<吉祥寺残日録>岡山二拠点生活🍇 まるで忍者!ロープ1本でトタン屋根を自在に動き回る塗装業者の技に感動 #221115

今回の帰省に合わせて、やるべき用事が2つあった。

一つは車の1年点検、そしてもう一つは伯母の古民家のトタン屋根を塗り直してもらうことだ。

帰省初日に突然玄関のベルが鳴り、誰だろうと思いながら出てみると長年伯母と付き合いのある塗装業者だった。

知らないおじさんが突然現れ、そろそろ屋根を塗らなければならないタイミングだと告げられたのは今年の夏だった。

確かにトタン屋根のところどころ塗料がはがれた箇所があり、私も少し気になっていた。

この家はもともと藁葺き屋根だったのを私の子供の頃その上からトタンを張ったものだ。

今もトタンの下には大昔の藁がそのまま残っているのだ。

それって腐らないのかと不安だったが、塗装業者のおじさんによれば、この家のトタンは品質がいいので定期的に塗り直していけばまだまだ大丈夫だと教えてくれた。

そして、今時の塗装業者はいちいち足場を組むので、足場代だけで40万円ほどかかってしまうが、自分が昔ながらのロープ1本で屋根に上がるので15万円で塗ってあげると売り込んでくる。

塗装業者の中にはいかがわしい者も多いと聞くので、大丈夫なかと少し疑って聞いていたが、伯母との昔話を聞くうちに、伯母がずっとこの業者に屋根をお願いしていることがわかり、今月の帰省のスケジュールを伝えその間にやってほしいと依頼した。

しかし、おじさんから連絡がないなと思っていたら、いきなり家にやってきて明日からやりますと言われる。

実際に仕事をするのはおじさんではなく、おじさんの息子だった。

まだ若干25歳だが、すでにキャリアは9年、伯母の古民家の屋根も以前塗ってくれたことがあるという。

今週月曜日、午前中にやってきた息子は梯子を軒先にかけて、さっさと屋根に上がっていく。

トタン屋根の状態を観察しながら、一本の太いロープを巧みに操り、屋根の向こう側に固定したらしい。

そこからがまさに神業。

一本のロープをつかんだり、足に絡ませたり、足で踏んだりしながら体を安定させて屋根の上を自由自在に動き回る。

そして左手には塗料の入った入れ物を持ち、ハケやローラーを使い分けながら右手で塗っていく。

その間も必ずロープを使ってバランスを保っているのだ。

その姿はまさに忍者か、時代劇に登場する盗賊そのものだ。

息子はまだ若いこともあって体がさスリムでいかにも運動神経が良さそうだ。

「何を履いてるの?」と聞くと、地下たびが一番滑りにくいと話していた。

ところが、私が興味深そうに塗装の様子を眺めていたせいか、息子職人が一瞬足を滑らせ、塗料が飛び散ったのだ。

「危ない!」と思った瞬間、ロープをつかんで体勢を立て直し、こぼれた塗料が固まらないうちに素早くその周辺を塗って事なきを得た。

実は前回、この古民家の屋根を塗った際、息子が屋根から落ちたんだと後からおじさんに聞いた。

職人も屋根から落ちる・・・そんなこともたまにはあるようである。

塗装がはがれかかっていた屋根の下の部分は、その周辺も塗料が浮き初めているらしく、ヘラを使って浮いている塗料を全部はがしてから再度塗り直していた。

この時にはロープではなく、瓦にできるだけ足を密着させてその抵抗によって体を安定させて塗っている。

トタン屋根の部分に比べると瓦が敷き詰められた軒の部分の傾斜は若干緩やかだが、それでも普通に立つと足が滑っているのがわかる。

それにしても世の中にはいろんな仕事があるものだと、息子の仕事ぶりに感心してしまった。

彼が塗っている塗料は「シルバートップ」というアルミニウム塗料。

缶の中には銀色のどろっとした液体が入っていた。

鉄塔や橋、船舶などにも使われる耐候性と防食性に優れた塗料だそうだ。

ただこの日は晴れの予報にもかかわらず、一日中曇りがちの空が続いたため、仕上げの作業を翌日に延期したいとの要望が伝えられた。

親方である父親と相談した上での判断らしい。

屋根の塗装は天気に左右される。

塗料は塗ってから1時間で乾くらしいのだが、それでも晴天の日に作業するのに比べると仕上がりにどうしても差が出るという。

こちらも別に急いでいないので、お任せすることにした。

午後になって父親である親方がやってきた。

息子の仕事ぶりを眺めるのが目的ではなく、「息子にはまだお金は触らせません」と言い、私から現金を受け取るのが目的のようだ。

職人の世界は親子といえども親方と弟子、上下関係がはっきりしているのだろう。

料金は、作業が2日に及んでも変わらず15万円+消費税。

東京で自宅の屋根を塗ってもらった際には100万円ほど取られた経験があるので、安いと感じたが、その代わり3〜4年に一度は塗り替えなければならないらしい。

今日の午前中は、私はハスラーの1年点検のため車検屋さんに行く用事があった。

もともと私が不在の時でも作業はできるという話だったので、今日も勝手に来て作業を始めてもらうことにした。

車の点検を済ませて家に戻ると、ちょうど正面の屋根の仕上げを始めたところだった。

いない間にやっておいてもらうと簡単ではあるが、正直な話、私はこの正面を塗る瞬間に立ち会いたいと思っていたのだ。

息子はロープを自在に使いながら急傾斜の屋根をスイスイと動いていく。

ローラーで新しい塗料が塗られると、その部分がシルバーに輝き始める。

今日は快晴なので、その輝きがまばゆいばかりだ。

そうして午後1時ごろ、トタン屋根の4面全てを塗り終えて息子は帰っていった。

「オヤジさんの跡を継ぐの?」と聞いてみると、「跡を継がせる気があるんですかねえ」と答えた。

でも、ロープ1本を使って屋根の塗装を行う職人は日本中にそれほどいないそうで、息子はずっとこの仕事を続ける覚悟のようだった。

「ずっとこの仕事しかしていないんで、今更別の仕事をやることはないでしょう」

ロープを使った職人は危険なので労基署などからは足場を使うよう指導されることもあるという。

でも、これはまさに職人技、個人的には感動的ですらあり、ずっと伝承されていってもらいたい技術だと感じた。

息子が去ったあと屋根を見上げると、ちょっとした成金の館にように銀色に光り輝いていた。

真っ青な空をバックに輝く銀屋根。

ロープ1本でこれを仕上げた職人のプライドを見た気がした。

<吉祥寺残日録>岡山二拠点生活🍇 シロアリに食われた2部屋の床を作り直す大規模修繕工事が無事に完了 #220418

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