帰省4日目の日曜日、朝4時に目が覚めたので、5時ごろからぶどう畑で「摘心」の作業をする。
「摘心」とはぶどうの新梢を切って整える作業、ぶどうの実を大きくするためには不可欠な作業である。
先月は私一人で初めての芽かきや花穂の整形などを行ったが、今回は妻も一緒。
本来こういう細かな作業は妻の得意分野である。

6月初めのぶどう畑はツルがどんどん伸びてきて、先月あれだけ枝の数を減らしたにもかかわらずビニールのトンネル内はたくさんの枝や葉で混み合っていた。
ぶどうのツルというものは太陽を求めるらしく、どうしても上へ上へと行こうとする。

そして、巻きひげを器用に伸ばしてトンネルの針金に絡みつくと、ちょっと引っ張ったぐらいでは外れない
ちょっと想像を超える力でしがみつくのだ。
この巻きひげはすべて切り落とす。
時間が経つとこの巻きひげが木化してきてますます引き離すことが難しくなるだけでなく、実にいくべき栄養を奪い、おまけに病気の発生源にもなるそうだ。

先月、芽かきや誘引という作業を行った時と比べると、ツルは長くなり葉も大きくなって、ビニールで作られたトンネルの中は大混雑、天井部分を覆い尽くしている。
これでは太陽の光が実に当たらず、ぶどうの甘みや色づきにも影響するだろう。

そこで重要なのは脇芽を全て摘むこと。
先月にはよく理解できていなかったのだが、葉の付け根にある脇芽を残していると、そこから枝分かれしていき、そちらもどんどん伸びていってしまうのだということがよくわかった。
このビニールのトンネルに張り付いて上に向かって伸びる枝。
脇芽を放置していると、こうして何枚もの葉を茂らせ日光を覆い隠してしまう。

この大きく育った脇芽を切除すると、急に明かりが差しこむようになる。
こうして要らない脇芽から伸びた枝を片っ端から切っていると、次第に切るべき枝と切っちゃダメな枝の見分けができるようになってきた。
葉が生い茂って薄暗いなと思ったら、必ずそこには脇芽が大きく育っているのだ。

そして、肝心のぶどうの実はどうなっているか?
こちらは黒ぶどう「ピオーネ」の実。
もうすでに花の時期は終わり、小さなぶどうの粒ができ始めていた。
「ピオーネ」はタネなしにするために、この開花の時期に花穂を薬品に浸す「ジベレリン処理」という工程を行う必要があるのだが、私はその時期岡山にいなかったためもう時期が過ぎてしまった。
ところが、私の師匠である前の家のおじさんが見かねて留守中にジベレリン処理をしてくれたという。
「今年はもうこれで大丈夫だから」と私が来たのを見つけるとわざわざそれを伝えに来てくれた。
ぶどう農家はこの時期やることがいっぱいで私のように留守にする人などいない。
次から次へとやらなければならない仕事があるのだ。

「マスカット」の方はピオーネよりも時期が遅いため、ちょうど今頃花を咲かせる。
これがぶどうの花だ。

小さな花が集まった花穂、花びらはなく、蕾が開くと雄しべ5本と雌しべ1本が出てくる。
花としては全く魅力のないぶどう。
でも初めてぶどうの開花を確認することができた。
しかしこの畑のマスカットは今流行りの「シャイン・マスカット」ではなく従来型のものなので、ジベレリン処理をしてタネを取り除く必要はない。

朝5時に初めて、小さなぶどう畑でこの摘心・誘引の作業を終えるのに昼ごろまでかかった。
伯母の身長に合わせてぶどう棚が低いので、ずっと中腰または足を大きく開いて下から覗き込むような姿勢での作業は結構大変だ。
でも要領が少しわかってくると、ハサミを使う手も素早くなっていく。

初めて摘心の作業を行った妻は案の定、「面白い。私この作業好き」と言った。
特にトンネルの中でとぐろを巻いている新梢を外へと誘導してやり、さらに脇芽や巻きひげを全部取り除いてやると、ぶどう全体に光が当たるようになるのが気持ちいい。
まさに整理整頓、自ずと自分の心も次第に「整う」感じがするのだ。
作業の終わったぶどう畑を後日、師匠である前のおじさんに見てもらい、今度はツルの長さや粒の間引きなどを教えてもらうつもりだ。

すっかり明るくなったぶどう棚を眺めながら、ちょっとした充実感を感じる。
病害虫にやられなければ、何かしらのぶどうは収穫できそうな気持ちになってきた。
ぶどう作り、夫婦でハマるかもしれない。
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