🇨🇳中国/深圳 2018年12月30日
アメリカと中国の貿易戦争の引き金になったことで日本でも有名になった中国の巨大通信機器メーカー「ファーウェイ・テクノロジーズ」。
ファーウェイは、1987年に携帯電話のインフラ関連機器を開発するベンダーとして創業し、2012年には売上高で世界最大の通信機器メーカーになりました。現在では、世界170カ国の通信会社に設備を提供し、スマートフォンの販売台数でも世界のトップ3にのし上がりました。
そのファーウェイ本社は深圳にあります。
地下鉄に乗って、ニュースで見慣れたファーウェイ本社を見に行ってきました。
深圳中心部から五和駅へ
ファーウェイの本社が深圳のどこにあるのか?
日本で調べずに来てしまった私は、現地で途方にくれます。

ホテルの窓から深圳の超高層ビルを眺めながら、スマホをホテルのwi-fiにつないでも、Yahoo!もグーグルも使えません。そう、ここは中国なのです。
困り果てて、試しにホテル予約サイト「Booking.com」で検索してみると、中心地からかなり北に行ったところにファーウェイの施設らしき場所が表示されました。
最寄駅は地下鉄5号線の五和駅のようです。何の確証もありませんが、この情報を頼りに行ってみることにしました。

宿泊先の華強北駅から地下鉄2号線で市民中心駅へ、そこで4号線に乗り換えます。

この地下鉄4号線では、走行中トンネルの壁面に突然広告が映し出されました。そのデザインから判断すると政府広報でしょうか?

4号線の深圳北駅で降りて、今度は5号線に乗り換えです。

深圳北駅は、中国版新幹線「高鉄」の駅。
日本で言えば、新大阪や新横浜のような駅です。

ホテルを出てから40分足らずで五和駅に到着しました。
ここまでは、順調です。
五和大道を北へ歩く

駅前には高層ビルも建っていますが、予想いていたより殺風景なところです。
本当にこの近くにファーウェイ本社があるのだろうか?
不安がよぎります。

どちらの方向に向かうのかもわからないので、駅前のバス停をのぞいてみました。
停留所名の中に、「華為基地」「華為生産中心」という文字を発見。「華為」とはまさしくファーウェイのことです。
場所がわからない以上、バスに乗った方が確かだろうかなどと考えているところに、一人の女性が私の前を颯爽と通り過ぎました。

黒いパーカーにリュックを背負い通い慣れた風情で早足で歩く欧米系の女性。
いかにも中国的な五和の町には似合わないこの女性はきっとファーウェイ関係者だと私は判断し、彼女の後をついていくことにしました。

雑居ビルの1階に様々なお店が並ぶ典型的な中国の街並み。
「中国のシリコンバレー」のイメージとはかけ離れた光景に、正直ちょっとがっかりしました。

ところが、五和駅から北へ伸びる「五和大道」を10分ほど歩くと、突然街の景色が一変しました。
真新しい高層マンションが立ち並び、大型ショッピングモールも併設されています。
「ここが、ファーウェイか?」

東京にあっても人気になりそうなマンション群です。
ひょっとしてファーウェイの社員住宅?

私がフォローしていた欧米人女性も、この高級マンション群の中に消えて行きました。目標がいなくなったため、この後どうするか困惑します。
敷地の入り口にはゲートがあり、公安警察のボックスもあります。とても警備が厳重で迂闊に覗き込みのも躊躇してしまいます。

さらに北へ進むと立派な噴水がありました。
見渡す限り高級マンションが立ち並び、日本の再開発とは規模が違う圧倒的なスケールです。

入り口に「信義嘉御山」と書かれていました。
帰国してからネットで調べてみると、中国語の販売サイトがすぐに見つかりました。ドローンを使って上空から撮影した360度映像がすごいので、もしご興味があればこちらからご覧いただけます。
値段は66-89㎡の2LDKで316-425万元、134-217㎡の4LDKだと560-1350万元。つまり安くて5600万円、高いものは2億4000万円ぐらいのようです。
噴水の近くでアンケート調査をしていた女性を捕まえて「ファーウェイはどこ?」と英語で聞いてみました。意味は通じたようで、女性は戸惑いながら「どのファーウェイか?」と聞き返します。私は「本社、いやどこでもいい」と答えます。女性は英語が出てこないようで、手で方向を示すだけ。どうやら大通りに戻ってさらに北に行けということのようです。

