伯母の葬儀も一段落して、残務の合間にやり残した農作業をこなす。
その一つが、桃の害虫対策である。

農協が発行する桃の作業防除暦には、3月下旬に「コンフューザーMMの取り付け」と赤文字で書かれている。
そこでその正体も知らぬまま農協の販売所に注文したのだが、入荷の連絡を受けて引き取りに行くと、なんと6000円もする高額なものだということをその時初めて知った。
メーカーの説明によれば、『コンフューザーMM』は交信撹乱用性フェロモン剤で、性フェロモンで対象害虫の交尾を阻害することで発生を抑制するものなのだという。
モモハモグリガ、モモシンクイガなど、桃に多く発生する害虫を駆除するのに効果的で、農薬散布の回数を減らせて安全な桃が作れるという。
聞いてもやはりその正体が不明だが、とりあえず購入した「コンフューザーMM」を携えて桃の畑に出かけた。

3月も半ばも過ぎ、桃の花芽もだいぶ膨らんできた。
今月末か4月初めには花が咲くだろう。
ただ同時に啓蟄も過ぎて、そろそろ虫たちの姿も見かけるようになった。
春は花の季節であると同時に、虫の季節でもあるのだ。

真空パックされた袋を破いて中からコンフューザーMMを取り出してみる。
オレンジ色の紐のようなものが60本入っていた。
使用方法を読むと、この紐のようなものを桃の枝に取り付けていけばいいらしい。
作業としては農薬散布よりもはるかに楽で、人体への影響も少なそうだ。

早速、妻と手分けして4本の桃の木にコンフューザーMMを取り付けて回る。
1本の紐のように見えるが、実は2本の紐の両端がくっついて広げると輪のようになる。
この輪に桃の枝を通して、なるべくバランスよくぶら下げていく。
本当ならば、60本あれば10アールの桃畑をカバーできるらしいが我が家の桃の木はわずか4本だけ。
それでも一度開封したらすべて使い切らないといけないと書いてあるため、60本全てを4本の桃の木にぶら下げることにした。

するとまるでクリスマスツリーの飾りのように、1本の桃の木にたくさんのコンフューザーMMがぶら下がった。
害虫のオスはメスのわずかな匂い、すなわち性フェロモンをたどって移動するが、畑全体に人工的に作られたフェロモンが充満していると、どれが本物の匂いか分からずデタラメに飛びまわりメスにたどり着けない、それが交信撹乱用性フェロモン剤の効果なのだ。
通常よりはるかに密度の高いこれだけの数をぶら下げれば、害虫はクラクラして交尾ができなくなるに違いない。
それでも効果がなければ、6000円をドブに捨てたと諦めるより他にないだろう。
去年は4月早々からさまざまな害虫が発生したこの桃の木。
今月初めに散布した「石灰硫黄合剤」と今回の「コンフューザーMM」のダブル効果で、今年こそ美味しいモモが収穫できますように・・・あとはただ祈るばかりである。
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