<吉祥寺残日録>井の頭公園で進む「ナラ枯れ」、小さな虫が大木を殺す恐ろしいお話 #210829

今朝は7時半まで眠った。

それでもまだ眠気が消えない。

まだ暑さは続いているが、ほんの少し凌ぎやすくなったのだろうか・・・。

朝食を済ませた後、公園をひと回りすることにした。

天気は良くない。

妻は岡山での大片付けの疲れが出たのか、手の指先の皮が赤むけとなり、おまけに腰痛も出たようで、代わりにゴミを捨てた後で井の頭公園に向かう。

桜の葉が落ち始めたようで、ひょうたん橋の上に立つと、井の頭池の水面にたくさんの葉が浮いていた。

8月の末とはいえ、やはり暦の通り、秋は静かにやってきているのだ。

新たな命が湧き上がる春、生命力溢れる夏と比べて、秋にはやはり物悲しさがある。

個々の植物はどれもくたびれた装いで、盛りをすぎた初老の自分を思わせた。

この「ひょうたん橋」からの眺めに異変を感じたのは、今月22日、岡山から戻った後だった。

池の南側で存在感を示していた「コナラ」の大木が枯れていたのだ。

コナラって、ずいぶん早く葉が落ちるんだなあと思った。

しかし、周囲の木々がまだ青々しい真夏に木全体が枯れるのはやはりおかしい。

家に戻って調べてみると、それは「ナラ枯れ」と呼ばれる現象であり、「カシノナガキクイムシ」という体長5ミリ程度の小さな虫とこの虫が媒介する「ナラ菌」によって引き起こされるいわば伝染病だとわかった。

盛夏から晩夏にかけて表れる葉の萎れがこの病気の兆候である。その後1週間から2週間程度で葉の色は急速に褐色に変わり全身枯死に至る。枯死木の根元には細かい木屑が散乱し、幹には小さい穴が多数認められる。枯死木を伐採すると辺材部は茶色に変色している。

出典:ウィキペディア

恐ろしいことに、井の頭池の上に大きく枝を張ったコナラの大木は小さな虫たちによって殺されたのだ。

「ナラ枯れ」は井の頭公園にどのくらい広がっているのか?

今日公園を回ったのは、それを確認する意味もあった。

御殿山の雑木林でも枯れた木を見た。

西園の400mトラックの脇でも樹高20メートルほどある大きなコナラの大木が枯れていた。

ここは私がいつも体を動かしに来る場所なので、夏前まではこんな状態ではなかったと思う。

枯れたコナラの根元には、細かいおが屑のような粉が大量に溜まっている。

まさに「ナラ枯れ」の症状そのままだ。

よく見ると、根元だけではなく、樹皮の全面に同じような粉がついているではないか。

この大木はまだ立っているが、もうその内部はボロボロで、遠くない将来、切り倒す運命にあるのだ。

登山雑誌「山と渓谷」が運営する「YAMAKEI.ONLINE」に、「ナラ枯れ」に関する記事が掲載されていた。

自然・植物写真家の高橋修さんが書いた『日本の雑木林で今、何かが起きているのか? 「ナラ枯れ」で泣いているように樹液を流すコナラたち』という記事である。

ナラ枯れとは、ドングリを実らすことが特徴のコナラやミズナラなど、ブナ科の木に発生する大量枯死の事をそう呼ぶ。ナラ枯れが起こる原因はカシノナガキクイムシ(あだ名はカシナガ)。カシノナガキクイムシは体長4~5mmの黒褐色で円柱形の甲虫だ。

キクイムシという名前だが木を食べているのではなく、木をかじって開けた穴にナラ菌と呼ばれるカビの仲間を植えつけて畑とし、穴に生えたナラ菌を食べる昆虫なのである。このカシノナガキクイムシが植えつけるナラ菌は、幼虫の時に食べていた胞子を、羽化した成虫のカシノナガキクイムシが体の窪みに付着させて運んでいく。このナラ菌(数種類ある)は、生きた木から栄養を吸収する種である。

引用:YAMAKEI.ONLINE

「カシノナガキクイムシ」は、ナラ菌を育ててそれを食べて育つ虫なのだという。

しかも厄介なことに、幹の太いコナラやミズナラの大木が好みなのだ。

カシノナガキクイムシが穴をあけて住む木はブナ科の樹種が多く10種以上にもなる。幹が太い木を好む。羽化して新しい木にとりついたカシノナガキクイムシはフェロモンを出してほかのカシノナガキクイムシを呼び、卵を産み付ける。

一本の木に大量のカシノナガキクイムシが集中することになり、たくさんの穴を開けられる。ナラ菌が増えるとその木は水分を根から葉に送ることができなくなり、夏には葉が枯れ、その木は枯れてしまう。枯れた木からはたくさんのカシノナガキクイムシが飛び出し、新しいブナ科の太い木へ飛んでいく。ナラ枯れは、カシノナガキクイムシが媒介するブナ科の木の伝染病と考えてもよいだろう。

引用:YAMAKEI.ONLINE

ジブリ美術館裏にあるコナラの大木も完全にやられていた。

400mトラック脇のコナラとの距離は数百メートル。

同じ虫たちが一斉に移動したのかもしれない。

それにしても、井の頭公園で「ナラ枯れ」が発生した原因は何なのだろう?

