インドネシア

新年早々、ヘビーな映画を観た。

朝昼兼用のおせちを食べた後、息子がNETFLIXで知らない映画を見始めた。「アウト・オブ・キリング」というドキュメンタリー映画だという。

何の予備知識もなく、見るともなく見ていたら、これがとんでもない映画なのだ。

イギリス・デンマーク・ノルウェイの共同制作というこの映画は、インドネシアで起きた大虐殺事件をテーマにしている。私もあまり知識がなかったが、デヴィ夫人の夫であったスカルノ大統領が失脚し、軍事クーデターによりスハルト大統領が誕生した1965年以降のインドネシアでは、恐怖の共産党員狩りが行なわれた。映画の公式サイトの説明を引用する。

『この映画は、1965年9月30日深夜にインドネシアで発生し、この国のその後の運命はもちろんのこと、国際関係にも大きな変化をもたらした、いわゆる「9・30事件」後の大虐殺を描いたドキュメンタリーである。これは大統領親衛隊の一部が、陸軍トップの6人将軍を誘拐・殺害し、革命評議会を設立したが直ちに粉砕されたというクーデター未遂事件であるが、それだけでは終わらず、未曾有の大混乱をインドネシア社会に呼び起こした。9・30事件そのものは未だにその真相が明らかになっておらず、陸軍内部の権力争いという説も強いが、当時クーデター部隊を粉砕し事態の収拾にあたり、その後第二代の大統領になったスハルト少将らは、背後で事件を操っていたのは共産党だとして非難し、それに続く一、二年間にインドネシア各地で、100万とも200万ともいわれる共産党関係者を虐殺したのである。そしてそれに対して、日本や西側諸国は何ら批判の声を上げることなく口をつぐんだのであった。 それまで、容共的なスカルノ大統領のもとでインドネシア共産党は350万人もの党員と、傘下に多くの大衆団体をかかえる有力な政治勢力のひとつであった。しかしかねてからそれを快く思っていなかった陸軍はその力を削ぐ機会を伺っており、この9月30日の事件を口実にそれに乗り出したものである。とはいえ、当時共産党は合法政党であったから、国軍が前面に出るのではなく、イスラーム勢力やならず者など反共の民間勢力を扇動し、密かに彼らに武器を渡して殺害させたのである。ごく普通の民間人が武器を握らされ、国軍からにわか仕立ての訓練を受けて殺害に手を染めた。イデオロギーの違いから近隣の者はおろか肉親にさえ手をくださねばならない場合もあった。スハルトによる新体制が確立した後の1973年に、この一連の虐殺の中で共産主義者の命を奪ったものに対しては法的制裁が課されないことが検事総長によって正式に決定されたが、その記憶は多くの人にとってトラウマとなって残っている』

そして、この映画のすごいのは、実際に虐殺を行なった実行犯たちに当時の再現をさせているのだ。

針金を首に巻き付けて思い切りひく。華僑を片っ端から殺す。政権の後ろ盾を得て、大量殺人を主導した民兵組織。犯罪の罰を受けることもなく今も普通に暮らしている。

私も1980年代のインドネシアを取材したことがある。インドネシアは取材ビザの取得が非常に難しい国だった。総選挙の取材をした際には、危険だからということで武装したガードマンを雇う異常な取材だった。当時はスハルト軍事政権の時代。この映画が描こうとした恐怖で反対派を押さえ込んでいた時代だった。

政権がヤクザのような人たちを利用するというのは、発展途上国ではよく見る構造だ。まだ民主主義が根付いていない発展途上国では、理想主義では政治は動かない。強い力が国を率いるのに不可欠だ。それを末端で担うのがこうしたヤクザのような暴力組織だ。

彼らの行動は粗野で非論理的。理不尽な要求を拒否すると暴力にさらされる。そんな輩が我が物顔で闊歩する社会を想像するとゾッとする。

ドゥテルテ大統領が支配するフィリピンもかつてのインドネシアと同じことが起きているのだろうか。しかし、フィリピンの場合は警察がヤクザを殺している構図。違うと言えば違うが、似ていると言えば似ている。

アジアの国々にも公正で安全な社会が築かれることを祈りたいものだ。

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