<吉祥寺残日録>シニアのテレビ📺BS世界のドキュメンタリー「“裏切り者” 米軍現地通訳者のそれから」 #210703

日本ではあまり報じられていないが、4日の独立記念日に向けてバイデン政権は、コロナからの復活を華々しく宣言するつもりらしい。

その重要な要素が、アメリカ軍のアフガニスタンからの撤退である。

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アメリカ軍によるアフガニスタンでの戦闘は、アメリカ同時多発テロ事件の報復として2001年に始まった。

あれから実に20年、「アメリカ史上最長の戦争」と呼ばれる所以である。

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「不朽の自由作戦」と名付けられた攻撃により1万2000発の爆弾を投下し、瞬く間に首都カブールを占領、タリバン政権を崩壊させた。

しかし、それでも戦争は終わらなかった。

2011年には最大の目的だったウサマ・ビンラディンをパキスタン領内で殺害する。

しかし、それでも戦争は終わらず、ビンラディン殺害後もアメリカ軍の駐留は続いてきた。

今年発足したバイデン政権は、「テロとの戦い」よりも「中国包囲網」を優先する路線に転換した。

アフガニスタンからの撤退はこうしたアメリカの方向転換を意味する。

中国政府が新疆ウイグル自治区で行っているイスラム教徒の弾圧も、中国に言わせれば「テロとの戦い」であり、アメリカも中国もやっていることは実は同じなのだ。

20年に及ぶアメリカの戦争が一つの節目を迎える中、ちょっと考えさせられるドキュメンタリー番組を見た。

BS世界のドキュメンタリー「“裏切り者” 米軍現地通訳者のそれから」。

2020年にアメリカで製作されたこの作品の主人公は、「テロとの戦い」という名目でイラクやアフガニスタンに送り込まれた米軍を支えた現地人通訳たちである。

イラクやアフガニスタンで駐留アメリカ軍を支援した現地の通訳者たちが、過激派に「裏切り者」と見なされ命を狙われている。元通訳たちと家族を長期取材し、現状を伝える。 祖国の復興を助けたいと駐留アメリカ軍の通訳に志願したアフガニスタンの男性たちは今、イスラム過激派により「裏切り者」と見なされ、命を狙われている。顔を隠し家族で引っ越しを繰り返す者、難民ボートでヨーロッパへ向かう途中で船が難破し妻と娘を失った者。人生の再建を図ろうとする元通訳者たちの不安と苦しみを描き、映画祭で数々の賞に輝いた作品。

引用:NHK

私が全く知らなかった米軍の現地通訳たちの物語をここに書き残しておきたい。

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アフガニスタンとイラクでは、5万人以上の現地通訳者が米軍と多国籍軍のために仕事をしてきた。

米軍に協力することで苦しい生活から抜け出せると考えた人も多かった。

しかし、アメリカ軍の通訳をよく思う人はいない。

米軍のために働いている限り常に目をつけられている。

テロリストに拘束され、処刑されるシーンが動画で配信されることもある。

タリバンの報道官ザビフラ・ムジャヒドはこんな話をしている。

『いかなる形であれ、米国や同盟国に協力する者はその一味と見なす。通訳者が、外国の軍隊の侵略行為を支えているなら、彼らは異教徒の協力者、わが国とイスラム教の敵である。われわれには法的にも倫理的にも彼らを殺害する権利がある。』

