<現場へ>船内パンデミック!新型コロナウィルスで立ち往生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を見に行った

新型コロナウィルスに名前がついた。「COVID-19」。中国や武漢を想起させないよう配慮がにじむこの名前は、SARSやMERSのようには定着しそうもない。

震源地の中国では徹底的な封じ込めの効果が現れ始め、新たな感染者数がこのところ減ってきているとして株式市場では早くも楽観論が噴出している。それはそれで異常な光景で、新型コロナウィルス騒動が始まる前の水準を超えアメリカ市場では史上最高値を更新している。中国が弱ることはアメリカにとって歓迎すべきことということかもしれないが、日本や中国の市場までそれにつられて値を戻しているのは違和感を感じる。いつものことながら、市場関係者という人たちの頭の中は想像しがたいものがある。

そんな昨今、日本のテレビを連日騒がせているのが、横浜港に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」。香港で下船した80代男性が新型コロナウィルスに感染していたことが判明し、日本政府は船を接岸させたまま14日間の検疫期間を設けることを決めた。

ところが、船内からは次々に感染者が見つかり、今日の段階で乗客乗員218人の感染が確認された。

先週土曜日に横浜まで見に行こうとしたら、船が生活水を処理するため一旦沖合に出てしまったので、改めて昨日、大黒ふ頭までクルーズ船を見に行くことにした。

向かったのは、JR京浜東北線の鶴見駅。

生まれて初めて降りた駅だが、結構立派な駅で、東口に出ると、京急鶴見駅との間にバスターミナルがあった。

大黒ふ頭行きのバスは、横浜市営バスの17系統。東口バスターミナルの6番のりばから出ている。

しかし、朝晩の通勤時間以外は本数が少なく、日中は1時間に1本しか運行されていない。

遅い昼ごはんなどを食べて時間を潰し、17番のバスを待つ。

このバスは、食肉市場や横浜火力発電所を通って、大黒大橋を渡り、大黒ふ頭の先端「海づり公園」まで循環している。

一口に、大黒ふ頭と言っても広い。クルーズ船がどこに停泊しているのか、正確な情報は持っていなかったが、ベイブリッジの近くであることはテレビの映像から明らかだった。

最寄の停留所は、「大黒ふ頭」または次の「スカイウォーク入口」だろうと目星をつけた。

「大黒ふ頭」バス停は高架道路が交差する殺風景な場所にあった。目の前を通るのは大型トラックが多い。

来た方向を振り返ると、大黒大橋。

橋を渡りきったところに停留所がある。

停留所から東に歩いたところの交差点に看板「大黒ふ頭案内図」があった。

ベイブリッジ脇のバースは「P3」「P4」と書かれている。おそらく、あのあたりに船がいるはずだ。

ベイブリッジの下を歩いて「P3」の方向へ向かう。

道路脇にはたくさんのトラックが停まっていた。

ベイブリッジに隣接してガラスの建物が建っている。

これが「横浜ベイブリッジスカイウォーク」と呼ばれる展望施設のようだ。

建物内には展望ラウンジがあるほか、橋に沿って長さ320mの歩道「プロムナード」があって潮風を感じながら橋の高さから港を眺めることができるそうだ。

スカイウォークは1989年に開業したが、当初は年間80万人ほどが訪れたものの年々利用者が減り、2010年に営業を停止。昨年からは、大黒ふ頭に大型船が停泊している週末だけ不定期で利用できるようになったという。

ちなみに今月の開放日は29日(土)の10時から17時半。入場は無料だ。果たしてこの日まで、ダイヤモンド・プリンセスは大黒ふ頭にいるだろうか?

ベイブリッジを真下から見上げるのは初めての経験だが、なかなか迫力がある。

橋の下は大規模な駐車場になっていた。

そして、そこから東に目を向けると・・・

ありました。

今話題のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」だ。

イギリスの船会社「P&O」所有で、船籍はイギリスだが、三菱重工が建造し、現在は横浜を中心にクルーズを行なっている。

乗客の約半数は日本人ということで、日本がこの船を受け入れたことを批判する人もいるが、出航地である横浜に戻ってくることはまあ当然だろう。

しかし、感染は予想以上に広がっていた。

感染源が一人だったかどうかも怪しいが、船内で集団感染が起きたことは確実なわけで、その船内に隔離することが果たして効果あるのか、むしろ病気を悪化させるだけなのではないかと議論が尽きない。

