<吉祥寺残日録>6月末で会社辞めます #200513

昨日の朝、郵便受けを見てきた妻が、「来てたよ」と言った。

「アベノマスク」が我が家にも届いたのだ。

「3つの蜜を避けましょう!」と書かれた台紙と一緒に包まれ、昔ながらのガーゼのマスクが2枚入っていた。

特段の汚れとかはない。

今の子供たちは初めて見るかもしれないが、私が子供の頃は、マスクといえばこのガーゼのマスクだった。

確かに、鼻と顎を覆うには小さい。

「かけていると、耳が痛くなる」「街中にマスクが出回り始めているのにまだ届かない」と相変わらずネットでの評判は散々だ。

台紙の裏に書かれた厚労省からのメッセージ。

「この度、感染拡大防止を図るため、一住所あたり2枚の布マスクを配布いたします。十分な量でないことは承知しておりますが、使い捨てではなく、洗剤を使って洗うことで、なんども再利用可能ですので、ご活用ください。」

さて、どうしたものか?

妻は私よりも顔が小さいので、このマスクでも大きさ的には大丈夫そうだが、我が家にはまだ不織布のマスクが残っているので、当分出番はなさそうだ。

妻は「肌触りがいいから」と、もともとガードマスクの愛用者だったため、「今使ってる不織布のマスクがなくなったら使うかもしれない」と言った。

何れにしても、私には小さすぎるマスクだ。それは安倍さんが自ら使用して、男の人には小さすぎるということを証明してくれている。

今、巷にはもっとおしゃれで大きい布マスクが出回っている。ああいう日本の伝統的な布を使ったマスクだったら、良かったのに・・・。

「みんな、このアベノマスクをどうしているんだろう?」という疑問が湧いてきた。

ネットで調べてみると、「不要なアベノマスクを寄付しよう」というサイトが作られているのが見つかった。寄付を受け付けている団体の一覧が掲載されている。

もらっても使わない人は、アベノマスクを寄付して、介護施設や児童養護施設で使ってもらおうという取り組みだ。住所がないためにアベノマスクが届かないホームレスの人たちに使ってもらおうという取り組みも存在した。

466億円の国家予算を使った安倍官邸肝いりのプロジェクト。

散々批判を浴びたが、どうせ全戸配布になるのなら、少しでも誰かの役に立ってもらいたいものだ。

さて、そんな「アベノマスク」が我が家に届いた日。

図らずも、私にとっては重大な決断をする一日となった。

午後から行われたオンライン会議に参加して、ちょうど会議が終わった直後、午後3時半ごろのことだ。

私の携帯電話が鳴った。

かけてきたのは、社長だった。

電話の用件は異動の内示、7月から別の関連会社の役員をやってほしいという。

私は「ちょっと考えさせてほしい」と返事をした。「実は、そろそろ引退しようかと考えていたところだ」とも伝えた。

電話を切って、妻に話すと「どちらでもいいよ」と言った。

自由に外を動き回って新しい人たちと知り合い、新規事業を立ち上げる今の仕事は私の性に合っていた。でも、新しい職場はどうやら会社に張り付いていなければならない管理の仕事のようだ。

在宅勤務を経験し、自分で時間を自由に使うことに慣れてしまった後では、再び毎日の会社勤めに戻るのは、どう考えても気が進まない。

会社の指示通り、新しい会社に移れば、給料は減らないかもしれないが、どうしても時間がもったいない気がした。

「そろそろ会社を辞めようか」と思っていたところに、飛び込んできた予想外の異動話。これは潮時だと思った。

数時間後、今度はこちらから社長に電話をして、「6月末で辞めたい」と伝えた。

岡山にいる年老いた親たちのことと農地の管理のことを辞める理由にしたが、正直な話、新しい人生を歩きたかったというのが一番の理由である。そして、コロナ危機でテレビ局の台所事情も悪化する中、私が辞めることで、若い人の職が一人でも守れるなら、それはそれでベストなタイミングだとも思った。

ひとたび辞めると決めたら、私の頭の中でいろんな妄想が一斉に走り始めた。

岡山の農地を使って、木を育てるのはどうだろう?

どうせなら、桜の木がいい。井の頭公園の桜の大木もかなり弱ってきている。日本各地にある桜にも寿命があるだろう。桜を苗木から育てて、新しい桜の名所を作ってみたいと思った。

それを妻に話すと、「ミモザの木もいいわよ」と言った。

確かに、黄色いミモザの木も好きだ。

でも、どうやって木は育てればいいのだろう?

その前に、失業手当という奴はもらえるのだろうか?

いろんな未知の問題が突如として私の前に現れてきた。

「こいつは、いい」

知らないことを一つ一つ調べて、クリアしていくのは嫌いじゃない。会社でやる仕事と違って、全く見当がつかないところが面白い。

そうやって考えていると、どんどん楽しくなってきた。

「よし、会社を辞めるぞ!」

そうして、自分の心がスッキリしたところで、偶然見たのがこの番組だった。

NHK福岡が2018年に制作した4K番組「睦子ばあちゃんと花畑の四季〜福岡能古島〜」である。

5月11日にBSで再放送されたのを花が好きな妻のためにたまたま録画していたものだった。

主人公の睦子ばあちゃんは、福岡市の沖合に浮かぶ能古島で「のこのしまアイランドパーク」という広大な花畑を経営している。18歳の時にこの島に嫁に来た。すでに亡くなったご主人は大きなさつまいも農家だったが、疲れた都会人が癒しを求めてやってくるような花畑を作りたいという夢を持っていた。睦子ばあちゃんは、そのご主人の夢を実現するために50年以上一緒に頑張ってきた。今では一年を通して観光客が訪れる人気のフラワーパークに成長した。

睦子ばあちゃんは80歳になった今も、率先して花の世話をし、訪れる観光客に気さくに接している。自然の恵みに感謝し、自給自足の一人暮らしを送るおばあちゃんの表情は実に幸せそうだ。

50年かけて作り上げた立派な花畑は今からでは難しいだろうが、私も10年後、20年後を目指して、あの農地に何かの爪痕を残したい。そこまで気負わなくても、あの土地を使って何かしら楽しみを見つけたい、と思った。

今時、農地を相続するというのも、考えようによってはとても贅沢な話だ。

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コロナの影響で、睦子ばあちゃんの花畑も休園を余儀なくされているそうだ。

でも、会社を辞めると決断した日に、この番組に巡り合ったのも何かの縁だろう。

アベノマスク、内示、睦子ばあちゃん。

2020年5月12日は、私にとって重要な節目の日となりそうだ。

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1件のコメント 追加

  1. 白石鈴衣 より:

    いつも楽しく拝見させて頂いております。私も御殿山に住む吉祥寺人です。
    アベノマスク我が家にも本日届きました。私もこのマスクをどうしたものかと考えていたのですが・・・
    実は、先日アトレの1階で「ハートマスクプロジェクト」と書かれたチラシを入手しました。政府配布のマスクや未開封の使い捨てマスクを回収するBOXが設置されているようです。回収されたマスクは武蔵野市民社会福祉協議会を通じて適宜必要としている施設へ寄付されるとのことです。
    回収BOXは武蔵野商工会議所6階、公園通り「カヤシマ」、ハーモニカ横丁の「フルーツの一実屋」などに設置されているようです。今月末まで設置されているようです。ご参考までに。

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