番組が取材したアフガニスタンの現地通訳者の一人マリクは、家族を守るため毎週居場所を変えていた。

彼は、米軍のバグラム空軍基地で働いている。

米軍基地の近くで育ち、基地でキャンディや水をもらい、米兵を家族のように思って生きてきた。

アフガニスタンが平和な国になるようにとアメリカ軍の手伝いをしたいと思ったという。

彼は2011年、米軍からナンバー1通訳にも選ばれ、メダルやたくさんの賞状をもらった。

そんなマリクでも、アメリカが発給する「特別移民ビザ」をもう4年近く待っているという。

「特別移民ビザ」とは、アメリカが、米軍とその契約企業のために働いたアフガニスタン人、イラク人を対象に創設したものだ。

ビザ申請の手続きは法律上9ヶ月以内に終えるのが原則だが、申請者の多くは何年も待たされている。

最終的に2017年、マリクは申請から6年目に特別移民ビザを取得した。

すぐに家財道具を売り払い出国便のチケットを買った。

トランプ政権が誕生しイスラム教徒のアメリカ入国が禁止されるとの噂が広まったが、彼は無事にアメリカに入国することができた。

ムシュタバは、アフガニスタンに駐留する米軍の通訳をし、その後アメリカの麻薬取締局に協力した。

タリバンの電話を盗聴していたという。

ムシュタバは、妻と3人の子供を守るため「特別移民ビザ」を申請することにした。

ムシュタバの場合も10ヶ月経っても何の連絡がなかった。

彼はビザを待たずに出国する決断をする。

妻は、彼だけ先に出国するよう言ったが彼は家族と離れたくなかった。

トルコのイスタンブールに着いて、ギリシャに密入国させてくれる斡旋業者を探した。

ところが乗ったボートは定員オーバーで、波を受けて一瞬で沈んでしまった。

長男を助けるのがやっとで、妻と2人の子供は行方不明のままだ。

彼と長男は救助されイスタンブールの難民キャンプに移送されたが、事故から2ヶ月後、皮肉にも特別移民ビザの申請が承認された。

2018年、ムシュタバ親子もようやくアメリカに到着した。

しかし、特別移民ビザを手にした通訳者はまだごく少数で、アメリカ軍が完全撤退した後、アフガンに残る通訳たちにどんな運命が待ち受けているのかとても心配である。

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番組の最後、現地通訳者の取材をしてきたジョージ・パッカーというジャーナリストのこんな言葉が流れる。

『アメリカは武力を行使して他国に侵入し、その国の政府を変え、文化さえも変えてしまいました。その理由がたとえ外交政策や安全保障上のことだったとしても責任は重大です。政治家にも一般のアメリカ人にも想像できないほどその責任は大きいのです。

米軍で働いた通訳者は私たちに最も近い存在です。それなのに、彼らは軽んじられ、存在しないかのように扱われている。私たちはもっと真摯に向き合うべきです。通訳者の中にはミッションの意義をアメリカ人以上に真剣に受け止めていた人もいるのです。

彼らが出国できることを祈るのみです。新しい国を築くという選択肢は彼らにはありません。安全な場所に移るしかないのです。』

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20年に及んだアフガニスタンでの戦争が果たして世界に何をもたらしたのか?

私もいつかカブールを訪れ、自分の目で確かめてみたいと思っている。

しかし、それがいつのことになるのかはわからない。

アメリカが去った後のアフガニスタンの治安がどうなるか、しばらく様子を見守るしかないだろう。

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ワクチン接種が進み、コロナ前の日常が戻ってきたアメリカ。

一時は死の街となっていたニューヨークやカリフォルニアでは、多くの人がマスクを外し、4日の独立記念日はきっと祝勝パーティーのようになるのだろう。

しかし冷静に見てみれば、今も全米で1日1万人の新規感染者が出ていて、人口の差を考えても第5波を心配する今の日本を超える感染状況なのである。

やはりアメリカは楽観的だ。

それとも日本人があまりに悲観的すぎるのか?

お隣・中国の覇権主義を恐れるあまり、アメリカに盲目的に追従する日本だが、アメリカも多くの問題を抱えている。

そのことをこのドキュメンタリー番組は改めて気づかせてくれた。

結局、自分の身は自分で守るしかない。

そんな当たり前のことを忘れると、いつか日本人は大きな代償を払うことになるだろう。

<吉祥寺残日録>ビンラディン殺害から10年!海外ドキュメンタリーが描く「テロとの戦い」への伏線 #210502

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