<吉祥寺残日録>東京で初の電力需給逼迫警報!私は薪ストーブのショップを訪ねる #220322

全国で「まん延防止措置」が2か月半ぶりに解除された日は、思わぬスタートとなった。

宮城・福島で起きた震度6強の地震によって火力発電所の一部が稼働できないことから大規模停電の可能性があるとして、東京電力管内の1都8県に対して初めての「電力需給逼迫警報」が発令された。

東北電力でも同じく警報を出され、政府も企業や家庭での節電を呼びかけている。

福島第一原発事故によって原子力への依存ができなくなり、やむなく火力発電に頼っている日本のエネルギー事情だが、ウクライナ危機により原油と天然ガスが高騰し、さらに今度は火力発電所が地震によって稼働できなくなった。

地球温暖化対策として、再生エネルギーへの転換が叫ばれてはいても、それは所詮平時でのお話。

一度有事となれば、脱炭素というかけ声もあっという間に忘れてしまう。

今日の東京は季節外れの寒さに見舞われ、午後には雪も舞ったという。

寒くなればどうしても暖房をつけたくなるのが人情。

それが電力の逼迫に追い討ちをかけたということのようである。

関東に比べれば、岡山の最高気温は10度を超えてまだマシだったが、それでも朝から冷たい雨が降り、底冷えのするような1日だった。

妻が実家で用事があるというので、送り届けたついでに以前から訪れたかったショップをのぞいてみた。

お店の名前は「HICKORY WOOD STOVE WORKS」。

岡山市南区にある薪ストーブの専門店だ。

いかにもアウトドアといった佇まいの建物はとてもひっそりとしていた。

中に入ると、外国製の薪ストーブや小物類がずらりと並んでいた。

お客の気配を感じた店長さんが中から出てきて丁寧に対応してくれた。

薪ストーブについてほとんど知らず初歩的な質問を繰り返す私に対して、店長さんは実際に薪ストーブに火をつけるところから実演して見せてくれた。

実演に使ったのはイギリス製の無骨なストーブ。

正面の扉を開けて、太めの薪を数本下に並べ、その上に割った細木を置いていく。

そして細木の脇に薪ストーブ専用の着火剤を置いて火をつける。

後は扉を閉めて、ちゃんと火が細木に燃え移ったかどうかを確認するだけ。

想像していたよりも実に簡単だ。

これなら私でもできそうに思えた。

設置場所のことや近隣への迷惑のこと、さらに薪になる樹木の種類などいろいろ質問している間に、ストーブの中は真っ赤な炎に包まれていた。

煙がストーブから漏れ出すこともなく、柔らかな熱が伝わってくる。

「やっぱり、いいな」と思う。

煙突の設置ができるかどうかは現場を見なければわからないそうで、現場のチェックだけならば無料だという。

燃え残った灰は月に数回スコップのようなもので取り出して、畑などに撒けばいいらしい。

面倒そうな煙突掃除は年に1回か2年に1回程度でよく、1万5000円ほどで依頼することもできるというので、その点は安心した。

ストーブの種類は、アメリカ製、イギリス製、フランス製、ノルウェー製などいろいろあって、大きさによって値段も異なる。

古民家のような機密性のない家の場合、大型のストーブでなければ全く温まらないそうで、そうすると値段は本体だけで50万〜60万円、工事費などを含めると100万円を少し超えるという。

薪は自前で調達できそうなので、残る問題は妻の了解が得られるかどうかだ。

冬の寒い夜、炎を眺めながら薪ストーブの前で時間を過ごすのはまさに男のロマンである。

「でもちょっと面倒かな」という気持ちが店長と話している間に徐々に消えていき、かなり前向きな気持ちになってきた。

妻を説得して来月にでも店長さんに古民家を見にきてもらおう、そう思った。

庭木や剪定したブドウや桃の枝も薪ストーブで有効利用することができるという。

ただし、薪として利用するためには1〜2年かけて乾燥させること。

この冬切った枝もただ捨てるだけでなく、薪として利用できるよう適当な長さに切って乾燥させておかなければならない。

エアコンを設置するのとは違って、一度取り付けるとそれを使うための新たな仕事が増える。

でもそうやって、一人の人間ができる程度の労働で消費されるエネルギーは、外国からわざわざ運んできた天然ガスを燃やして膨大な電力を生み出し、それを湯水の如くに使う今の生活に比べたら遥かに省エネなようにも感じる。

所詮人間が自分一人でできる範囲の暮らしをしていたら、地球温暖化問題なんか生じなかったのだ。

産業革命によって人間の力を超えたエネルギーを獲得し、重労働を機会が代行してくれるようになって人間の生活は様変わりした。

スイッチを入れれば電気がつく、そんな当たり前をもう一度見つめ直して、できるだけ自然な形で暮らしをリデザインしていけば、地球と共存できる生き方が見えてくる。

東京に出された初めての「電力需給逼迫警報」は、私たちに当たり前の生活を見つめ直す契機を与えてくれているのだと考えたいものだ。

<吉祥寺残日録>地球のために今するべきことは、経済成長ではなく生活のダウンサイジング #211110

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