森と文明

8月9日から18日まで、妻と二人でカナダに旅行した。

避暑というにはいささか寒すぎた日もあったけど、初めてのカナダも楽しかった。改めてエッセイでも書きたいと思うのだが、果たして実現できるかどうか。

(注)後日、旅行記をまとめました。こちらからご覧ください。

img_0444

せっかくカナディアンロッキーまで行くので、図書館でちくま新書の安田喜憲著「森と文明の物語・環境考古学は語る」という本を借りた。

時差ボケがひどくてあまり本を読む気力が湧かなかったが、帰りの飛行機などでパラパラとめくった。

著者の安田氏は国際日本文化研究センター教授で、環境考古学を提唱している。本の中から、気になった部分をまとめてみた。

古代の地層の中に埋もれた花粉化石を研究している。花粉は、「スポロポレニン」とよばれる科学的に大変強い化合物で構成された膜を持っていて、酸化分解やオゾンの影響を受けない湖底や湿原のようなところに落下すると何百万年でも腐らないで残る。どんな種類の花粉がどれくらい含まれているかを見ることによって、過去の森の変遷の様子を復元できる。花粉は、森の歴史の語り部なのだ。

レバノンスギの話から始まって、文明の発展とともに失われていく森林の歴史を世界各地に取材した本だ。

たとえばギリシャ文明の象徴とされるオリーブの木。この木はやせた土地にも育つという。大昔、材木は今では考えられないような資源だった。建物を建てるのにも、船を造るのにも、棺を作るのにも、木材は欠かせない。豊かな森林資源を持つ国は栄え、森を切り尽くした文明は滅んでいった。森を消費し尽くしたギリシャ。森が消えた大地はやせてオリーブしか育たなくなった。森と文明の関係についてこれまで考えたこともなかった。

img_0459

そして世界規模で森の破壊の歴史を辿ったうえで、日本の森の話に終着する。世界でも特筆すべき縄文文化についてである。

「世界最古の土器は日本から見つかっている。長崎県福井洞穴遺跡から見つかった隆起線文土器、同じく長崎県泉福寺洞穴遺跡の豆粒文土器が世界最古とされている。その年代は1万3000年前である。」

知らなかった。1万3000年前の世界最古の土器が日本で発見されていたのだ。

「世界最古の土器が誕生する時代が、ちょうど日本列島が大陸から孤立し、大陸とは異なった海洋的風土に適したブナの森が拡大する時代に相当しているのである。この最古の土器文化こそ、その後1万年以上にわたって日本文化の基層を形成する森の文化の原点なのだ。日本列島人は新たに出現した温帯の森の生態系を自らの生活系に巧みに取り入れ、永続的・普遍的な生活様式を世界に先駆けていち早く確立した」

「日本の縄文時代には、富と権力を集中させる巨大な王が出現しなかった。縄文人は富が一部の人々にのみ集中することを回避する、富の再配分システムを持っていた。そして社会的緊張を緩和するため、呪術や儀礼を発達させた。縄文人が平和で安定した社会を一万年以上にわたって維持しえたのは、自然との共生と平等主義に立脚した社会システムを持っていたからにほかならない。共生と循環、そして平等主義こそが森の文化の根本原理なのである。」

学校でもほとんど教えてもらわなかった縄文時代。文字を持たなかったため、世界から取り残された未開の石器時代というイメージだったが、最近の研究で見方が変わってきている。

山や森に関わって生きていくには、縄文文化について知る必要がある。俄に興味がわいてきた。

コメントを残す