高橋さんは、人間の営みに原因があると指摘している。

ナラ枯れの増加理由は、いくつか考えられるが、そのすべてが人間の活動によるものである。

ひとつ考えられる理由は、戦後まで里山のコナラやミズナラは、木炭や薪にするために、数年に1回程度の頻度で切られていた。切るときには、必ず切り株を残したので、すぐにひこ生え(脇芽)が伸びて、木は数年で再生していた。まさに雑木林の持続可能な利用である。

木炭の利用は古くから行われた。数年に一度切られてしまうという環境には、成長が早く、ひこ生えによる再生能力が高いコナラのほうが、ブナ科でも常緑のカシやクスノキ科のタブなどの木よりも適している。こうして長い年月をかけて、持続可能な状態ではあるが、里山の樹種はコナラ若木中心の雑木林ばかりという、樹種の限られたいびつな状態の雑木林になってしまったのだ。

これがいっきに変化したのが、戦後に著しく増加した、都会での木炭使用の中止である。これにより、木炭の生産は壊滅状態になり、雑木林のコナラも切られることはなくなった。こうなると、雑木林のコナラはどんどん大きくなり、大径木が多くなる。

前述したように、キクイムシは大径木を好む。人間によって木炭にするために増やされたコナラが、人間によって用済みになって放置されたために、コナラの大径木が増えた。これがカシノナガキクイムシにとって都合がよい環境であるために、ナラ枯れが大量発生していると考えている。

もうひとつの理由は、地球の温暖化である。キクイムシはある程度暖かい環境を好む。しかし、近年の急激な温暖化によって、西日本の暖地で小さな規模で生活していたカシノナガキクイムシが、いっきに分布域を広げた可能性がある。

引用:YAMAKEI.ONLINE

つまり、薪や炭をとるため人工的にコナラの林が作られたが、薪や炭がいらなくなり山が放置されたライフスタイルの変化と、地球温暖化が原因だというのである。

しかし、何十年もかけて成長した大木が、小さな虫によってあっけなく死んでしまうとは、自然のメカニズムとは不思議であり冷酷なものだ。

地球の支配者である人類が、目に見えない新型コロナウイルスによって翻弄されていることにも通じる気がする。

御殿山の雑木林では、コナラだけではなく枯れたアカマツも目にした。

これは「松枯れ」と呼ばれる現象で、「マツノザイセンチュウ」という線虫によってもたらされる。

カミキリムシなどの昆虫がこの線虫を媒介するとも言われ、近年この「松枯れ」も日本全国に拡大していているのだ。

公園内の一角には伐採した樹木の集積場所があるが、かなり太い丸太が積み上げられていた。

井の頭公園では、台風などで大木が倒れたり枝が落ちて人がケガをしないよう、定期的に樹木の伐採や手入れが行われているが、「ナラ枯れ」が広がるとさらに大規模な伐採が必要になるに違いない。

日本人は昔から山に入り、自然に手を加えながら生きてきたが、戦後になって山が放置されるようになったことが樹木の病を呼び寄せているとすれば、「ナラ枯れ」や「松枯れ」も自然からの警告と受け取るべきなのだろう。

そんなことを感じた日曜日。

たまたま録画していたテレビ番組で「アーボニスト」という職業を知った。

MBSの「情熱大陸」で取り上げられたアーボニストの松岡秀治さん。

アーボニストとは、欧米由来の「ツリークライミング」と呼ばれる技術を身につけた、問題のある木の危険を安全に取り除くスペシャリストのことである。

ロープを使って高い木に登り、枯れ枝などを除去して樹木を元気にし、命を守る職業なのだ。

欧米では身近だというこのアーボニストだが、日本ではこの資格を持つ人はわずか数十人にとどまる。

一応、田舎に山を所有する私からすると、とても興味をそそられる格好いいお仕事であるが、ロープ一本で枝から枝へと飛び移るその技は楽しそうだが体力が必要そうで、還暦過ぎのオヤジにはおそらく難しいのだろう。

ちなみに、アーボニストの資格を得るためには、アメリカに本部を置く国際組織「ISA(International Society of Arboriculture)」公認の「アーボニストトレーニング研究所(ATI)」が定期的に講習会を開催しているという。

個人的には非常に興味があるので、コロナが終わったらひょっとしたら挑戦してみるかもしれない。

地球温暖化の影響は氷河の消滅や異常気象だけではない。

自然とどのように付き合うのか、私たちのライフスタイルそのものが身近なところから問われている。

<吉祥寺残日録>温暖化対策に新目標!私は「氷河期」10万年周期説を学ぶ #210423

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