今週月曜日、伯母のお引っ越しを済ませた後、母を拾って3人でランチを食べた。
伯母の様子を母も心配していたからだ。

選んだお店は、母のマンションから近い老舗の喫茶店「ドル珈琲」。
1971年の創業というからすでに半世紀の歴史を持つことになる。

外観はそれほど目立たないのだが、中はいかにも昭和の良い喫茶店という趣を残した素敵なお店だった。
漆喰の壁と木の床、天井の梁と柱が空間を引き締めている。

入り口には「本日のランチ」が鶏のから揚げであることが表示されていた。
ランチは700円でコーヒー付きのセットが1000円だそうだ。

他には食べ物がないのかなと思いながらメニューを開くと、これまた昭和の喫茶店にあった定番メニューがずらりと並んでいた。
4種類のピラフにカレー、スパゲッティ、さらには牛丼ややきそばもある。
ホットケーキとサンドウィッチももちろんあって、昔懐かしき「ミルクセーキ」をメニューに見つけた時には小躍りしてしまった。

メニューを見ただけで「俺この店好き」と宣言したくなるほど古き良き昭和の喫茶店が母のマンションのすぐ近くに残っていたとは、これぞ天のお導きだと思った。
周囲を見回すと、私と同じく昔を知るシニア世代で賑わっていた。
ゆっくりとスポーツ新聞を広げてコーヒーを飲むおじいさんを見ていると、まるでタイムスリップしたようである。

迷いに迷った末、私がこの店で注文したのは「ハヤシビーフ」(700円)だった。
そもそも「ハヤシライス」は「ハッシュドビーフ・ウィズ・ライス」が訛ったものとの説が有力だそうだが、この店では「ハヤシライス」ではなく「ハヤシビーフ」と呼ぶ。
明治時代の書籍には「ハヤシビーフ」という記述が残されているそうなので、この店は昭和を通り越して明治の雰囲気を今に伝えているともいえるかもしれない。

ライスにはお約束の福神漬け。
長い時間煮込んだせいか、肉も野菜もほとんど姿を消し、この店のハヤシソースはトロトロの茶色いスープのようだ。
でも酸味といい深みといい、実に美味しい。

そして食後には「ミルクセーキ」(550円)も頼んだ。
子供の頃に大好きだった飲み物で、デパートの食堂に連れて行ってもらうと必ず注文したものである。
砕いた氷がたっぷり入っていて、この年になるといささか歯に沁みるが、甘さたっぷりのその味はまさに子供時代の至福の記憶を甦らせる。

母はこの日「サンドウィッチ(ミックス)」(600円)を注文したが、自分では3分の1ほどしか食べず、残りは全部私のお腹の中に収まった。
見た目はさほど冴えない感じだが、食べてみるとマヨネーズがたっぷりでこれまたとても私好みのサンドイッチであった。

妻は「エビピラフ」(700円)を注文。
こちらにはミニサラダとともにコンソメスープがセットになっている。
今時のカフェではピラフを目にすることも少ないので、妻もきっと昭和を思い出したに違いない。

メニューには食べたい料理がまだまだある。
母を誘って食事をする時に、またぜひ訪れたい喫茶店を見つけた。
食べログ評価3.23、私の評価は3.80。
「ドル珈琲」 電話:086-243-1949 営業時間:8:00~20:00 定休日:日曜
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