南京総統府

南京旅行のリポート第12弾。中国近代史の舞台となった総統府だ。

地鉄2号線「大行宮駅」から歩いて行く。

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駅を出ると、スターバックスの入った小洒落た飲食街がある。この交差点を右折するとすぐに総統府の長い塀が現れる。

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塀に沿って並ぶ街路樹は木陰を広げるためか、枝を無理やり矯正されていた。南京ではこういう木々をよく見た。日本とは違う感性を感じる。

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チケット売り場は人がひしめいていた。大きな中国語が飛び交う。

入場料は45元。六朝博物館とのセット券60元も売られているので、「45元」と書かれた文字を指差しながら紙幣を差し出すと、無事に総統府だけのチケットが買えた。

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この場所には明代から様々な役所が置かれたが、歴史上注目されるのは、清朝末期1853年の太平天国の乱からだ。そして1912年、孫文がここで中華民国臨時大統領に就任した。つまり、中華民国「建国の地」ということになる。

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中に入ると、ここにも孫文の「天下為公」の額がかけられている。ここからまっすぐに廊下が続いている。

この施設の難点は、日本語の案内がまったくないことだ。説明は中国語と英語。それも所々にしかないので、あまり理解できない。「南京大虐殺博物館」の詳細な説明とは対照的だ。

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特に順路を指定されないので、人が少ない方へ適当に進む。

「洪秀全の天朝宮殿」と漢字の案内でも多少のことはわかる。洪秀全は太平天国の乱の指導者で、南京を天京と改称し、この場所を天王府として活動の拠点とした。

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洪秀全は夢のお告げでキリスト教に目覚め、自らをキリストの弟と位置づけ、儒教や仏教の廟を破壊した。アヘン戦争で弱体化した清朝と戦い、10年あまりに渡って南京を根拠地に太平天国の王朝を打ち立てた。

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洪秀全が使った玉座。

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洪秀全はこの部屋で大臣たちと謁見したらしい。

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こちらは洪秀全の執務室だ。

ただ、太平天国の乱について知識がないので、興味の持ちどころが難しい。

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竹の植えられた通路を抜けると・・・

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庭園に出た。

「煦園(くえん)」は明代に築かれた600年の歴史を持つ庭園だという。今では高層ビルが借景となった。

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総統府の中央の建物に戻ると、総統府の客間。1946年、ここで国民党と共産党の会議が開かれた、と案内板には書かれている。

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こちらは外国使節と面会した部屋だという。

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そして蒋介石の執務室だ。

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その蒋介石と宋美齢の結婚写真。宋美齢の姉の宋慶齢は孫文の妻だった。

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宋美齢は蒋介石の決定を左右したほか、英語力を生かして国際政治の世界で活躍、日中戦争や国共内戦に帰趨にも強い影響を及ぼした。

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そして孫文が寝起きしたという居室も残されていた。

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全体に質素な部屋だった。

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ここにも「天下為公」の額が掲げられていた。

もう一つの額には「知難行易」。「行動することより知ることの方が難しい」という意味だそうだ。この場合の「知る」は単に書物から知識を得ることではなく、経験から学ぶこと。すなわち「失敗」でも経験することで「知る」ことにつながるということらしい。

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孫文の執務室。

1921年1月1日、孫文を臨時大統領として中華民国の建国が宣言された。しかし、2月には清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀が退位し、袁世凱が大総統に就任。首都も北京に移される。めまぐるしい中国近代史。革命と侵略と戦争。激しい権力闘争と群雄割拠の中を孫文は泳ぎ、革命成就の夢を果たせぬまま死んだ。

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総統府に立つ孫文の銅像も、そんな激動の人生とはまったく無縁のように、今では人々が群がる記念撮影スポットになっていた。

これで一回りしたと思い出口を出たところに、もう一つ銅像が立っていた。

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林則徐の銅像だ。

林則徐と聞いてすぐ理解できる人は、かなりの中国通だ。私も高校時代、世界史が得意だったので、記憶したことのある名前だったが誰だか思い出すことはできなかった。

林則徐は19世紀初めに活躍した役人で、アヘンを厳しく取り締まったことで知られる。彼が密輸されたアヘンを没収処分したことをきっかけに、1840年イギリスとの間でアヘン戦争が起き、林則徐は更迭された。

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「過去の屈辱を忘れてはならない」と題して、アヘン戦争関連の展示がされていた。

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アヘンに溺れる辮髪の男たち。

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阿片窟の様子が人形で再現されている。ただ、総統府を見たほとんどの客はこの展示を素通りし、中に入って見物する人の数は少ない。

中国の歴史に関心がある人には楽しく、そうでない人には退屈な施設、それが総統府だ。

「地球の歩き方」のオススメ度は星3つ、私のオススメ度は歴史好きには星3つ、そうでない人には星1つだ。

 

<参考情報>

私がよく利用する予約サイトのリンクを貼っておきます。

 

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