今日の午後、「武蔵野年金事務所」に行ってきた。

私も63歳の誕生日を迎え、年金の一部がもらえる年齢になったため、事前予約をして窓口へ書類を提出しにやって来たのだ。

我が家に、年金関係の書類が届いたのは誕生日の数ヶ月前のことだった。
『年金の請求手続きのご案内』
「年金を受け取るための手続き用紙をお送りします」と書かれている。
この手の手続きについて、私はどうせすぐに忘れてしまうので、後々困らないように主なポイントを記録しておこうと思う。
まず重要なのは、こちら。
「63歳になると『特別支給の老齢厚生年金』を受け取る権利が発生します。同封の「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」により、年金を受け取るための手続きを行ってください」
私の世代は、ちょうど過渡期であり、男性は63歳から年金の一部を受け取れる。
「老齢厚生年金」は63歳から、「老齢基礎年金」は65歳からということらしい。
60歳から満額受け取れた上の世代に比べると不利益だが、65歳になるまで何ももらえない下の世代から見れば恵まれた世代ということになる。
年金は、世代間格差の塊である。
「63歳(誕生日の前日)から、「年金請求書」の受付が可能です」
自分で請求手続きをしない限り年金は支払われないというのも、当然のことながら重要なポイントだ。
そして、手続きは誕生日の前日から可能となる。

もう一つ、検討するべき重要なポイントがある。
いつから年金をもらうかという問題だ。
『年金の受給開始時期は60歳から70歳まで自由に選択ができますが、受給開始を遅らせるほど、受けとれる年金額は増えていきます』
つまり、60歳から繰り上げて受け取ることも可能だが、その場合には通常よりも3割減額となり、70歳まで我慢して受給開始を繰り下げれば最大42%月々の受取額が増額される仕組みだ。
「ちなみに、何歳まで生きるとお得になるんですか?」
そんな質問を年金事務所の窓口で聞いてみた。
すると、「受給開始が70歳の場合には、81歳11ヶ月で逆転」、つまり82歳まで生きれば繰り下げた方がお得になる計算だという。
もう一つ、窓口で教えてもらったのは、65歳になる前に自宅宛に葉書が送られてくる葉書のことだ。
葉書を送り返すと通常通りに65歳以降の年金支給が始まるが、その葉書を出さないと65歳でいったん年金の支給がストップするのだという。
65歳の段階でいったん年金をストップして、繰り下げ制度に移行することも可能で、個人の選択でいろんなオプションが用意されているということがわかった。
国とすれば、少しでも受給開始年齢を遅らせたいというのが本音なのだろうし、もうすでに受給開始を65歳から70歳に遅らせる案が検討されている。
いずれはきっとそうなるのだろうし、私としてはジタバタせずに、通常通りの時期に支給を受けたいと思うのだ。
窓口の人に聞いたら、だいたい7〜8割の人は、私と同じく繰り下げなどせずに通常通りに年金をもらい始めているそうだ。

ここからは、提出する書類について・・・。
上の写真が、『年金請求書』。
あらかじめ、私の名前や住所などが印刷された状態で送られてきた。
色のついた空欄に、自分で必要事項を記入していく。
最初のページでは、下の方に年金を振り込む口座を指定する欄があった。
そして窓口で銀行の通帳を確認され、担当者の人が通帳のコピーをとっていた。

次のページには、自分が加入している年金の種類を選択する欄があった。
私の場合は、厚生年金保険ということになるが、その下の欄には、私が務めていた会社の名前や期間があらかじめ印刷されていた。
間違いがないかどうかを確認するだけで済むので、ありがたい。
私は基本的に38年間同一企業に勤めてきたつもりだったが、その間に会社の再編があったり関連会社に出向したりで、結果的に複数の企業名が書かれていて、自分のちょっとした履歴書のような印象を受けた。

次のページには、複数の年金を受けている人を想定して、すでに受給している年金の有無を記入したり、雇用保険関連の質問が並ぶ。
私の場合、去年退職後に失業手当を受け取ったので、それを記入し、ハローワークでもらった失業手当の書類を窓口で求められた。
ハローワークの書類も、窓口の人がコピーを取っていた。

