雑草の蹂躙された2021年の締め括りに、どうしてもけじめをつけたい場所があった。

ブドウ畑や大きな畑を優先して草刈りを行ったため、最後まで手付かずのまま年末を迎えてしまった畑が一つ残っていることがずっと気になっていた。
一面を高さ3メートルのセイタカアワダチソウに覆われたこの家から一番通りこの畑には、伯母は柑橘系の木を何種類か植えていた。
出荷するわけではなく、あくまで自家用、むしろ伯母にとっては一種の遊びだったのかも知れない。

まずは私の背を遥かに超える高さに育ったセイタカアワダチソウの森に分け入って、草刈機で片っ端から伐採して行く。
さすがのセイタカアワダチソウも冬には勝てず、立ち枯れたような状況である。
とはいえ、花を咲かせた後にはしっかりと綿毛を持った種子を実らせていて、草刈機で切り倒すたびに、頭上からこの細かい種子が降り注いでくるのには閉口した。


入り口から通路を作るようにセイタカアワダチソウの森を切り開いていくと、畑の一部にまったくセイタカアワダチソウが生えていない場所があるのを発見した。
私にはすぐに理由がわかった。
山裾にあるこの畑の上部に小さなため池があり、そこから流れ出た水が畑の一部を水浸しにしているのだ。
もう何十年も前からこの状態で、伯母が「行政に言わんといけんのじゃ」と口にするのを何度も耳にしたが、伯母は行政と喧嘩するよりも自分が我慢する方を選ぶような人で、ずっと水浸しの状態が続いている。
だから、伯母が管理していた農地の中では最も価値が低いと伯母は考えていて、家から遠いことも手伝って、あまり世話をしなくても勝手に身をつける柑橘系の木をこの畑の乾いた部分に植えていたのだ。

この畑の広さは450平米ほどある。
日曜日に1時間半ほど作業をして、とりあえず畑の全貌がわかるところまできた。

すると、畑の一番奥に黄色い実が見えた。
柚子の木だ。
ちょうど明日は冬至、ゆず湯にこれはちょうどいいと思った。

しかし、柚子を採ろうとすると左手の指にトゲが刺さった。
そう、柚子の木には立派なトゲがたくさんついているのだ。
しかも柚子の木は大きく育っていて、手が届く範囲には実はほどんどない。

仕方なく、高枝バサミを使って樹高5メートル以上あるであろう木の上の方から少しずつ黄色い実を摘んでいく。
高枝バサミを使うとトゲもさほど気にならない。
時間はかかるが、トゲに覆われた枝を縫うように高枝バサミを動かして1個ずつ実を収穫する。

ついでに、同じ畑にあった柿や八朔の実もいただいてきた。
雑草に覆われた畑の中ではいろんな果実がたくましく実をつけていたのだ。
とはいえ、雑草に栄養を奪われ枯れてしまったみかんの木もあった。
枯れるまではいかなくても、雑草の影響で実をつけている枝は限られ、あと何年か雑草を放置しているとすべての果樹が死に絶えることはほぼ間違いないだろう。

収穫した柚子を1つ切って、近所の人がくれた牡蠣にかけて食べた。
柚子独特の香りが部屋に広がる。
なんだろう、この香り。
他の柑橘類とは一味違う高貴な香りである。
私の母や妻の両親にもお裾分けして、我が家でも明日はゆず風呂を楽しむことになるだろう。
雑草の中から見つけたお宝。
来年は雑草の繁殖を阻止して、柚子を守らなければ、そう心に誓った。
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