耕作放棄地となっていたブドウ畑の解体を決断し、自力ではなく近くの解体業者「アライブコンストラクション」に依頼することにした。

9日から始まった解体作業だが、他の仕事が立て込んでいて人の手配がついた日に飛び飛びで行われた。
9日と13日にスタッフが来て、まずは畑じゅうに張り巡らされた針金を切断する作業を行なった。
最初に来たスタッフはまだ経験が浅いらしく、予定通りに作業が進まず真っ暗になってもまだ作業をしていて心配したが、次に来たスタッフは手慣れた感じで夕方までに針金の切断とコンクリート製の支柱の撤去を全て終え、きれいに後片付けをして帰っていった。

やっぱりこの手の仕事は、個人差が大きい。
同じ会社に仕事を依頼しても、やってくる人によって作業効率は大きく違うことを改めて感じた。
こうして下準備が終わった後、16日に7人で一斉に作業に入ると連絡があった。
どうやら重機を投入して一気に作業を終えるつもりらしい。

昨日の朝8時、ユンボと呼ばれる重機が畑に運び込まれた。
道と畑との間には段差があるが、ユンボはそんなことは気にしない。
アームを巧みに操って、車体を安定させながらキャタピラーを前進させて段差をもろともせずに畑に降りていく。

後からもう1台のユンボも到着し、2台で作業を始めた。
ブドウ棚の解体というと農家の人たちがやる手順というものがあるらしいのだが、解体業者はそんなことはお構いなし。
ビルや住宅の解体を行う要領で、重機をフル活用して力で粉砕していく。

根が張ったブドウの木もユンボにかかると簡単に根こそぎ抜き取られる。
人力では到底できない芸当だ。
面白いようにみるみるうちに畑の風景が変わっていく。

午前10時ごろには産業廃棄物を運搬するトラックが畑に到着。
畑に山積みになっていた針金やブドウの木、コンクリートの支柱などを次々に運び出していく。
この頃にはすでに全部のブドウの木が抜き終わっていて、そのスピードに圧倒される。

10時を過ぎた頃、1人の作業員が別の畑の解体を始める。
メインのブドウ畑に比べれば規模は小さいが、この畑も2年間耕作放棄地となっていた。
針金を切断し、端から順番に棚を倒していく。

午後2時半、メインのブドウ畑での作業がほぼ終わった。
ブドウの棚はおろか、ブドウの木も全て姿を消してフラットな畑が出現した。
ユンボ2台が走り回った後は、雑草も全て削ぎ取られていて、面倒な草刈りが今月はもう必要なさそうである。

ただ、よく見ると前日の大雨でぬかるんだ畑にはたくさんのキャタピラの跡が残されていて、おまけに針金やユンボが砕いたコンクリート片が所々に残されていた。
撤去してもらった資材に比べれば微々たる量ではあるが、今後この畑で農作業をすることを考えると、こうした針金やコンクリート片が草刈機や耕耘機の邪魔になるのは間違いないだろうと、先のことが心配になる。

メインの畑の作業を終えてユンボ2台は、すでに小さなブドウ畑に回っていた。
私はじっくりとユンボの動きを見守る。
アームを器用に使って、一度に何本ものコンクリートの支柱を持ち上げたり、かと思ったら1本の針金を拾い上げてみたりして、針金、木、コンクリート、ビニールパイプと4種類の山を作っていく。

午後3時過ぎ、驚いたことにユンボが1メートル近い段差を登って、隣接した別の畑に入っていく。
ここは私が去年から草刈りをし野焼きをしてジャガイモなどを育て始めている畑だ。
この畑も以前はブドウ畑だったところで、解体した時に放置されたコンクリートの支柱がちらこちらに野積みされたままになっている。
今回解体業者にはこれら野積みになった支柱の撤去も依頼していたのだが、ここまで1日で一気に作業をするとは思っていなかった。

この畑にはかつてブドウ棚を固定していた鉄製の杭がたくさん残っていて、それが草刈りの邪魔になっていた。
スコップで掘り返して人力で引き抜こうと頑張ったこともあるが、とても歯が立たないので今回解体業者にそれらの杭を重機を使って抜く作業もお願いしていた。
ユンボは真っ先にその要望に応えてくれるようだ。
私が杭の位置を指示するとユンボはアームで地中深く埋まっていた鉄製の杭を軽々と引き抜いてくれる。
その杭は私の予想よりも長く、とても人力では抜くことなどできそうにない。
これまで草刈機の歯をダメにされた杭がなくなることは、私にとってとても嬉しい光景だった。

続いて、畑のあちこちに野積みされたいたコンクリート製の支柱を運び始める。
一輪車を使って私が運んだ時には、1本の支柱を運ぶのでさえ四苦八苦したものだ。
それをユンボは軽々と持ち運んでいく。
改めて建設機械のありがたさを感じた。

午後3時半、こうして集めた廃材がトラックに積み込まれ産廃処理場へと運ばれていく。
しかしアクセスできる道が細いので2トン車しか入れず、全ての廃材を運び出すにはトラックが何往復もしなければならなかった。

この日は午後から強い寒気が流れ込み天気が不安定になった。
急に冷たい風が吹いてきて、雨がパラパラと降り出した。
前日の大雨でぬかるんだ畑には重機の深い轍ができていく。

こうして私の要望に沿って、さまざまなミッションをこなしたユンボは最後に整地作業を行なって深い轍を埋めてくれ、後はトラックへの積み込み作業を残すだけとなった。
しかし、なかなかトラックが戻ってこない。
日が沈みあたりが次第に暗くなってくる。
手持ち無沙汰そうな作業員に、「重機の免許を取るのは大変なの?」と聞いてみると、「コマツの教習所で2日間講習を受けただけだ」と意外な答えが返ってきた。
免許を取りに来る人の大体は現場ですでに重機の操作経験があるらしく、教習所で学科と実技の講習を一通りやって免許をもらったら、後は現場で仕事をしながらさまざまな技を身につけるのだそうだ。

ライトをつけて最後の積み込み作業が終わったのは午後7時ごろだった。
作業開始から11時間。
ほぼノンストップで作業を続け、およそ1500平米のブドウ棚を1日で更地に変えたのだ。
さすがプロフェッショナル、無理に自分でやろうとせず解体業者に依頼してよかったと思った。

ただ、一つトラブルも起きた。
1台のユンボのキャタピラが壊れて畑で動けなくなったのだ。
作業終了間際だったからよかったが、動けなくなったユンボは修理が来るのを待って今日も私の畑で立ち往生したままである。

解体の仕事は本当に大変そうだ。
こうした業種では今も徒弟制のような厳しい上下関係があるようで、慣れない新人は先輩からさんざん怒られながら働いている。
今時これではなかなか若手が定着しないんだろうなと余計な心配をしながら仕事を見守った。
でも解体の仕事は絶対に必要である。
おかげで、私のブドウ畑も思いのほか短期間で更地に変えることができた。
こうしたきつい仕事をしてくれる日本人がいなくなったら・・・私たちにどんな未来が待っているんだろう。
そんなことを思わず考えさせられた1日でもあった。
<吉祥寺残日録>岡山二拠点生活🍇 解体業者に依頼して耕作放棄地になっていたブドウ棚の撤去を始めたのだが・・・ #230412
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