10日あまりの帰省中、毎日よく働いた。
妻の不眠症も嘘のように解消し、やはり東京の生活が妻には暇すぎるのが原因かもしれないと感じる。
今回の滞在中にぜひやっておきたいことがあった。
庭にある松の木の剪定だ。
私が子供の頃から庭木の顔ぶれはまったく変わっていない。
その中でも一番目立つ位置に立っているのが1本の松の木。
伯母はきちんと庭師さんに頼んで剪定していたのだろう、ほとんど樹形は変わっていないように見える。

ところが・・・
伯母が入院してからというもの、誰も世話をしないために松の新芽が伸び放題となり、これまで見たこともない姿になっていた。
松は春になると盛んに新芽を天に向かって伸ばす。
それを放置しておくと樹形が変わってしまうらしく、この新芽が硬くなる前にかき取ってしまうのが春剪定の基本だそうだ。

伯母には申し訳ないが、個人的にはこの庭が特に好きでもないので、庭師さんを頼んでまでこの庭を維持する気がない。
むしろ自分たち好みの庭に少しずつ変えていきたいと考えている。
そこで剪定の仕方をネットで調べてみたのだが、松の場合4月から5月が春剪定の季節だということがわかった。
6月だと新芽がかなり長く伸びて少し遅すぎるのだろうが、このまま放っておいて全ての新芽が硬い枝となり収拾がつかなくなるのはやはり避けたい。

松の新芽は多ければ1か所から6〜7本も伸びてくる。
これを2本ほどに減らすのが「みどり摘み」の基本だという。
3本の新芽が伸びている場合の剪定方法は以下の通り。
松のみどりは、中心の芽がこの中で一番勢いの良い枝に成長していきます。
引用:庭木の剪定ドットコム
ですから、中心の勢いの良いみどりは指でつまんでかきとります。左右のみどりが長い場合は、2〜3cm残して指で折ります。
残す芽は、その後の勢いが同じになるように長さのバランスを取りましょう。
要するに、一番長く伸びた芽を根元から摘み取り、両脇から出ている芽は長さを短くするということだ。
芽の数が多い場合も基本2本残して全て取り除けばいいらしい。

脚立にのぼって上から見ると、新芽がどのように伸びていて、どれを切ってどれを残せばいいのかなんとなく理解できるような気がする。
とにかく長く飛び出した新芽はすべて切除。
6月ともなると脇の芽も伸びているので、それを2〜3センチに切り詰める。

半分ほど剪定した状態で松全体を見ると、右側が剪定済みで、左側がまだ剪定していないことがよくわかる。
簡単な作業だが、厚手のグローブをしていないと松の葉がちくちく刺さる。
切り口から松ヤニが出て服に付着するので、なるべくどうでもいい服を着てやった方がいいだろう。

こうしてササっと30分もかからずに作業を終えた。
あまりに適当な仕事なので、ブドウの摘心と同じく失敗したかもしれないが、この松の木には何の思い入れもないので、それならそれで仕方がない。

初めて自分の手で「みどり摘み」をした松を眺める。
しげしげと松を眺めたことはなかったが、こうして自分で剪定した松を凝視すると、形の悪い場所や不恰好な枝が気になってくるから不思議だ。
「高くなると剪定が面倒だから上の方をバサっと切っちゃえば」と妻は気楽に言うが、一度自分の手が入った松は不思議なもので少し愛着のようなものが湧く。
どうせなら格好の良い松に仕上げたい。
そんな欲求がどこからともなく湧き上がってくるのだ。

妻に促されるままに他の庭木も剪定する。
この木は伯母が晩年大切にしていた「クロガネモチ」。
岡山市の市木であり、「アクラ」とも呼ばれる。

ちょうど今、小さな「クロガネモチ」の花が咲いている。
そんなタイミングで伸びた枝を切ってもいいのかわからないが、あまりに不恰好なのでバサバサといらない枝を切り落としていく。
ツバキやムクゲ、その他名前も知らない木々たちを妻と手分けしながら次々に散髪していく。

そして少し綺麗になった庭の片隅に、妻が1本の苗木を植えた。
私たちが好きな植物を少しずつ植えようと、昨日ホームセンターで買い求めてきたものだ。

妻が好きな「ルリマツリ(プルーンバゴ)」の苗だ。
硬い土を掘って水を撒き、園芸用の土を少し入れてから苗を植えた。
うまく根づけば、玄関先に青い花が咲くはずである。
伯母が大切に守ってきた岡山の古民家、こうして少しずつ私たち夫婦の家へと代替わりしていくのだろう。
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