<吉祥寺残日録>「片上のおばちゃん」が亡くなった #210925

昨日の夕方、「片上のおばちゃん」の訃報が届いた。

私の母の妹で、幼い頃から一番お世話になった人であった。

とにかくよく喋る賑やかな人で、岡山県東部にある古くからの港町・片上の近くで雑貨店を営んでいた。

私の母は幼い時に相次いで両親を亡くし、残された2人の娘は別々の親戚に引き取られて育てられたという。

だから母にとって「片上のおばちゃん」は特別な存在であり、年下の妹がボケ始めた頃には毎日のように電話をかけて心配していた。

認知症が進み、「テレビの中から小さな人がたくさん出てくる」など幻視の症状も現れた。

数年前、グループホームに入った叔母を見舞ったことがあったが、その時の叔母は何を話かけてもほとんど反応がなく、「あれだけ賑やかだった人がこうも変わるものか」とショックを受けたことを今でもはっきりと覚えている。

通夜は今夜行い、葬儀が日曜日だと連絡が入った。

コロナ禍も考慮して、私は告別式にだけ参列することにし、今日夕方の飛行機で岡山に飛ぶ段取りを整えたところだ。

無理をすれば今夜のお通夜にも間に合うのだが、今日は長男一家と久しぶりに会う約束があったのでそれを優先したい気持ちもあった。

小学校4年になる女の子はつい先日ピアノの発表会があったようで、LINEで動画が送られてきた。

昔ピアノをまだ始めた頃に発表会に行ったことがあるが、その時とは比べものにならないほど腕を上げている。

また中学1年の男の子もどんどん変身していて、以前は大人しかった子が背も伸びて野球に剣道に卓球にと打ち込んですっかりたくましくなってきた。

お年寄りと違って、子供たちの成長には明るい希望があふれている。

この子たちに私も何かを伝え、残したい。

最近、そんなことを考える。

たとえば、男の子が高校生になった頃、一緒に旅行に連れて行きたい・・・そんな夢を密かに温めている。

行き先は中国、とりあえず北京あたりがいいんじゃないか。

孫たちの世代では、中国との関係がとても心配だ。

まずは百聞は一見に如かず、自分の目で異国を見る経験を孫の世代に伝えたい、そんな願望が日に日に強くなっている。

長男は、近所で人気のコッペパンのお店で、いろんな種類のパンを買って食べさせてくれた。

そして犯人を当てるカードゲームを一緒にやった。

どうも新しいゲームを理解する能力が衰えたようで、ルールが今一つよくわからなかった。

でもワクチンの接種も進み、こうして日常的な家族の集まりができるようになっただけでも嬉しい限りだ。

岡山行きが急遽決まったため、長男の家には2時間弱いただけで帰ってきた。

これからぼちぼち、「片上のおばちゃん」の葬儀に参列するため岡山へと向かう。

私の弟は仕事の都合がつかず欠席することになった。

私の母は、岡山在住の親戚に連れられて、今夜のお通夜から明日まで付き合うという。

たった一人の妹なので、できるだけのことはしたいという気持ちは理解できる。

それでも88歳の母にはきっと堪えるだろう。

明日の葬儀が終わったら帰路は私が付き添って、母が疲れを出していないか様子を見守ろうと思っている。

子供は育ち、年寄りには確実に最期の時が迫る。

世界一の長寿大国となっても、人間の営みは変わることはない。

私は、私のできることをして、家族の支えに少しでもなれればと思うばかりである。

<吉祥寺残日録>ブドウを届けに長男宅を訪ね、初めて「カタン」で遊ぶ #201107

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