<吉祥寺残日録>BS1スペシャル「レバノンからのSOS」が描く“コロナ地獄” #200714

日本にもすごいドキュメンタリーを撮るディレクターがいるんだと感心した。

東京でも第二波への警戒が強まっているが、新型コロナウィルスの真の恐ろしさは、地球上で最も弱い立場にある人たちにこそ襲いかかる。

そのことを、ここまでリアルに切り取って見せられたのは初めての体験である。

引用:NHK

番組のタイトルは「レバノンからのSOS〜コロナ禍 追いつめられるシリア難民〜」。

この週末にNHKのBSで放送された。

タイトルから明らかなように、どうみても視聴率は取れそうにないテーマである。

NHKのサイトには、こんな説明が書かれていた。

レバノンに避難する120万ものシリア難民。経済的に困窮し、売春や臓器売買が広がっていた。番組が売春組織を取材中の3月15日、新型コロナウイルスの感染拡大で、レバノン政府が非常事態を宣言。しかし、難民たちは、マスクも買えず、消毒液も不足、支援団体の援助も十分ではなかった。差別が拡大、難民キャンプへの襲撃も起こり、DVが急増、自殺者も現れた。コロナ禍のシリア難民の窮状に4か月間、密着した衝撃のルポ。

出典:NHK

番組は、コロナによって海外への渡航がストップした今年前半の4ヶ月間、レバノンで避難生活を送るシリア難民に密着した。

カメラを向ける対象は、子供たちを連れて着の身着のまま隣国に逃げてきた女性たちだ。その中には戦争で夫を失った女性も多い。

難民生活で困窮し、レバノン人からの差別に苦しんでいたシリア難民を、さらにコロナが襲う。外出禁止措置によってわずかな収入源も絶たれ、子供たちを食べさせるために行なっていた売春すらできなくなる。

一体どうやって生きていけばいいのか、子供たちをどうすれば守れるのか、答えがまったく見えない中で絶望し、精神を病む女性たち。

彼女たちの目から静かに流れる涙は、どんなに頑張っても道がひらけない絶望の淵に追い詰められた人の涙だった。

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シリアの内戦が起きなければ、彼女たちの生活はもう少しは楽だっただろう。

中には裕福な生活をしていた人もいたかもしれない。

戦争はある日突然、人々の生活基盤を丸ごと奪ってしまう。家を失い、一家の大黒柱だった父親を失った家族は、どうやって生きていけばいいのか?

もし自分が彼女たちの状況に置かれたら、どうやって子供たちを守っていけるのだろう?

胸を締め付けられるような思いで番組を見つめた。

こんな凄いドキュメンタリーを誰が作ったんだろうと思ってエンドロールを確認したら、「椿プロ」というあまり聞きなれない制作会社の名前が表示された。

このプロダクションの社長を務める金本麻理子さんというディレクターが、自ら撮影も編集も行なっていることを知った。

椿プロのサイトによれば、金本さんは過去にも様々な賞を受賞した実力派のテレビディレクターだった。シリア難民をテーマにした番組も何本も製作している。

それは、そうだろう。

取材対象にあれだけ食い込み、人に知られたくない現実をカメラに収めるのだ。これだけ深い取材ができるテレビマンは、日本にはそれほど多くない。

最近のNHKには失望しっぱなしだが、こうしたテレビマンに活動の場を提供しているということだけで、NHKに受信料を払う意義がある。

願わくば、彼女の作品が一人でも多くの日本人の目にとまり、私たちが生きているこの地球上にはここまで苦しんでいる人たちがいることを分かち合いたいと思う。

世界中が自己中心的になり、弱者を切り捨てる風潮が強まっている。

そんな時代だからこそ、金子さんの作品には見るべき価値がある、と私は多くの人に強く推薦したい気持ちである。

1件のコメント 追加

  1. wildsum より:

    私も見ました。あまりに重いテーマで辛くなりました。涙も出ました。シリアの政府は国民の平和より、政権の維持、あるいは権力者とその背後にいる大国は己の利益しか考えていないのかと怒りも覚えます。地球上の真の平和をただ願うばかりです。

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