<吉祥寺残日録>最年少!藤井二冠誕生とコロナ禍の18歳 #200821

もはや、何の驚きもない。

藤井聡太棋聖が木村一基王位に挑戦した王位戦七番勝負の第4局。藤井棋聖がじりじりと木村王位を追い詰め投了に追い込んだ。

藤井棋聖は4連勝で王位のタイトルも獲得し、18歳1ヶ月で二冠を達成した。

10代での二冠達成は初めてのことで、羽生さんが持っていた最年少二冠の記録をあっさり塗り替えたのだ。

同時に八段への昇格も果たし、こちらは加藤一二三さんの最年少記録を62年ぶりに更新した。

強いだけではなく誰からも愛されるスーパー高校生。

しかし、誰もがこの結果を予想していただろう。

先日は現役最強と言われる渡辺明三冠を破って棋聖のタイトルを奪取したのだから、すでに藤井二冠が最強の棋士の一人であることは疑いようもない。

もはや藤井くんが勝つのはニュースではなく、負けたらニュースになるレベルなのだろう。

藤井二冠は「AI将棋の旗手」と見做されることが多い。

私のような素人には将棋盤を眺めてどちらが有利なのかさっぱり判断ができないが、最近の将棋中継ではAIが局面ごとにどちらが優勢なのかをパーセンテージで示してくれ、さらに次に差すべき最良の一手まで画面に表示してくれる。

そして、藤井くんはAIが最良とみなした一手を着実に打ってくる。

今回の対局でも、初日の夕方藤井くんが書いた「封じ手」が翌朝開示され、将棋ファンがどよめいたらしい。普通の棋士ならまず指さない一手が書かれていた。しかし、それはAIが導き出した「最良の一手」と一致していたのだ。

AIが現役の名人に勝利したのが2017年。

将棋のような指せる手が有限なゲームでは、もはや人間はAIに勝てないという時代になったのだろう。

そして、藤井二冠は人間の中では最もAIに近い存在なのだ。

藤井二冠は今後も次々にタイトルを獲得していくだろうが、個人的には八冠達成以上にいつの日にはAIに勝って欲しいと願ってやまない。

さらに、藤井くんに刺激を受けた若い世代から藤井くんを超えるような棋士が現れることも楽しみにしている。

それにしても、たった一人スーパースターが現れるだけで、地味な将棋にここまで国民の関心が集まるのだから、本当にすごい18歳である。

そんな藤井二冠の快進撃に合わせて、今日は藤井くんの同世代について少し書いておきたい。

新型コロナが夏にも猛威を奮っているため、夏の風物詩である高校野球甲子園大会が中止された。

春のセンバツも中止、そして夏も・・・。

甲子園を目指し厳しい練習に耐えてきた高校球児たちには本当に同情を禁じ得ない。

関係者が知恵を絞って、センバツの出場予定校を甲子園に招き、各校1試合ずつの交流戦が行われたのはせめてもの救いだった。

でもそれは野球をやっている高校生たちだけではない。

他のスポーツや文化サークルに所属するすべての高校生が味わっている前例のない喪失感であろう。

自分たちの頑張った成果を発表する場がないのだ。

しかも、春に諦め次の目標に心を切り替えて頑張っていると、その次の目標もすうっと消えてなくなってしまう。

怒りをぶつける相手もいない虚しさを高校生たちはどのように消化しているのだろう。

60歳にもなれば、今年できなくても来年でも再来年でもいいと思える。

しかし、18歳の夏は一生で一度しかないのだ。

コロナの感染が広がると、「若者たちの無自覚な行動が原因」などと若者を非難する論調があふれた。

しかし、自分の若い頃のことを思い出せと言いたい。

高校最後の夏は二度と来ない。

その時の仲間たちと楽しい思い出を作りたいという気持ちは誰もが抱いただろう。

まるで、戦時中の若者たちのようだ。

お国のためにやりたいことは我慢しなければならない。

頭では理解できても、それでなくても多感な時期、気持ちの整理は難しかっただろう。

プロを目指すような選手たちにとっては、スカウトにアピールする場が失われ、ひょっとするとコロナによって人生が大きく変わる高校生もいるかもしれない。

でも、若者たちには多様な選択肢がある。

この苦難を乗り越えて、自分の人生を精一杯生きてもらいたい。

18歳といえば、すでに大学に進学している人もいるだろう。

多くの大学ではすべての授業をオンラインで実施していて、入学したものの一度も大学に通ったことがないという1年生もいるようだ。

吉祥寺にある成蹊大学や東京女子大学もずっと門を閉ざしていてほとんど人影はない。

私にとって大学時代というのは人生で最も楽しかった時期だが、ほとんど授業には出たことがない。

それでもキャンパスには毎日通っていた。

大学時代とは、持て余すほどの時間を仲間たちと共有し、馬鹿なことも含めてやりたいと思ったことを実現できる貴重な時間だった。

今の大学生はその機会を奪われてしまっている。

今時の大学生は真面目に授業に出席して親のもとに出席状況や成績が送られてくるそうだが、何よりも大切なのは自分の頭で考える習慣を学生時代に身につけることだと私は考えている。

そのためには、いろんな仲間と議論し、自分とは違う多様な価値観の人間と付き合う術を身につける必要がある。

果たしてオンラインでそんなことができるのだろうか?

すでに大学生活が軌道に乗っている2年生以上の学生はキャンパスの外でも工夫次第でいろんな活動ができるだろうが、1年生はちょっとかわいそうな気がする。

高校生も大学生も、藤井くんの同年代の若者たちがコロナ禍を経験してどんな大人になっていくのかは、とても気に掛かる。

ただ、自分ではどうしようもない理不尽な状況を若い時に経験したことは決して無駄にはならないだろう。

自分の心をコントロールする術が知らないうちに身についているかもしれない。

そして何より、オンラインで何でもできる新しい世代が社会に生み出されていくことだろう。

その世代が社会で力を持つ時代には、満員電車などという無駄な現象が世の中からなくなっているかもしれない。

コロナ禍の18歳は、確実に社会を変える。

還暦をすぎ社会の一線から退いた人間として、苦難に直面する若者たちをいたずらに非難するのではなく、彼らが生み出す未来に期待し、若者たちを応援するオヤジでありたいと思っている。

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