうまく印刷できない。
どうも用紙が厚すぎて、プリンターの中でうまく回転できないようだ。

ネットで調べると、背面給紙機能があればスムーズに印刷できそうだ。妻に「プリンターも相当古くなったので買い替えようか」と提案してみたが、妻からは「まだ使える」と猛反対され、あえなく断念。
仕方なく、用紙の方を変えてみることにした。
もう少し厚みの薄い「標準タイプ」という名刺シートを買ってきて、試してみることにした。

それがこちら、A-ONEの「マルチカード 両面クリアエッジタイプ」。
一口に名刺用のシートと言っても、実に様々な種類がある。
先ほどの「厚口」に比べてだいぶ紙が薄いので、我が家のプリンターでも無事に印刷することができた。
どちらの会社も、自分で印刷内容をデザインできる専用サイトを持っていて、私はさっそく、A-ONEの「ラベル屋さん」という無料サイトを使って自分の名刺を作ってみた。

無料サイト「ラベル屋さん」にはたくさんのテンプレートが用意されている。その中に、クジラのイラストを見つけた。
私の個人事業の屋号は「のんびり村」に決めている。
クジラの絵は、「村」という感じではないものの、のんびりした雰囲気はとても気に入った。
さっそくクジラのイラストが描かれたテンプレートを使って、自分の名前や新しい連絡先など必要な情報を入力してみた。
「多少位置がずれてはいるが、悪くない」
いや・・・「非常にいい」
これで、名刺はひとまず完成だ。
一つ一つ、形が整っていくと、新しい生活が始まる実感が湧いてくる。

名刺作りの作業を行なっていた日曜日のお昼、先週亡くなった弟の義母の弔問のため、妻と2人で弟の家を訪ねた。
弟が住む八王子市では葬儀場がいつも混雑するようで、義母の遺体はしばらく自宅に安置しておくという。
だから、香典と一緒に、棺の枕元に置くための花を買っていくことにした。

弟の家を訪ねると、福島の被災地で働いている姪夫婦が戻ってきていた。
大学時代ボランティアで度々被災地を訪ねていた姪は、現地の男性と結婚し、今も福島で復興に取り組んでいる。
東京五輪の聖火リレーが直前で中止となるなど、コロナの影響は福島の被災地にも及んでいる。でも、夫婦でそれぞれ地域の復興に取り組んでいる2人の話を聞きながら、改めてこうした若い人たちの手助けができればと思った。
テレビの仕事で知り合った人脈を、地方で頑張っている人たちに繋げる。映像やイベントを通して地域を元気にするような活動を少しでも応援できれば・・・。
会社を離れると、儲けにならなくても応援したい人を応援することができる。
ボランティアでもいいし、それが大きく育ってビジネスになればもっといい。
在職中、新しい農業に取り組む山梨の若手農業者たちとも知り合った。無給の顧問として彼らの活動を支援すると約束している。
個人でできることはいろいろある。
きっと、私にも退職後できることはいろいろあるはずだ。

今、私がやりたいのは、いい未来のために頑張ろうとしている若い人たちを応援すること。
クジラの名刺がそんな活動に繋がっていけば、残りの人生もきっとワクワクするものになるはずだ。