後輩の手術

大学時代の後輩が足を切断した。

病名は、下肢閉塞性動脈硬化症。右足にひび割れなどの症状が現れたのは最初で、数ヶ月のうちに足の裏が壊死してしまったという。

原因は、よくわからない。

彼は6年前ごろから人工透析を受けていて、体のあちらこちらに影響が出てきているらしい。

 

昨日の午後、彼が入院している武蔵野赤十字病院を見舞った。

吉祥寺「プレスキルショコラトリー」の板チョコと「青山フラワーマーケット」の小さなブーケ、そして五木寛之さんの「林住期」をアマゾンで買って持っていった。

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彼の病室は4人部屋だった。

カーテンを開けると、彼は嬉しそうに微笑んだ。右足は膝から下がなく、包帯が巻かれている。少しやつれてはいたが、予想したよりも元気そうで安心した。

部屋で話すのはうるさいということで、会話室に移動する。まだ慣れない仕草で車椅子に乗るのを待って、私が車椅子を押した。

 

大学を卒業してもう40年近くなる。彼とは時々会ってはいたが、足を切断するという話を伝え聞いたのは手術の直前だった。

話を聞くと、自分の足を切るという決断に至るまで、すごい葛藤があったという。病院もいくつも回ったらしい。途中で、心筋梗塞も発症し、救急車で病院に駆け込んだこともあったそうだ。痛みは日に日に強くなり、最終的に足の切断が最善の選択だと本人も判断した。

手術前には痛みで夜も寝られなかったという。今は、夜に痛みで目が覚めることはないそうだ。その代わり、厄介なことがあると彼は話してくれた。

それが、「幻肢痛(げんしつう)」。

四肢を切断した患者が感じる「あるはずもない手や足が痛みだす」という症状だ。

足を切断しても、脳はすぐにはリセットされない。長年、足がある状態がプログラムされていて、これが修正されるには時間が必要なのだ。特に彼の場合、切断する前の一定の期間、足の先端部に強い痛みを感じ続けた。だから、脳は強烈に足の先を感じようとする。

自分の経験がないと正直正確には理解できないが、人間の体というものは不思議だ。

 

ともあれ、この手術によって命の危険は除去された。

GW明けには、都心の病院の転院し、義足をつけて歩くための治療に入るという。

 

彼も昨年定年を迎え、現在は再雇用として従来通りの仕事をこなしている。ただ、今回の手術によって同じ仕事は続けられなくなるが、「ちょうどいいタイミングだった」と感じたという。

人工透析を受けているので、残りの人生がそれほど長くないだろうと彼は思っている。このまま仕事を続け、今まで通り残業して時間を使うのがもったいなくなったという。

残りの人生、好きな旅をして暮らしたいという。

彼は大学時代から、バスが好きだった。今でもその趣味は変わっておらず、路線バスを乗り継いで日本各地を回りたいという。

私は持参した「林住期」の話をし、この本を読んでから私も自分の生き方を変えたという話をした。

 

「お互い自分らしい生き方をしよう」「林住期を楽しく」というメッセージを彼に渡した。

それぞれの人生の後半戦をどのように過ごすのか?

足があってもなくても、みんな同じ問いを抱えている。

お互い、自分らしく生きて、自分らしく死ねればと願う。

 

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