女性の指示通り北へ向かうと、大通り沿いにはまだ続々と高層マンションが建設中です。
それにしても、この足場の掛け方、ちょっと怖い感じです。

高級マンション群が途切れたと思ったら、今度は緑に覆われた大学のキャンパスのような街が現れました。
こここそが、目指していたファーウェイの本社でした。
ファーウェイ本社
そこはまさに、「中国のシリコンバレー」でした。

五和大道が中央を貫く広大な敷地の中に、ポツンポツンと低層の建物が建っています。

右を見ても左を見ても、ずっと先まで緑に囲まれた施設群が続いています。
ファーウェイの本社は、想像していた超高層ビルではなく、シリコンバレー同様のキャンパスでした。ライバルのいいところは徹底的に真似る、そういった精神が中国企業にはあるのでしょう。

ファーウェイの広大なキャンパスをつなぐ専用のシャトルバスも運行されています。

地図をみるとこのキャンパスの大きさがわかるでしょう。
あえて深圳の中心部から離れ、広大な土地を確保したファーウェイ。目指すのはGAFAと呼ばれる米IT企業だということがわかります。

ファーウェイの財務センターなどがあるB区の東門。
ここには、図書館も完備されているそうです。
ただ私が訪れたのは12月30日ということで、会社はもう正月休みのようで、人の出入りもほとんでありませんでした。

通りにあった自転車置き場も、普段だったら自転車であふれているのでしょう。
確かにこんな広いキャンパス、歩いて回るのは大変です。

五和大道の反対側にはF区のビルが見えてきました。
ニュースなどで度々登場するファーウェイのシンボルとされる建物です。

こちらはG区。
東西南北どちらへ行っても、すべてファーウェイです。

公園に置かれた石に赤文字で「華為」、ファーウェイ。
シリコンバレーの中に突如中国が顔を出したような印象があります。

そうかと思えば、フェンスの隙間からフランス風の建物も見えました。
入念な植栽が施され、中があまり見えないようになっているようです。

フェンス沿いにぐるりと回ってみると、まるでベルサイユ宮殿のような洋館が通りから見えました。かなり本格的な西洋建築です。
後で聞いた話によると、ファーウェイの迎賓館を建設しているのだといいます。

ファーウェイ・キャンパスの端っこにたどり着いてから、もうかれこれ40分ほど歩いています。しかし、それでもまだ施設の一部を歩いたに過ぎません。
1区画がとにかくでかく、もう歩き疲れてしまいました。
万科城

ちょうどお昼時なので、どこかで休みたいと思ってぶらぶらしていると、ヤシの木の並木があって、その奥に「万科城」という文字が目につきました。
人々がその中に吸い込まれていきます。私も後をついて、恐る恐る中に入ってみることにしました。

そこで目にしたのは、まるでカリフォルニアに迷い込んだような街並みでした。
広い歩道に植えられたパームツリー。これはもう完全にパクったに違いありません。

朝から曇って寒かったのに、この街に来たら急に晴れて暖かくなってきました。
なんだ、これは?
まるでカリフォルニアではないか?

後で調べた話ですが、この街は万科集団という深圳の企業グループが10年前に開発した高級住宅地だそうです。

住宅地の真ん中を川が流れ、その周囲には木々に囲まれた低層のフラッツが建てられています。

ブロックごとにゲートがあり、万全のセキュリティーが保たれています。
きっと深圳の中国人成功者や外国人たちが暮らしているのでしょう。

そして商店街には、住民たちの暮らしぶりを写した写真が飾られていました。
ちょっと恥ずかしい、ウェディングドレスを着た高齢者たち。

ただこちらの写真を見ると、ここも紛れもなく中国。
国を挙げてアメリカに追いつき追い越そうとする中国の一面を見ることができました。

深圳ハイテク散歩。
ファーウェイの城下町、五和エリアは絶対にオススメです。
中国のイメージがちょっと変わります。