連日続く熱帯夜。
妻の睡眠時間がすっかりおかしくなってしまったらしく、毎晩9時ごろ寝て、夜中の3時ごろには起きてしまうらしい。
本人はなんとか元に戻したいようだが、会社を辞めて毎日が日曜日になった私は「体の赴くまま、眠たくなったら寝て、目が覚めれば起きれば良いんじゃない」などとからかっていた。
ところが、妻もどうやら吹っ切れたらしく、ここ数日、早朝からごそごそと活動を始めるようになった。
台所で何かしている音やベランダで水やりをしている気配がして、私もついつい早起きするようになった。

今、東京の日の出はだいたい朝5時すぎである。
ベランダに出ると、ちょうど吉祥寺のビルの上に朝日が顔を出す時間だ。
朝から気温は高く、爽やかと感じることはないが、日中の日差しに比べれば耐えられないほどの暑さというわけでもない。
最近ちょっとヨガにハマっていることもあり、せっかくならば朝日を浴びながら瞑想してみるのもいいかもと思い立った。

ベランダで過ごす時、私は普段はキャンプ用に折り畳み椅子を使っているのだが、数日前、ピンと閃いて、食卓で使っている木の椅子を持ち出してみた。
キャンプ用の椅子は弱々しく、肘掛けもついているので、このうえで胡座をかくことができないのだが、木の椅子の方が肘掛けがなく強度も多少ありそうなので試しに椅子の上に両脚をあげ、座禅のポーズをしてみた。
これが、実にいい。
背筋がピンと伸びて安定感も十分ある。
室内からスマホとイヤホンを持ってきて、リラクゼーション系の音楽を流しながら、しばし遠くを眺めながら座禅の真似事をしてみた。
実にいい。
気持ちがいい。
昇ったばかりの太陽の光はすでにかなり高温になっていたが、しばらくすると薄雲が太陽の光を少し遮ってくれた。

これは、ありがたい。
ぜんぜん体感温度が違う。
これならある程度の時間、じっとベランダで朝日を浴びていられる。
そうして、私は朝の1時間ぐらい、ベランダで座禅を組んで過ごした。
静かな音楽を聴きながら、遠くを見つめる。
パソコンやスマホで疲れた目には、こうした時間は良い休息になるのではないか?
片目ずつ開けて、左右の視力をチェックしてみた。
左目の白内障は少しずつ進んでいる気がする。
近くの眼科で白内障の手術の紹介状をもらったまま放置している。
コロナのせいもあるが、人工レンズに変えると遠近の調整ができなくなると耳にしたことも影響している。
さしあたって、生活に影響はないのだから、もう少し不便を感じるようになってから手術を受ければいいと勝手に解釈しているのだ。
何事も自分の気分次第で決められる「自由」。
平日も週末も関係ない生活というのは、本当に解放的である。

少し暑くなってきたので、7時前に部屋に戻るとたまたまテレビで面白い特集をやっていた。
BSテレ東の「モーニングサテライト」でやっていた「大統領選と中国の村!?」という特集である。
どうやら昨夜の「ワールドビジネスサテライト」で放送したものらしいが、アメリカ大統領選挙の関連グッズを大量生産している中国浙江省のある村を取材したリポートだった。
秋の大統領選を意識してトランプ大統領は、次々に中国への強硬策を打ち出しているが、この中国の村ではそんなトランプさんのお面が大量に生産されていた。
国旗やTシャツ、ポスターやステッカー。
ありとあらゆるトランプグッズが店にはひしめいていた。
トランプ支持者たちが購入したり集会で使用する様々なトランプグッズは、実は中国で生産されアメリカに輸出されていたのだ。
この村で生産されているのはトランプさんのグッズだけではない。
ここに来て、バイデンさんのグッズも注文が増えてきているという。
ボクサーに扮した2人がリングに上がり、バイデンさんがトランプ大統領に強烈なパンチを浴びせているポスターも並んでいた。
どれもよくできている。
世界の工場と言われる中国では、我々が想像もしないような物まで生産されているのだ。
アメリカ大統領選のグッズを生産している業者に話を聞くと、バイデンさんのグッズの注文も増えてはいるが、やはりトランプさんの方が圧倒的に多いという。
前回の大統領選でも、ヒラリーさんよりもトランプさんのグッズの注文が多かった。
だから、この村の人たちは、アメリカでの下馬評とは違って今回もトランプさんが勝つだろうと予想する。
近頃テレビニュースが画一化して面白いリポートを目にすることが少なくなったと感じるが、テレビ東京のこの特集はとても興味深く拝見した。

昨日は夕方にもベランダで座禅を組んだ。
夕立が止んだ後の空に、美しい雲が広がる。
コロナで旅行もままならない今年の夏だが、家にいてこれまでやらなかったことを試すだけで、豊かな時間は得られる。
withコロナの時代。
私は一切のストレスから解放され、心穏やかに自由な時間を楽しんでいる。