次に家族関連、配偶者や子に関するページが続く。
配偶者や子の有無やその詳細、さらに配偶者の年金の状況などを問われる。
我が家の場合、妻がすでに年金の一部を受け取っているので、それを記入した。

このほか、配偶者などを扶養にする場合には、その関連の設問にも答えるようになっている。
我が家の場合、妻を扶養にすると記入したが、妻の所得を示す書類などは特に求められなかった。
ただし、妻の年金番号など、それなりに調べないと書けない項目もあるため、ちょっと余裕を持って準備を始めた方が良いだろう。

結構面倒なのが、添付書類の用意だ。
配偶者や子の有無、年金加入期間の長さなどの条件によって用意すべき添付書類が違う。
私の場合には、「戸籍謄本」「金融機関の通帳」「印鑑」「配偶者の年金手帳」「配偶者の所得が確認できるもの」「雇用保険の書類」を持参したが、結局求められたのは戸籍謄本と通帳、そしてハローワークの書類の3つだった。

ちなみに、戸籍謄本を取りに本籍地である三鷹市の市政窓口に行った際の話だが、年金の請求に使う場合には戸籍謄本の発行手数料が無料になる特例がある。
年金の申請手続きは一生に一度だけ。
行政からのちょっとしたお祝いなのかもしれない。

こうして準備した書類をリュックに詰めて、自転車で「武蔵野年金事務所」に到着したのは、予約時間の午後2時より15分ほど前だった。
自転車を駐輪場に止めて、建物の中に入る。

入り口を入ってすぐの場所に「総合案内」があり、一人のおばあさんが相談をしていた。
どうも話が要領を得ない。
窓口の担当者は気長におばあさんの話を聞いていて、ここでかなり待たされる。

「総合案内」で予約していることを伝えると、番号札を渡され、自分の番号が呼ばれるまで座って待つように言われる。
ところが、である。
壁に設置された順番待ちのパネルを見ると、なんと待ち時間が「100分」と表示されているではないか。
驚いてスタッフの人に、「100分も待つんですか?」と聞くと、「予約された方は優先でお呼びしますので、そこまではかからないと思います」との答え。
しかし、長時間相談する人が多いようで、なかなか番号が進まない。
諦めて本を読んで待っていると、突然トントン拍子で番号が進み始め、私の番号が呼ばれたのは2時26分だった。
どうやら、長々と話す人もいれば、テキパキと用事を済ませる人もいるようである。
私の担当は50代らしき男性で、穏やかに説明をしながら書類をチェックし、私がもらえる年金の額も改めて紙に印刷して渡してくれた。
とても親切で、好印象だった。

実は、窓口に出頭しなくても必要な書類が整っていれば、郵送でも受け付けてもらえるらしい。
でも一生に一度のことなので、出頭して年金の現場がどんな様子なのか知りたい欲求があり、私は年金事務所での提出を選んだ。
窓口に行くならば、事前の予約(これは妻がしてくれた)は絶対にした方がいい。
そうしないと、どんどん後回しになって、ものすごく時間を浪費することになるだろう。
すべての手続きを終えて年金事務所を出たのは2時45分ごろだった。
ちょうど1時間ほど、ここで過ごしたことになる。
それでも、行政の手続きとしては比較的スムーズで、これで晴れて私も年金生活者の仲間入りだ。

日本人の平均寿命がどんどん伸びて、今や90歳まで生きるのが当たり前の時代だ。
私の親たちも含めて今の高齢者たちは、自ら払い込んだお金よりもずっと多額の年金を受け取っている。
一方でそのしわ寄せが、私の子や孫の世代に回ってくるのは避けられない。
親世代から相続を受けられる若者はいいが、貧困家庭に生まれた若者たちとの格差は固定化する一方だ。
世界でも珍しい格差の小さい国だったはずの日本社会は、もはや存在しない。
年金を受け取る立場になったのを機に、改めて格差の問題を意識すべき責任が私に生じたのだと感じた。