<きちシネ>#19「パラサイト 半地下の家族」(2019年/韓国映画)

今年で92回目を迎えるアカデミー賞の作品賞に初めてアジア映画が選ばれた。

韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。

半地下で暮らす貧しい家族が豪邸で暮らす家族に寄生する姿を描く作品だ。全体としては貧しい家族のたくましさをユーモラスに描き、終盤にサスペンスの緊迫感が用意されている。不思議な映画だった。

「パラサイト」は、カンヌ映画祭のパルムドールを受賞し、ゴールデングローブ賞でも外国語映画賞を受賞した。

そしてアカデミー賞では、作品賞のほか、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を独占した。前代未聞の快挙である。

カンヌ映画祭とアカデミー賞の性格の違いから、パルムドール受賞作品がアカデミー作品賞を獲ることはほとんどない。実はこの作品が2作目だという。

意外なことだが、韓国映画はこれまでアカデミー賞を受賞したことはもちろん、ノミネートされたこともなかった。それがこの作品で、カンヌとアカデミーをダブルで受賞したのだ。

新型コロナウィルスで日本以上に大騒ぎをしている韓国社会は、この歴史的快挙にまた大騒ぎになるのだろう。

イギリスBBCは、この映画の背景となっている韓国での半地下生活者を取材した記事を書いている。

さすがBBCと思ったので、その一部を引用しておく。

「半地下」はソウルの町並みにたまたま出現した、奇妙な建築の産物ではない。特異な極小空間が生まれたのは、何十年もさかのぼる南北朝鮮の対立に端を発する。

1968年のことだ。朝鮮人民軍のゲリラ部隊が朴正煕大統領を暗殺しようと、ソウルに潜入し、青瓦台の大統領官邸を襲撃した。

この襲撃は未遂に終わったが、南北朝鮮の対立は激化した。北朝鮮は青瓦台襲撃の2日後、今度はアメリカ海軍の情報収集艦プエブロ号を拿捕(だほ)するに至った。

武装した北朝鮮工作員が韓国に侵入し、テロ事件が相次いだ。

事態の悪化を恐れた韓国政府は1970年、建築基準法を改定。新築の低層住宅には、国家非常事態に備えた防空壕として、地下室の設置を義務づけたのだ。

つまりこれが、「半地下」だ。当初はこの半地下を賃貸に出すことは禁止されていた。しかし、1980年代の住宅危機で首都の住宅不足が深刻化すると、政府は半地下の住宅使用を合法化するしかなかった。

2018年になると国連は、韓国は経済規模こそ世界11位だが、手ごろな家賃の住宅不足が、特に若者や低所得者にとって深刻な障害になっていると指摘した。

35歳未満の韓国人にとって、年収に対する家賃の割合はここ10年間、約50%で高止まりしている。

それゆえに家賃急騰が続くソウルで、半地下のアパートは多くの人にとって現実的な選択肢になったのだ。20代の平均月収が約200万ウォン(約18万5000円)なのに対して、月々の家賃は約54万ウォン(約5万円)だ。

出典:BBC「「パラサイト」の半地下 そこで本当に暮らす人たち」

半地下は北朝鮮からの攻撃への備えだったのだ。

映画の中ではそのような韓国の事情は伝えられないので、単なる貧しい人たちを象徴した住居なのかと思っていた。

映画の中で重要な要素となるのが「臭い」だ。

この映画には、貧しい人も豊かな人も本当に性格の悪い人が登場しない。それでも貧富の違いが悲劇を生む。

でも、全体としては暗くならず、超競争社会と言われる韓国の現実を達観したようなしぶとい感性を感じた。

Yahoo映画の評価4.01、私の評価は4.00。

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