当然といえば当然だが、オフシーズンに入ったメジャーリーグで再び大谷翔平に注目が集まっている。

今シーズン、投打の二刀流で大活躍した大谷翔平。
彼が成し遂げた偉業は、野球ファンだけでなく、同じメジャーで活躍するスーパースターたちをも唸らせた。
選手間投票による今季の各賞が28日発表され、投打の「二刀流」で大活躍したエンゼルスの大谷翔平が日本選手で初めて年間最優秀選手「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのだ。
ア・リーグ最優秀野手にも選ばれてダブル受賞を果たした。
さらに26日には、メジャーでは7年ぶりとなるコミッショナー特別表彰も受けた。
表彰は歴史的な偉業を達成した選手やチームなどが対象で、1998年が第1回。日本選手では2004年に262安打で年間最多安打記録を樹立したマリナーズのイチロー以来(表彰は05年)。メジャーでは14年に現役引退したヤンキースの主将ジーター以来の選出となった。ロブ・マンフレッド・コミッショナーは「あまりにも特別だったので、たたえる必要があると思った」と理由を述べた。
引用:日本経済新聞
「あまりにも特別だった」という受賞理由は、大谷の今シーズンの活躍がメジャーの長い歴史の中でも特筆すべきものだったことの証だ。
そして、メジャーリーガー最高の栄誉であるMVPの発表は11月18日に予定されていて、こちらも大谷翔平は最有力候補である。
MVPは全米野球記者協会会員30人の投票で決まり、選出されれば日本選手では2001年のマリナーズのイチロー以来、20年ぶり。
このほか11月には、打撃ベストナインに相当する「シルバースラッガー賞」、両リーグで傑出した打者を選ぶ「ハンク・アーロン賞」、最も活躍した指名打者への「エドガー・マルティネス賞」も発表予定で、文字通りの「賞タイム」が予想されている。

そんな中、先日アメリカでの大谷翔平に密着したNHKスペシャルが放送された。
「メジャーリーガー大谷翔平 2021超進化を語る」
メジャーデビューからケガで苦しんだ期間、そして今年の大ブレークまで節目節目の大谷を取材していた。
彼の活躍については今更驚くこともないが、その舞台裏ではいくつかの発見があった。

まずその1つは、あまりテレビで見ることのない大谷翔平の父親が取材に応じていたことだ。
大谷翔平が野球を始めた小学校3年の時、最初の指導者が父親の徹さんだった。
社会人野球の選手だった徹さんは、息子との間で交換ノートを始める。
大谷は試合のたびにその日の反省をノートに書き残し、徹さんは具体的なアドバイスを返した。
徹さんが繰り返し教え込んだのが、3つの「一生懸命」だった。
「一生懸命元気に声を出す」
「一生懸命キャッチボールをする」
「一生懸命走る」
「3つのポイントをしっかりやれ。本当にしっかり一生懸命にやれば必ずよいことがある」
大谷翔平は、今も父の教えを忠実に守っていたのだ。

2018年、1年目のオフシーズン。
損傷した右肘のじん帯を手術し、腕の曲げ伸ばしさえ満足にできない状態だった。
2019年にはバッター、ところが今度は左膝に痛みを抱え、シーズン途中で手術に踏み切った。
2020年は打率1割台、投手としては1勝もあげられなかった。
しかし大谷は、故障で試合に出られない時、徹底的な下半身強化に取り組んだ。
これがメジャーの強打者たちが取り入れてきた「アッパースイング」につながっていく。
そして今シーズンの前半戦、「バレルゾーン」率でメジャートップの成績を収めた。
「バレルゾーン」とは、最も長打になりやすい打球の速度と角度を組み合わせた指標のことで、これがホームランを量産できた理由だという。
しかし「バレルゾーン」で打球を打つためには日本人離れした下半身の強靭な筋肉が必要だ。
故障に苦しんだ3年間、「一生懸命」取り組んだ筋トレがメジャートップクラスの打撃フォームを大谷に与えたのである。

