いやはや、ドジな一日であった。
公式ハンディの再取得に必要な10ラウンドの7ラウンド目、今日から始まったNHKの朝ドラを見て、のんびりと中央線に乗っていつものゴルフ場「立川国際カントリー倶楽部」へと向かった。
ところが、福生駅で待っていたクラブバスに乗り込んだところで、おかしいと気がついたのだ。

私が乗り込んだバスは9時18分発。
私の予約したスタート時間は9時46分である。
「やばい」と思った。
私はラウンド前に練習するつもりだったので、スタートの1時間前にゴルフ場に到着しようと8時22分のバスに乗るつもりだった。
そこで昨日、バスに間に合う電車の時刻を調べる際に、うっかり1時間間違って入力しまったらしい。
少し考えれば、8時台の電車に乗って8時22分のバスに乗れるはずがないのだが、どういうわけか朝ドラが終わった頃家を出ればいいと思ってしまった。
しかも、バスに乗るまで間違いに気づかなかったのだ。
もはや大ボケである。
バスがクラブハウスに到着したのはスタートの10分前、バタバタと受付に駆け込むと女性が私の顔を見るなり、「申し訳ございません。お待ちしていたんですが間に合わないと判断して後ろの組に回っていただきます」と告げた。
こちらこそ、皆さんにご迷惑をかけてしまった。
遅い組に入れてもらえれば、着替えする時間も確保できてありがたい。

というわけで、私のスタート時間は10時4分に変更となった。
慌ててロッカールームで着替えをし、ゴルフバッグを預けてあるロッカーから引っ張り出し、ゴルフカートのところまで行くと、年配のご夫婦と一緒の組になったことがわかった。
「せっかくお二人で回るところお邪魔して申し訳ありません」と詫びた。
聞くとご主人は82歳、近くの昭島市に住んでいて、週に1〜2度奥さんとこのゴルフ場でラウンドしているという。
「いやいや、いつもいろんな方とご一緒していますから」とご主人は人の良さそうな顔で笑った。
結局、練習する時間もないまま、ドタバタでスタートホールに向かうこととなったのだ。

今日回るのは、草花コースのOUTから。
苦手な1番ホールは3打目のアプローチがベタピンでほぼOKパーという上々のスタートを切った。
先週金曜日の最終ホールでバーディを取った流れを引き継いでいるのか。
アプローチやパターの練習をした成果が徐々に出始めているのではないかと感じた。
ところがである。
その後がいけない。
ラウンド前の練習をしていないためか、ティーショットがことごとく曲がり、2番ホールでは4パットのトリプルボギー、すっかりペースが乱れてしまった。
その後、ショットは精度を欠き、アプローチは寄らず、パターも入らない。
今日は老夫婦と一緒に心静かに回るのでいいスコアが出そうな予感がしていたのだが、それは単なる幻想に過ぎないことを思い知らされる。

結局、前半を終わって48。
目標の42には遠く及ばないスコアに終わり、82歳のご主人に負けてしまった。
ご主人は年齢相応の痩せた体ながら、無理のないスイングは正確無比で、確実にフェアウェーをキープし、アプローチもパターもお上手だった。
一緒に回る奥さんはとても物静かな方で、自分からほとんど話をすることもなく、淡々とボールを前に運んでいく。
奥さんもおそらく80歳前後だと思われるが、前半58で回られるのだから立派なものである。

1日このご夫婦と回らせてもらって、とても感心したことがあった。
ご主人が奥さんをとにかく褒めるのである。
ご夫婦で回ると、旦那さんが奥さんにあれこれアドバイスしたりダメ出しをしたりする様子はよく見るのだが、今日のご夫婦ほどご主人が奥さんに寄り添い、やさしく語りかけ、そのショットやパットをことあるごとに褒めるという光景を見たことがない。
褒められても奥さんは大きな反応を示さず、ただ静かに自らのプレーに集中している。
時折ご主人が打ち方のアドバイスをしても、奥さんが煩わしそうにすることもなく、静かに聞いている。
とても不思議なご夫婦だと思った。
でも同時に、とても素敵だと感じた。
日本人の男性、特にシニアの男性たちは女性を人前で褒めるのが苦手だと言われる。
だが、このご夫婦はとても自然に、さりげなく、そういう関係が出来上がっているのだ。
翻って自分の日頃の振る舞いを想う。
妻に迎合することはあっても、さりげなく妻を褒めるなどという行為を結婚以来ほとんどしたことがないのではないだろうか。
日頃から妻には感謝しつつも空気のような存在である方がありがたく、妻が話しかけてきてもいつもいい加減に返事を返してそれが妻を怒らせる。
わかっていても、ついついそういう関係性になってしまうのだ。
それを考えると、80歳を超えたこのご夫婦の関係はどこかまだ付き合い始めた頃の初々しさが残されているように感じた。

後半に入り、徐々に真っ直ぐ飛ぶショットが増えてきてスコアも改善。
上がってみれば、前半48、後半44のトータル92であった。
前半私よりもスコアで上回っていたご主人は、お昼に食べたカツ煮定食が胃にもたれたらしく、後半に入って珍しくOBなどもあってトータル94。
辛くも82歳のおじいさんに負けずに済んだ。
奥さんは後半も58で回りトータル116、見事なものである。
私が82歳になるまでにはまだ18年、果たしてその年まで元気でゴルフができるだろうか?
こうして一人でゴルフ場に来て、さまざまな人と一緒に時間を過ごさせてもらっていると、いろんな人生勉強をさせてもらえる。
今日はまさにその典型とも言える一日。
私もさりげなく妻を褒めることができるような素敵なおじいさんになりたいと思った。
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