テレビは連日乗客たちと電話をつなぎ、「何が困っていますか?」と毎日同じようなことを質問を繰り返す。当然乗客たちは不満をいろいろ述べるので、日本中で乗客への同情が広がるとともに、乗客たちを危険な存在とみなし自分たちから遠ざけて欲しいという冷酷な声も大きくなっている。

クルーズ船が停泊しているバースでは、出入りを厳しくチェックしているようで、敷地内に入ることはできない。

ゲートの外にはテレビ局のカメラクルーが待機していた。

業界で言うところの「張り番」である。

私も現役時代、いろんなところで張り番を行なった。雨の日も雪の日も真夏の太陽のもとでも必要があれば張り番を行う。

中から車が出てくると、記者たちが駆け寄り話を聞いていた。

彼らの取材が特ダネにつながる可能性は万に一つ。昔ながらの取材スタイルで効率は悪いが、こうした地味な作業が取材の基本なのだ。ネットで簡単に情報が得られる時代になり、こうした地道な取材は消え去る運命なのだろうか?

私個人としては、そうしたメディア状況に危機感を抱いている。

今回のクルーズ船騒動でも、私の関心は乗客の窮状ではなく、日本政府が何を優先して現在のような対応策を決めているのか、という点なのだが、それに応えてくれる報道はほとんど見ない。

日本政府は、クルーズ船の乗客乗員の感染については日本での発生には含めていない。検疫作業中であってまだ日本に入国していないという解釈である。

その理屈はわかる。

確かにクルーズ船は特殊なケースであり、日本国内での感染状況とは一線を画している。

しかし、日本国内の感染者数が増えないのにはカラクリがある。検査の対象を湖北省と関連がある人に絞っているからだ。今日になって対象エリアに浙江省を加えたが、逆に今後も出来るだけ検査をしたくないという政府の本音が感じられる。

日本政府はなぜ、PCR検査をしようとしないのか?

政府の説明は1日数百人分しかできないというキャパシティーの問題だが、医療関係者たちは民間でもPCR検査は日常的に行われていると話す。

誰かが、民間に検査を依頼することに反対しているのだろう。

もっとオープンに検査をすると、武漢や中国とは関係ない感染者が見つかってしまう。そして日本国内の感染者数が増えてしまう。

その結果、日本が感染国と見なされ、日本人の海外渡航に支障が出るなど政府にとって不都合な事態が起きることを恐れているのだろうか?

今回の新型コロナウィルスによって、日本の緊急医療体制の危うさが明らかになった。

超高齢化社会である日本では慢性的に医療機関は混雑している。新しい病気が発生したからと言って、すべての医療資源を新しい病気への対応に集中することはできない。

検査機関が足りない、隔離できる施設が足りない、新しい病気に対応する医療関係者が足りない。すべてに余裕がないのだ。

それでも、中国で新型肺炎が発生した時、武漢の混乱を見ながら日本とは医療環境が違うと言われていた。しかし本当にそうなのか?

正直な話、日本ではもう少し緊急事態への準備ができているのかと思っていたが、もしパンデミックが起きた場合には、中国以上に危うい状況にあることがわかった。日本では中国のように街を封鎖したり、10日間で専用病院を建設したり、全国から1000人もの医療チームを送り込んだりすることはできないだろう。

クルーズ船のわずか3700人の全員検査もできないと平然と言い放つ日本政府の姿勢には愕然としてしまう。もし東京で集団感染が起きた時には一体どのように対応するつもりなのだろうか?

今回のクルーズ船を一つのテストケースとして現行法でできる最大限の対策を試してもらいたい。東京五輪もある。今回大げさに準備しても無駄にはならないだろう。

民間の検査機関を動員するにはどうすればいいか?

隔離施設をどのように確保するか?

一般の患者と分離して治療できる病床数を増やすために何ができるのか?

通常の医療活動を行いながら新しい病気に対応するスタッフをどのように確保するのか?

メディアにも、こうして点をもっと突っ込んで取材して、政府の本音を明らかにしてもらいたい。

今できることをしないまま、憲法の緊急事態条項の議論など、もってのほかである。

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