母のマンションで目覚めたのは、朝の6時ごろだった。
テレビをつけると、横綱白鵬引退のニュースが飛び込んできた。
まだ正式発表ではなく、関係者への取材として痛めている右膝の状態が改善しないため引退の意向を固めたという内容である。

前人未到の大記録を打ち立てた平成の大横綱には常に毀誉褒貶が付きまとった。
「横綱の品格」という理由で激しいバッシングにもさらされた。
しかし、モンゴルから異国の大相撲界に飛び込み、22歳で横綱に登り詰めたその相撲人生は大鵬や双葉山を超えるサクセスストーリーだと思う。
日刊スポーツに白鵬が残した主な記録が列挙されていた。
- 優勝回数 45回 歴代1位
- 全勝優勝 16回 歴代1位
- 通算勝利 1187勝 歴代1位
- 幕内通算勝利 1093勝 歴代1位
- 横綱通算勝利 899勝 歴代1位
- 横綱在位 84場所 歴代1位
- 横綱出場 1019回 歴代1位
- 横綱連続出場 722回 歴代1位
- 連続2桁勝利 51場所 歴代1位
- 年間最多賞 10回 歴代1位
- 連続勝利 63勝 歴代2位
すごい記録である。
大鵬の優勝回数は誰にも抜けないと言われていたが、白鵬はその不滅の記録を塗り替えた後も勝ち続けた。

進退をかけて臨んだ今年の名古屋場所。
場所前の予想を完全に裏切って千秋楽で照ノ富士との全勝対決を制し、見事な復活劇を演じた。
照ノ富士を土俵に沈めて鬼の形相を見せる白鵬の姿には、ほかの力士にはない凄みがあふれていた。
本来、相撲というのは格闘技である。
やるかやられるか、肉体と肉体の勝負なのだ。
大型化した今の時代、白鵬は決して大型力士ではない。
しかし、そのスピードと技の切れ味、そして気迫。
私たちは、大鵬を超える伝説の力士をリアルタイムで見てきたのだ。
もし白鵬が日本人だったら、その人気は凄まじいものだっただろう。
まずは、大横綱白鵬に「お疲れ様」の言葉を贈りたいと思う。

名古屋場所で白鵬に苦杯をなめた照ノ富士は、新横綱として見事に優勝を飾った。
新横綱の優勝は9人目の快挙で、あの白鵬も達成できなかった。
それにしても今場所は全く盛り上がりに欠けた。
白鵬がいないだけでなく、大関貴景勝は初日から3連敗、同じく正代もコロコロと負けて、かろうじて平幕の妙義龍や阿武咲、遠藤が照ノ富士について行ったがハラハラする展開には最後までならなかった。
白鵬が引退し、今後の大相撲がちょっと心配である。
しかし早起きしてテレビをつけたのは、この人の活躍を見たかったからだ。
エンゼルスの大谷翔平。
今日はピッチャーとして10勝目を目指し、勝てば103年ぶりとなる10勝10ホームランの大記録を達成することになる。
この日も大谷は安定していて、6回までマリナーズを無得点に抑え勝利投手の権利を確保していた。
しかしエンゼルス打線は今日も爆発せず、相棒の捕手カート・スズキのソロホームランによる1点のみ。
リリーフ陣も全く頼りにならないため、大谷は7回もマウンドに上がった。
しかし1アウト後の失投で痛恨のソロホームランを許し、同点に追いつかれる。
それでも後続を160キロのストレートで三振に切って取り、この日も10奪三振。
135年ぶり5人目となる「シーズン150奪三振150塁打」の大記録を達成した。
しかし、ホーム最終戦での10勝目達成はならず、案の定リリーフピッチャーが打たれて、終わってみれば1−5。
100球を超える大谷の熱投も、味方の貧打と最低のリリーフ陣により報われずに終わった。
それでも今シーズンの大谷は、ホームゲームでの先発試合の成績が6勝0敗、防御率1.95という驚異的なもので、シーズン防御率2.00以下という数字を残したピッチャーというのは大リーグの歴史でも数えるほどしかいないのだそうだ。
打者としても超一流、そしてピッチャーとしても超一流なのだが、いかんせんエンゼルスというチームにいては勝利がするりと手の中からすり抜けていってしまうのだ。
ベーブルースに並ぶ「二桁勝利二桁ホームラン」の記録は、今シーズン最終戦に持ち越される予想だ。
頑張れ!大谷翔平。

しかし、夕方のニュースで注目が集まったのは、白鵬でも照ノ富士でも大谷翔平でもなく、この人だった。
秋篠宮家の眞子さまとの結婚が内定している小室圭さん。
ニューヨークの一流法律事務所への就職が決まり、眞子さまと結婚するために成田空港に帰ってきたのだ。
テレビはそんな圭くんの一挙手一投足をライブ中継する。
おいおい、オレは全然興味ないんだけど・・・。

ワイドショーは圭くんが乗った飛行機が成田空港に着陸するシーンを延々と中継している。
「速報 小室圭さん乗る飛行機着陸」
なんという見出しだろう。
圭くんの母親の借金問題が原因で、国民の多くは眞子さまの結婚に反対なのだという。
親である秋篠宮さまも1年前に結婚を認めるとはっきり述べたのに、週刊誌を中心にバッシングが止まず、結局眞子さまは結婚にまつわる一連の皇室行事を行わず、皇族を離脱する際に受け取るはずの一時金も辞退することになった。
なぜ、そんな大問題になってしまうのか私には全く理解できない。
圭くんに問題があるのならいざ知らず、母親の借金問題でここまで世間がバッシングすることが許されるのだろうか?
私にはそのことの方が遥かに気持ち悪い。
圭くんが皇室に加わるというのならまだ分かるが、眞子さまが皇室を出ていかれるのだから、静かに見守ればいいのではないだろうか。
圭くんの成田空港到着の中継映像を見ながら、自殺したダイアナ妃を追いかけるパパラッチを思い起こした。
悲劇が起きなければいいがと、元テレビマンとしては憂鬱な気持ちになったのだ。

テレビということでいえば、いよいよ10月の改編期である。
この秋の一番の注目といえば、TBSの朝番組「THE TIME,」だろう。
当代きっての人気アナウンサー安住紳一郎がついに帯番組のメインを務める。
各局の情報番組がしのぎを削る激戦区の朝、視聴習慣が強くチャンネルを変えさせるのが難しいと言われる時間帯だが、安住アナの参入は勢力図を大きく塗り替える可能性がある。
ただ、帯番組の視聴率を上げるのは時間がかかるというのが業界の常識であり、安住アナとはいえ、容易な戦いではないだろう。
注目されるスタート時点で視聴者の期待感をつなぎとめることができるかどうかが勝敗の行方を左右する。

安住アナが朝番組を始める影響で、金曜夜の長寿番組「ぴったんこカンカン」が先週で18年半の歴史に幕を下ろした。
別にどうということもない番組なのに、なぜかついつい見てしまうそんな番組だった。
最終回の世帯視聴率は14.1%。
栄枯盛衰の激しいゴールデン帯で18年経ってこの数字は立派なもの。
内容はほとんどが番宣なので、ひとえに安住アナのアドリブ力で維持された驚異の人気番組なのだ。
果たして安住アナがどんな地殻変動を引き起こすのか、長年その場で働いてきた元テレビマンとして興味津々である。