そしてピッチャー大谷は課題だったコントロールを良くするために、今シーズンからユニークなトレーニングを取り入れた。
それは、いろいろな重さのボールを投げるトレーニング。
一番重いボールは、試合球の10倍以上の2キロもある。
壁に向かったさまざまな重さのボールを投げて、投球動作の感覚を磨くことで、安定したフォームが身につくのだという。
シーズンに入った後も、毎日のようにこのトレーニングを黙々と続けていた。
大谷はこのトレーニングについてこう語っている。
「1回2回やったからといって、すぐによくなるというものではないので、長い間続けていって、違いに気づいたりとか、もっとこうすればうまく投げられるな、というのを、ちょっとずつ気づくものかなとは思います。続けてやるというのは大事だと思います」
「制球に関しては、ほぼほぼメカニックの部分だと思っているので、正しい動作で投げられるかどうかが、一番かなと思っています。そこが整ってきていると思います」
引用:NHK
さらに、長いイニングを投げられるようにカットボールを取り入れて打たせて取る投球術を磨いていった。
「1番バッターから最後のバッターまで100%でいけるというイメージは、まだ今シーズンなかったので、抜くとこ、入れるところを、しっかりメリハリつけないと。1試合1試合いろいろ試しながら、何がいいのか、悪いのかというのを毎回毎回、試して反省してというのを繰り返すことで、だんだんよくなっていくものかなと思うので。そういうのが後半に向けて、ちょっとずつですけど、改善されてよくなったと思います」
引用:NHK
確かにシーズン当初に比べて後半の大谷はフォアボールの数が圧倒的に少なくなった。

そしてもう1つ面白かったのは、大谷の疲労回復術だった。
これは私もずっと不思議に思っていたのだが、それはズバリ長時間寝ることらしい。
通訳として大谷に常に寄り添っている水原さんが明かす。
「平均、最低でも8時間半とか9時間は寝るようにはしていたとは思いますね。睡眠の質とか時間を測るモニターバンドがあるんですけど、それで睡眠時間とか管理しながら、できるだけ多く寝るっていうのがカギだったと思います」
引用:NHK
やはり睡眠は何より重要なのである。
ホームラン王のタイトルやベーブルース以来となる10勝10ホームランの大記録が期待されたシーズン後半、相手チームからは厳しいコースを攻められ、さらには敬遠の多用もあって大谷は苦戦した。
しかし、大谷はこれもいい経験だったと語った。
「なかなか新鮮でしたね。メジャーリーグでそういう経験ができるとは、正直思っていなかったので、いい経験になりましたね。枠の近辺にくるということは、判断をするボールが多くなるので、単純に甘い球が多い打席よりもバッターとしてのスキルアップになった」
「1打席1打席終わりながら、今のはダメだったな、ここが良かったなとか、毎日発見がありますし、こう変えればいいのかなって、考えている時間はすごく好きですね。どういう攻めをされても、基本的には枠の中に入ってきたボールを振るというのが、それが難しいんですけど、自分が打てるボールを選択して振る。シンプルですけど、なかなかできないことを1年間継続するのがバッターなので」
引用:NHK
大谷にとっては全てが経験であり、高いレベルであればあるほどそれに打ち勝つ喜びを感じるようだ。
父親の徹さんから教えられた日々の反省と一生懸命努力すること、そして野球を楽しむことを大谷翔平は貫いている。
そして、来年の話を聞かれると、大谷翔平は迷わずこう答えたのだ。
「ことしの数字が、やっぱり最低ラインじゃないかなとは思いますね。ことしできたことが、来年できないということは、もちろんなくしたいと思ってます」
引用:NHK
「今年の数字が最低ライン」、なかなか言えるセリフではないだろう。
この男、果たしてどこまで進化するのだろう?
来年が今から待ち遠しい。
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