<吉祥寺残日録>総会は無事終了したものの、築50年マンションの未来図はいまだ不透明なまま #220618

今日は私が暮らすマンションで定期総会が開かれた。

この1年、理事として築50年のヴィンテージマンションをどのように耐震化していくのか、他の住民の人たちと話し合ってきて、少しだけ方向性がはっきりしてきた気がする。

選択肢は4つ。

①耐震工事を行う、②建て替える、③フルリノベーションを行う、④何もしない。

この4つの選択肢のどれを選ぶにしても、それぞれ具体的な金額がわからなければ判断のしようがないため、今回の総会では、武蔵野市の補助金をもらって耐震設計を行うことを提案し、了承された。

ザクッとした概算では、建て替えの場合、耐震工事の10〜15倍の費用がかかるという。

1戸あたり耐震工事なら数百万、建て替えならば数千万円の費用負担が発生する計算だ。

最近引っ越してきた若い人たちには建て替えを求める人も多いようだが、古いマンションなので新築当時から住み続けている高齢者も多い。

建て替えとなれば、1戸あたり数千万円単位の負担とともに、数年間別の場所に移り住まなければならない。

「このまま静かに暮らしたい」というのが高齢の住民の本音で、マンション全体で意思の統一を図るのは至難の業だろう。

もちろん建て替えになれば資産価値が大きく上がるため、私もそれでまとまるなら異論はないが、住民の5分の4の同意を得るのは現状難しいと思っているので、早期に耐震工事を行なうというのが現実的なオプションなのかなと考えている。

耐震工事を行うだけでも資産価値は上がるし、何より住んでいて安心感が違うはずだ。

とりあえず私の理事としての任期は今日で終わったので、今後の検討は次の理事会の皆さんに委ねられる。

たとえどんな結論になろうが、私は反対する気はない。

もし自分の意に沿わなければ、引っ越せばいいだけの話だからだ。

しかし私のように気楽に引っ越しを考える人ばかりではない。

このマンションが気に入って、新築で購入したまま50年以上ここに住み続けている人、さらにこのマンションで生まれ一度も他の場所で暮らした経験のない子供世代も育っている。

家はその人の人生設計の土台であり、安易に妥協できるものではない。

大地震の不安を抱えながらも中古マンションの建て替えが進まない理由もそこにある。

国土交通省によると、マンションに住む人は2020年末時点で1573万人と推計されている。

そのうち築40年を超える物件は20年時点で103万3千戸あり、これが2040年には3.9倍の404万6千戸にまで増える見通しだという。

築40年超のマンションというのは、いわゆる旧耐震の基準で建てられているものが大半だ。

それが100万戸もあるというのは、ちょっと驚く数字でもある。

一つのマンションに100人が暮らしていたら、それだけで1億人になってしまうので、どうしてそんな数になるのか理解に苦しむが、吉祥寺を見回す限り、老朽化したマンションが目につくのは事実だ。

古いマンションは一般的に立地条件がいい。

だから古くなっても一定のニーズはあるのだが、後から行政の規制が強化され「既存不適格」とされる物件も多く、乱開発と場当たり的な不動産行政のつけがこうしたマンションに象徴的に現れることになる。

コロナバブルの影響もあり、首都圏の新築マンションの平均価格はバブル期を超えて過去最高となった。

それに伴い中古マンションの価格上昇も続いていて、私の住んでいるマンションもジリジリと売り出し価格が上昇しているのを感じている。

首都圏の中古マンション平均希望売り出し価格は12ヶ月連続で上昇していて、4月には1都3県の平均が70平米換算で4688万円、東京23区だけ見ると6795万円にもなっているという。

マンションの転売を考えている人にとっては良い傾向なのだろうが、ただ住んでいる住人からすれば固定資産税が上がるぐらいでメリットはあまりないだろう。

もしこれが中国だったら、政府の鶴の一声で住民が一斉に強制移住を強いられるのだろうが、ここは日本、そしてマンションは私有財産の最たるものだから政府も迂闊に手出しができないのだ。

老いる日本の象徴のように増え続ける老朽化したマンション群。

この問題の重要性が本当に意識されるのは、いつか必ずやってくる首都直下地震の後なのかもしれない。

安全を取るか、コストを取るか、それとも現在の安定を取るか?

これは結局、個人個人の価値観の問題に行きつく以上、きっと「自己責任」でしか解決できない問題なのだと痛感した理事会での1年だった。

<吉祥寺残日録>マンション理事会とキャリーバッグ #210629

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